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幼少期3

ここから徐々にうちの主人公の発狂が始まる……





かもしれない。

2016/04/04 展開と文を修正

――side ??


 向原(さきはら)大智だいちは数十分前の自分の判断を後悔していた。


 ここ、海浜(うなはま)町のはずれにある何年も放置されている廃墟――元々は病院だったらしい――での肝試しに誘われ、少し考えたものの了承してしまった。


 誘ってきたのがよく遊ぶ仲間たちであったこともあり、根拠のないきっと大丈夫だ、という自信で廃墟を見た時の違和感を無理やり殺したのだ。


 まさか幽霊が出るはずもない。そう思っていたのだが、それは大きく間違っていた。

 実際は幽霊なんかよりももっと悍ましく、恐ろしく、残酷で、巨大な存在が棲みついていたのだ。


 あの時引き返していればよかった、と意味のない嘆きが心に充満する。


 アレ(・・)から逃げ、隠れたのは病室の一つだった。


 扉はすでに無くなっており、窓も割れているため風が吹き込んできて寒い。

 しかし、彼の体を震わせているのは寒さではなく、純粋なる恐怖だ。


 隣には三人。彼とともに廃病院に入り込んだ仲間が全員そろっている。


 この中で一番頭がいい者として、このメンバーの中での参謀役として、大智は絶対に彼らを無事に家に帰すことを決めていた。

 それは自らの恐怖心に打ち勝つための未熟な覚悟ではあったが、確かに大智は覚悟をしていた。


 病室のベッドの下に隠れる四人の耳に不快な音が入る。


 それは何かを引きずるような、ズル、ズル、という音。

 そしてもう一つ。


 『テケリ・リ! テケリ・リ!』


 この世のものとは思えないほど、恐ろしく、不快な鳴き声。


 ――早くどこかへ行ってくれ。


 いまだ幼い少年は震えながらそう願うことしかできなかった。




――side 雄二


 厄介なことになったと思う。


 この町には、とある噂が流れている。


 『町はずれの廃墟では、夜な夜な化け物が徘徊しており、見つかったが最後溶かされて殺されてしまう』


 俺がこの話を知ったのは六月に入り、そろそろ夏が近づいてくる、という頃のことだ。


 教室で寝ているふりをしながら聞き耳をして成長させようとしていたときにその話は入ってきた。

 さすがに小学校低学年のやつらに話を合わせるのもきついのであまり積極的に話したりはしないが、ほどほどに話し相手を作っているからボッチではない。

 

 『聞き耳:50 1D100→12 成功』


 噂話は意外と馬鹿にならない。

 噂というのは尾ひれが付きやすく、また本来の形とは歪められて伝えられることが多いが、重要な部分は残されているものだ。


 今の噂話も、ありがちな廃墟に行く人間を減らすようなものだが、重要なのは『溶かされて殺される』という点。


 この手の話では殺され方はそこに関係しているものが多い。

 例えば学校なら、トイレで溺れさせられる。

 病院ならメスでめった刺しにされる、といった具合だ。


 だが、この話では『誰が』『なにで』そうするのかも不明瞭かつ、元は病院なのに病院の要素があまりない。


 『アイデア:90 1D100→61 成功』


 あまりにも不自然。違和を感じずにはいられない。


 クトゥルフ神話には溶かす類の生物もいた。

 奴がいる可能性があるのなら警戒するべきだろう。話を聞いた時点からものすごい嫌な予感が広がり続けている。


 できれば誰も足を踏み入れないでほしいが……


 その思考こそフラグだったのか、偶然にしても出来すぎなタイミングでその会話が耳に入った。


 「ね、ね、今日肝試しに行ってみない?」


 「肝試し?……どうせあれだろ、廃病院の化け物の話を聞いて気になったんだな。」


 「ステラちゃん……危ないからやめようよ。」


 「大智はどうする?」


 「……まあ、いいんじゃないかな。」


 会話している四人。向原大智、ステラ・フィール、星ヶ谷(ほしがや)鈴音(すずね)望舞(もうぶ)(えい)だったか。

 どうしてこうも素晴らしいタイミングでそんな話をするかな。


 向原は黒髪赤目のイケメン。やや精神年齢が高いらしく、勉強も俺に続いて二位である。APP18。


 フィールは金髪碧眼の美少女。活発なやつらしく、いつもほかの三人を振り回している。APP18である。


 星ヶ谷は紫髪に紺色の瞳をした美少女。物静かでおっとりしている、本を読むのが好きそうな感じのやつだ。APP18だ。


 最後の望舞は黒髪黒目の普通の顔。勉強も運動も普通。向原と気が合ったのか、こいつと向原がいっしょにいるのが良く目撃される。APP10。


 なんだこのアニメの主人公`sは。一人だけ普通のが混じっているが赤目とかやばすぎるだろ。

 うちのクラスだけでなく、普通に街にいる人もピンク髪のがいるのでそういうものだと諦めたが、なぜAPP18がここまでそろう。


 ……脱線した。

 いきなり俺が行かないほうがいい、と進言したところで彼らは行くだろう。

 当然だ。だって俺と彼らの間に関係はないのだから。


 ということで、非常に難儀な性格だと俺も思うが、放っておけないので彼らの後についていくことにする。

 それで何も起きなければそれでいいし、何かあればそのときは俺が対処する。


 話によれば十時に現地集合するらしい。

 それまで時間はたっぷりとある。やれることはやっておこう。





 まずは、もし本当にアレがいたならば意味はあってないようなものだが、念のために装備を用意するとしよう。


 着ているものは普通のシャツとジーパン。防護点上昇はなし。

 武器はマギスフィア(小)と、父からお下がりでもらった中折れ式単発銃。それから小型のサバイバルナイフ。


 単発銃は側面に文字が刻印されており、『Des ersten』と刻まれている。

 ドイツ語だろうか。

 ……また脱線した。


 さらに、腰に巻いたベルトに十二発分の銃弾も入れてある。

 全面的な戦闘などする気もないので牽制用にいくつか、という程度だ。


 後は肩にずっしりとくる重さのリュックサック。

 本当に念のための保険であるが、中に入っているのは切り札となる物体だ。


 「……時間か。」


 両親は九時には寝てしまう。一度寝ると襲撃でもない限りは起きないのでそこは安心だ。


 願わくば向原たちに何事もなく、早々に帰宅していてほしい。


 もしもアレがいたならば、|こちら側≪非常識≫を垣間見ることになるのだから。

廃病院:肝試しの定番。基本的に病院はそういう雰囲気が漂うので廃がついていてもいなくても怖い。

テケリ・リ:とある神話生物の鳴き声。玉虫色の悪夢。わかる人には分かる。

聞き耳:耳をすませば、ほら、聞こえる。人知を超えた者たちの声が。

トイレで溺れる:定番である。

黒髪赤目:イタい。イケメンだとなおさらイタい。

APP:容姿の整っている具合

APP18:APPの算出方法は3D6。つまりは最大値である。

アニメの主人公`s:イケメン、美少女が揃い、なおかつリア充オーラを全身から発する生命体。

爆破:ガス爆発、粉塵爆発、その他もろもろでどうにかする予定。

銃:現代日本では到底手に入らないはずのもの。魔術師だからいろいろできるということで。マギテック技能には必須。

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