幼少期5
長く開けてしまい申し訳ございません
ちょっと内容に詰まってまして……
ダクソ3とブラボとMGS:TPPとFGOやってましたすいません
多分また更新あくかと思います
薄いヴェールをかけられたように、意識がはっきりとしない。
一体俺はどこで何をしていたのだったか……
その湧き上がった問に答えるように、廃病院やショゴス、そして病院内に入っていく四人の姿が浮かんでくる。
同時に意識は完全に覚醒し、慌てて起き上がろうとするが全身を襲う激痛に倒れこむこととなった。
相も変わらず右手は動かず。骨が折れたのかもしれない。
近くに転がる銃をベルトに挟み、左手を壁につきつつ立ち上がる。
――あまり無理はできない。
また玉虫色のあれと出会ったら死ぬ可能性はかなり高い。
逃げることすらままならないのではないか。
だが、ここまで来て、これだけボロボロになって、死ぬ可能性が高いくらいで彼らを見捨てられるだろうか。
ショゴスがいることはこの目でしっかりと確認した。
他のものがいない保証などなく、それを撃退できる力を彼らは持っていない。
……俺がやるしかないだろう。知ってるのは俺だけなのだから。
半分意地で自棄になっている感は否めないが、立ち上がることはできた。
あとは足跡を追うだけである。
ついでに足元でうじゅるうじゅると蠢く玉虫色の物体も拾っておく。
足跡は四階まで続いていた。
下手に屋上なんかに行かれていたら大変だったのでこれは助かる。
「……ね」
足跡はまだ先に続いているようだ。
「……しね」
「あーはいはいうるさいからだまろうかー」
一体どこにいるのか……
「しね!しね!」
「だからうるさいって」
先ほどから会話(?)しているのはここにお住まいの田所さん(仮)。
ステータスが出てこない相手というのは初めてで驚いたが、ステータスのないものが幽霊ということらしい。
SWのクリーチャーの非実体系はどういう形で出てくるのか楽しみである。
やはりステータスが出てくるのか、それとも――
「うわあああああああああああああ!!!!!!」
音を立てるとかも気にせず全力で走る。
ちょうど曲がり角にさしかかり、ベルトから銃を引き抜いて構えつつ、飛び出す。
――いた!
ちょうど四人。擦り傷がいくつかあるようだが大きな怪我はない。
大きく口を開けて固まっているのは望舞か。
その視線の先にはステータスのない人影がある。
叫んでも仕方ない状況ではあるが、この病院内においてそれはやってはならないことだった。
ここはコの字型をしているが、現在向原たちがいるのは真ん中の棒部分。
俺は上の棒部分からやってきたのだが、下の棒に当たるところからもう一体目のショゴスがやってきた。
簡単に言えば俺とショゴスで向原たちを挟む構図である。
まだいたのかという思いと、もっといるだろうという予感が全身を駆け巡り、気づけば叫んでいた。
「こっちだ!走れ!」
びくりと反応して四人がこちらを見るがその顔が青ざめる。
田辺さん(仮)がまだいたか。
「いいからとっとと走れ!死んでも知らんぞ!」
それでようやく躊躇いながらもこちらへと走ってくる。
表情がいきなり驚愕に変わった。
「穂積!?お前何でここに、ってかその傷は、その隣のもなんなんだ!?」
望舞はなかなか楽しい性格のようだ。が、今はうっとおしいだけである。
「お前ら助けに、階段で転んだ、田畑さん(仮)だ。」
「雑!」
「いいから逃げるぞ!間違っても転ぶなよ!置いていくからな!」
階段を降りる、とどこから出てきたのか大量の幽霊が二階から上がってきていた。
うっとおしいことこの上ない!が、迂回したほうが早いだろう。
「迂回するぞ!ついてこい!」
一瞬眩暈がしたがどうにか意志の力でねじ伏せて走る。
今なんか主人公してるなぁ……なんてことを頭の片隅で思う。
