プロローグ
ピューン、ピューン、ドガーン
目の前には破壊された街と燃え盛る炎。
どうしてこんなことになってしまったのだろうか。
2053年 6月15日 東京
俺たちは決してやってはいけないことを冒してしまった。
全ては五年前のあの日に遡る。
五年前・・・
俺の名前は豊橋良太。先月の6月15日で11才になったばかりだ。俺の両親はすでに死んでいて、今は母親の姉に引き取られていた。
学校での成績は中。頭が凄く良いわけでも悪いわけでもなく普通だった。
もちろん運動神経も普通だった。だが、そんな俺にも幼なじみがいた。クラスで一番可愛いと噂の暁梨沙だ。
梨沙とは、元々家が隣同士で何かと俺の家に遊びに来ていた。
俺が2年前に両親を亡くした日に俺の代わりに泣いてくれた。
両親が死んだ日、俺は泣けなかった。まだ実感がわかなかったからだ。 両親の死因は事故死。その日、 9才になった誕生日のお祝いに遊園地に行った帰り道、車で交差点を渡っていたら、赤信号で飛び出してきたトラックに衝突され、運転席と助手席に座っていた父と母は即死。後ろの席にいた俺は意識不明の重態で病院に運ばれた。
7時間に及ぶ大手術で俺は一命を取り留めた。
俺が病院に入院している間も梨沙は俺を心配して、身の回りの世話をしてくれた。
そして、俺が退院したのはその3週間後だった。
退院した後はいろいろと大変だった。退院してから2週間後に葬式があった。そこで俺は泣けなかった。
そしたら、梨沙が俺のために泣いてくれた。
泣けない俺のために。
俺は「何で、お前が泣くんだよ」と聞いた。そしたら梨沙は、
「泣けない良太のために泣くんだよ」と答えた。
その一言で俺は涙が込み上げてきた。そして、俺は梨沙のことを好きになった。
葬式が終わった後、俺は住む所が無くなり途方に暮れていた。
梨沙は一緒に住めばいいと言ってくれたが、俺は断った。
幸い伯母の家が今の学校と離れていない場所にあったので、そこに引き取ってもらえた。
伯母とは割りと仲が良かったため、母が死んで家を失ったという俺を快く迎えてくれた。
そんな出来事があった中、俺は6週間ぶりに学校に復帰した。
数週間ぶりに学校に帰ってきた俺を、友人や先生たちは心配してくれた。
「良太。久しぶり。ひとまずおかえりだね、良太」
「ああ、ただいま梨沙。その・・・・・・・・・心配かけて悪かった」
「本当だよ。でも、もう大丈夫みたいだね。良太」
そう言うと梨沙は満足そうな顔をして自分の席に戻っていった。他にも心配してくれる声があったが、俺はなんとなく気恥ずかしくなりながら、勉学に励んだ。
そんな日々を過ごし、 現在俺の学校は冬休みに入っている。この2年間でいろんなことがあったが、変わらず平和だった。
冬休みが終わり、1月も中旬に差しかかった時だった。
それは突然やって来た。
それは、昼間だった東京の空を夜に変えた。
空を覆ったそれは次の瞬間、東京のあちこちにカプセルのようなモノを落とした。
モノが開いた時、中から出てきたそれは見たこともない生物だった。
サルのように手足が長く、さらに爪は鋭く、長い。体は毛皮で覆われている。
そして、顔はなんと人間にそっくりだった。人間にそっくりなそれは、気性が荒く、ヒトを襲う。
東京に落ちてきたそれは例外もなくヒトを襲った。人々は突如現れた化け物に悲鳴を上げ、逃げ惑った。
政府はこの人間に似た顔をしているそれを“宇宙人”と決め、ヴァリアント・モンキーと名付けた。
空にある宇宙船には、絶大な数のヴァリアント・モンキーがいて、時折下に降りてきてヒトを襲う。
この日も100万人がヴァリアント・モンキーによって殺された。
ヴァリアント・モンキーは武器による攻撃の防御性がとても堅く、そう簡単には倒せない。
だが、何度も攻撃を続けている内に、防御性が低くなって倒せるのだという。
その特性を頼りに政府はヴァリアント・モンキー対策の特別設置隊・・・通称“特設隊”を作った。
特設隊とはヴァリアント・モンキーを発見・殲滅するチームのことである。
このチームの最終目標は、宇宙船の破壊である。政府は宇宙船を破壊すれば、“宇宙人”たちも何処かへ消え去るのではないかと考えていた。
政府は特設隊に宇宙船を破壊することを命じた。だが、それは容易なことではなかった。
何故なら宇宙船へどうやって乗り込むのかも知らないし、何より宇宙船の中にはヴァリアント・モンキーが数多いるのだ。
そんなことへ乗り込んで、生きて帰って来るのは簡単ではない。
だから特設隊の任務は、ヴァリアント・モンキーを発見・殲滅する事に限られた。
俺たちの学校も例外なく襲われた。たった1体のヴァリアント・モンキーに学校の中にいる教員・生徒合わせて500人いる内の100人が殺された。
そして、俺を心配して学校に来ていた伯母も奴らによって殺された。
この時は対策の仕方が分からなかったが、学校の友達と協力してひたすら攻撃していたら、何とか倒すことに成功した。
この一件で俺たちは政府が当初から作っていた、大型の地下倉庫に避難した。
地下倉庫は東京の各所に設置されていて、その強度は核爆弾をぶち込んでも壊れないのだという。
この地下倉庫に避難しているのは俺たち学校の皆と近所に住んでいた住人、そしてこの地下倉庫を守ってくれる特設隊だ。
俺はヴァリアント・モンキーによって殺された仲間たちと俺を預かってくれた伯母の敵を討つために、特設隊に入ることを決めた。
特設隊に入るためには、さまざまな試験を突破しなくてはならなかった。身体測定や体力測定などがあり、それらが一定以上ないと特設隊に入隊できないのだ。
さまざまな試験をギリギリで突破した俺は、晴れて特設隊に入隊することができた。
無事に入隊できた俺に、いきなり試練が与えられた。
俺と同じように試験を突破したメンバーと顔合わせと親睦を深めるため四人一組になり、一つ任務をクリアしなければならないのだ。
試験を突破したメンバーの中に何故か梨沙の姿があった。
「何で梨沙がここにいるんだ!」
「何でって、私も皆の敵討ちがしたいからだよ。それに・・・・・・」
「それに?」
梨沙が頬を赤くしながら、
「良太が受けるって聞いたから」
「・・・・・・何だそれ」
俺は絶句した。そんなことで入るとは思わなかったからだ。
俺はそんな理由で入ってくれる梨沙の気持ちに嬉しさ反面、苛立ちが生まれて来た。
「梨沙。特設隊に入るってことがどんなことだか分かってんのか。特設隊に入ったら死ぬかも知れないんだぞ。それでもいいのかよ」
「いいよ。別に私はそれでも。良太さえ隣にいてくれたら」
「なっ」
思わず梨沙と目が合い、そのまま見つめ合う形となった。一瞬とも数分間とも思えた俺は慌てて視線を逸らした。
俺はこの時、恥ずかしさのあまり喋らなかった。
これから待ち受ける運命も知らずに。
初投稿です。この作品は部活で書き上げた作品を改稿したものです。読みづらかったかも知れませんが、最後まで読んでいただきありがとうごさいます!
改善したほうがいいと思う所があれば、是非教えて下さい。次回からの参考にします。
たくさんの人が読んでくれたら嬉しいです!