幼少期4
いやほんと、すいません。
本来ならもっと早くに投稿する予定だったんですが、システム面とか考えていたら遅くなってしまいました。
それでも結構ガタガタなので、何か案があれば言っていただけるとありがたいです。
廃病院といえば、所謂ホラースポットとしての印象が強いだろう。
確かに、長く人の生死を見守ってきた建物には独特の陰鬱な空気が漂っており、真夜中ともなれば更にその空気は濃厚になる。
世間でいうところの霊感というものがまったくない俺であっても「ここは危険だ」という気配がはっきりと感じ取れる。
俺よりも近くにいる向原たちはより強く感じ取っているだろう。
|閑話休題≪それはともかく≫。
予定通り向原たちは十時に廃病院前で集合していた。
もちろん、俺は少し離れたところでその様子を観察している。
星ヶ谷が若干の怯えを見せ、それで解散となるかと思ったのだがそんなことはなく、そのまま入って行ってしまう。
どこかで見たことがあるような展開だな、と思ったらこの前見たホラー映画でちょうどこんな感じのやりとりをしていた。
ホラードラマの廃墟物でよくある帰ろうとせがむ女子を宥めて入っていく男子の図。
――あかん、それフラグや。
と思いつつ俺もリュックサックを入口脇に置いて中に入る。
入り口のガラス扉は粉々に砕け散っているため、何者かが侵入するのを妨げることはない。
……よく見ればガラスの破片は遠くまで飛び散っている。
誰かが入るために割ったのだろう。
非日常側の住民を刺激するようなことを堂々とするとは命知らずなやつである。
玉虫色の悪夢に押しつぶされているか、発狂して病院にいてくれたほうが世のためだ。
そんな考えもひんやりとした廃病院内に入ったことですっぱりと切る。
空調が効いていないのに冷えているのは中の空気が入れ替わることがないからか。
周りを見るとガラス片やプラスチック片なんかが散乱している。
使えそうなものが落ちてないか探したいが、生憎とそんな時間はない。
すでに彼らの姿が見えなくなっている。あいつらなんなの早いよ。
ということで床に目を向け、彼らの痕跡を探す。
『目星:50 1D100→12 成功』
ゆうじ は あしあと を みつけた !
誰かの靴の裏についていたのだろう泥が床に点々と残されている。
お菓子の家の兄妹も真っ青になるほど分かりやすい目印だ。
知性ある生命体が追おうとしたならすぐにでも追いかけられるほど、くっきりとしている。
俺としては追跡しやすいからいいのだが――
『危険感知:0 目標値:12 2D6→5+6 失敗』
「イチタリナイ!……じゃない、何がどうなって――」
突然の判定結果に思わず叫んだが、すぐに冷静になって状況を確認しようとした、その時だった。
「テケリ・リ!」
しまった――!と思うが、そいつはすでに行動を開始している。
『押しつぶし:70 1D100→62 成功』
「ぬっ、ぐっ……」
『能動:58 受動:12 自動失敗』
気持ちの悪い巨体がのしかかってくる。
重いなんてもんじゃない!
『ダメージ 3D6→10 HP16→6』
ミシミシと嫌な音が鳴り、体の奥から何かが上がってくる。
せめて魔法を使えれば――!
銃を持っている右腕は力が入らなかったが、辛うじて首から下げたマナスフィアに左手が触れられた。
だが、どうする?銃が使えなければ俺に戦うすべはない。
――このまま、死ぬのか?
そうしたら彼らはどうなる?両親は?