実際はショゴスに押しつぶされ、死にかけながら適当に銃を撃ち、痛む体を引きずりながら走っているだけだが、なんだかゲームか何かの主人公にでもなった気分である。
『幸運:95 1D100→97 失敗』
『幸運:95 1D100→53 成功』
「――!」
二階に降りて逃げようとしたところ、前方からショゴスがやってきた。
足が速いのか、別の個体か。
「そんな、う、後ろも――!」
ならばと振り返ったその先。
後ろは後ろで巨大な首のない女がこちらへ向かってきていた。
どうにも組織だった、というか連携が取れているように思う。
「穂積、どうするんだ!これじゃあ逃げ場がない!」
ないわけではない。
が、子供にさせるのもどうかと思っていたわけで。
しかしながら状況がこうなってしまえば文句は言えないだろう。
「え、おいなぜ俺のことを抱え、うわあああああ――」
あまりにも唐突に俺が行ったことで他三人は目を点にしている。
が、時間がないのでとっととやる。
「ちょ、やめっ、力強っ、きゃああああ――」
決して、ごねられるのが面倒だったとか、そういうことはない。
「ごめんなさっ、ふああああ――」
「あー、穂積別に俺は抵抗しなっ、力強いな!?」
そろそろ首なし女もショゴスも近くなってきた。
だが、
「それよりも俺のほうが早いのさ!ふははははは!」
半分気を失うように窓から身を投げ、落下していく。
落下地点には大量のゴミ袋があり、それは異臭を放っている。
服が汚れたり、臭くなったりはするが、屋上から飛び降りても悪くて骨折程度の確実に逃げられるルートとして考えていたのがここだった。
二階の途中で挟み撃ちにされたのは確かに想定外だったが、ゴミ集積場のすぐ上で助かったといえる。
一回目の幸運判定が挟み撃ち、二回目は集積場が下にあるか、というより脱出経路があるかということだろう。
……なんてことを生ごみにまみれて考えていた。
「あ、あんたねぇ!投げるなら投げるって言いなさいよ!」
私は怒っています、と全身で表現しながらフィールは詰め寄ってきた。
生ごみ臭い。
「そうか、悪い。早く帰ったほうがいいぞ。」
カバンの中のもの、ナイフ、銃の無事を確認して立ち上がる。
血を失いすぎたのか、ふらつくが最後にやっておきたいことがある。
「ちょ、あんた怪我!」
「あー、気にしなくていい。早く帰れ。」
手早く腕を首から吊ると、そのまま歩き出す。
早くしないと夜が明けてしまう。
「穂積、待ってくれ。何するつもりなんだ?」
俺も含めて小学生とは思えない。
実際俺は中身おっさんであるから、こいつらもその可能性は高い。
「――放火。さすがにあんなもん放置しておけないから一気に潰そうかと。」
「ファッ!?」
やっぱこいつ俺と同じじゃなかろうか。
あのじじいと出会ってるのではないかと。
「いやいやいや、待て。なんでそんなバイオレンスな発想になるんだ。」
「大丈夫だ。ショゴスとて燃やされれば死ぬ。ついでになんか変なのもいたからついでに燃やそうと。」
カバンの中身は灯油である。
うちのものを拝借してきた。
「……穂積君は、あの生き物が何か知ってるの?」
ずっと黙っていた星ヶ谷が反応する。
「そ、そうよ!そもそもなんで私たちを助けに来たのかとか、何も聞いてないんだけど!」
……少しくらいは話さないと放してくれなさそうだな。
時計を見る。針は1を指している。
「――分かった。聞きたいことがあるなら聞くといい。答えられる範囲で答えよう。」
夜はまだ、明けなさそうだ。
田所さん(仮):名前がコロコロ変わる幽霊。出番はもうない。
主人公してる:誰かのために走ったり、助けたり、頑張ってるときは大体主人公してる。
首なし女:実は怨念が集まった強力な奴。呪殺もありえた。
ゴミ袋:周辺住民による不法投棄の結果。どこぞの教団のように飛び込めば無傷で出られる……かもしれない。
幸運:文字通りついてるかついてないか。