「ぁ、ああ、げほっ、ふらっしゅ、らいと!」
『基準値:7 2D6→3+6 成功』
『MP18→16』
口を開いた瞬間赤い液体が飛び出したが、構うものか。今はあれを殺すことだけ考えればいい。
首元のマギスフィアから強烈な白光が吐き出され、暗かった病院内を昼間の様に明るくする。
すぐ近くにいた俺の目もだいぶやばいが、上にいたショゴスもまた、突然の白光に怯えたのか離れたらしく、重さは消えた。
後は――ぶっ殺すだけだ。
目は見えないがやつの不快な声は聞こえる。
力の入らない右手から剥ぎ取るように左手に持ち替え、構える。
「かふっ、《ソリッド・バレット》。」
『MP16→15』
何も考えず、引き金を引いた。
『命中力:0 目標値:5 2D6→4+2 成功』
『威力表20 2D6→4+6 ダメージ:8 魔力:7 合計:15』
もう一度、
『MP15→14』
『命中力:0 目標値:5 2D6→3+2 成功』
『威力表20 2D6→2+5 ダメージ:5 魔力:7 合計:12』
残る一発を、
『MP14→13』
『命中力:0 目標値:5 2D6→6+4 成功』
『威力表20 2D6→5+1 ダメージ:4 魔力:7 合計:11』
ショゴスに物理攻撃は1ダメージしか与えられないが、あいにく俺が放ったのは《ソリッド・バレット》という魔法。
そのダメージはそのまま入る……入ると嬉しい。
……そういえば。クトゥルフにSWの魔法を使うとどうなるか試したのは初めてだ。
いや、マギスフィアもまた、クトゥルフだったのだからシステムとしては同じなのか?……分からん。
しばらく経ったが何の音もしない。
目を開くとややぼやけた視界の中で、霧の様になって消えていくショゴスがいた。
『SAN:99 1D100→98 成功 1D6→3 SAN:99→96』
『2D6→5+6 アイテム:???の粘液』
ドロップ、するんだな……
やばい、意識が、遠の――
閑話休題:主人公が思考を切り替える際に使う言葉。作者がどうつなげるか迷ったわけではない。
帰ろうとせがむ女の子:大体そういう子が被害にあう。
フラグ:恋愛フラグ、死亡フラグ、友情フラグ、etc,,,様々な事態の先触れを現す。最近はフラグを折りにかかる輩も現れた模様。
発狂:正気度を完全になくした人物がなる状態。TRPGでは自ら発狂を目指す勇者も多い。
お菓子の家の兄妹:話の最後では仲良く(意味深)暮らしたそうだが、飯は家のお菓子だったのだろうか。糖尿病が心配である。
危険感知:そのまんまである。これに成功すると迫る危機に気づける。
イチタリナイ:ダイスの女神の一面とも言われる醜悪なる妖怪である。大事な場面や敵のHPを削った時、狙いすましたように1点足りなくするという全プレイヤーの敵。彼らとの狂気的な戯れを楽しむ猛者もまた、稀にいる。
押しつぶし:ルルブによるとショゴスのボディプレスは70%で成功するらしい。
能動、受動:抵抗表に従ってその成功率をもとめる判定。この場合、STR対抗は58対12のため自動失敗である。
フラッシュライト:SWの魔法。マナスフィアから白い光を放つ。消費MPは2。ダメージはないが、今回は夜中にいきなりピカーしたのでショゴスもびびった。
赤い液体:言わずもがな血である。
ソリッド・バレット:SWの魔法。ダメージを与える弾丸を作成する魔法。ダメージは魔法なのでショゴスにも通った。
命中判定:当たるかどうかの判定。雄二は基準値になる技能を持っていないので平目である。
威力表:SWにおいて攻撃した際のダメージを求めるときに使う表。
魔力:SWでは各魔法使い系技能レベル+知力ボーナスで求められる。
ショゴス:言わずと知れたクトゥルフで大人気の化け物。玉虫色の悪夢と呼ばれることもある。今回はやや耐久低めである。
ドロップ:SWは戦闘後、アイテムドロップ判定をする。売れば金になる、という程度の価値しかないものばかりではあるが、ここでドロップしたものは……
???の粘液:玉虫色かつ、時々動く。悍ましい物体である。