幼少期2
前回から少し空いてしまって申し訳ない…
今回はややクトゥルフ分多めです。
さて、衝撃的な事実を知ってしまったあの日から早くも数か月がたってしまっている。
少しではあるが魔動機士としての教育を受けたため、俺のマギテック技能レベルは1になっていた。
技能レベルの上がり方なのだが、ここで面白いことが起きた。
元々、俺は技能を何一つとして取得していないがために経験点は2000点余っていた。
だが、ある朝起きて自分のステータスを見たところ、経験点は自動的に消費され、マギテック技能レベル1へと変化していた。
経験点は残り1000点であることからも技能習得に必要な値はSWそのままと考えられる。
――だが、面白いのはここからである。
運動するべきだと思った俺は、毎日近所の公園で近くの子供たちと野球をやっていた。
ボールを投げるのは大半が普通に投げられるのだが、時に失敗して大暴投する時があった。
そんな時の脳内ダイスは、
『投擲:30 1D100→99 決定的失敗 経験点50』
となっていた。
このときのボールはあらぬ方向へ飛んで行った。
また、時には、
『投擲:30 1D100→12 成功』
『威力 2D6→1+1 決定的失敗 経験点50』
というのもあった。
このときのボールはあまりにも威力がなく、届かずに転がった。
……そう、失敗すればするほど経験点が入るのだ。
さらに面白いのはこの技能値。
ボールを投げ続けたところ、ある一日を終えて寝ようとしたときに自動で脳内ダイスが振られたのだ。
『投擲:30 1D100→41 成長 1D10→5 投擲:35』
つまり、クトゥルフ的な技能は成長するのだ。
いや、ただ単に自分の肉体の成長がダイスによって可視化されているだけかもしれないが、明らかに他のやつらよりは上達が早かった。
そこで俺は、この世界のシステムは一日を一つのシナリオとみなし、何か数日、または数か月に及ぶ作業をしている時はキャンペーンのような形で考えるのではないかと推測した。
といっても、推測しているだけで実際はどうか知らないのだが。
そんなわけで、毎日野球モドキとマギテックの講習、運動と勉強で一日を終えていたところまあいろいろと成長していた。
特に成長が著しいのはまさかの知力(INT・EDU)である。
元々前世の分の知識に加えて、今世では魔動機士としての知識だとかいろいろ学ばされてることが原因だろう。
今の知力はなんと40。東大でも余裕で入れそうな気がする。
そんな化け物のような状態で、転生した俺は二回目の小学校入学を迎えた。
周りはざわざわと騒がしいクラスメイト達。
小学校一年生だったらそんなものだろう。
先生の言うことを聞くとか考えないで近くのやつらとお喋りに興じている。
そんななか、俺は一人で本を読んでいた。
タイトルは『世界の怪事件』。ジョン・F・ケネディの暗殺やらなんやら、眉唾物の話がいろいろ載っている。
俺はクトゥルフの痕跡がないか探している。
この世界、というかどの世界でもクトゥルフだとか、神話的恐怖には関わり合いになりたくない。
とりあえず近づかないほうがよさそうな場所をピックアップするために適当な本を図書室から借りてきたのだが――
『図書館:15 1D100→39 失敗』
何回読んでもそんな痕跡が見つからない。
失敗ということは、この本に情報があるかもしれないが俺が見落としているだけの可能性があるということだ。
……疲れたしまた今度読もうかな。
何回も判定し続けたせいで図書館技能値も下がってしまっている。
集中力が足りなくなっているということなのだろう。
そう結論付けて本を閉じ、前を見る。
ちょうど先生の話が終わったところだったようだ。
最後尾であるため、なにかしていてもバレにくい。
とりあえず今日はこれだけのようだし、図書館に寄ってから帰るか。
俺の通っている小学校は図書館が大きい。
二階層ぶち抜きの、半分独立した形の図書館には司書の人の趣味なのか、あまり見ることのないような本も多くある。
カウンターに本を返却し、奥へと進む。
司書の先生曰く、下の階の奥の方にはあまり人が来ないそうだ。
まああまりにもいろいろな本がジャンルも何も分けられずに入っているのだから仕方がない。
探している本があっても、特定の本を探すのは見た目からして難しい。
……先ほどから違和感があった。
例えるなら、子羊の群れに混じった一匹の狼の様に本質的に違うもの。
あるいは、ほかの全員が泣いているのに、たった一人笑っている人間のような。
そんな、違和感。
じっとりとした嫌な汗が背筋を伝って落ちる。
今が春でよかった。夏だったら冷房で寒い思いをしていたところだ。
――いや、そんなことはどうだっていい。
早くこの違和感の原因を探し当てなければ。これは放っておいては駄目なものだ。
根拠のない、第六感ともいうべき部分が警鐘を鳴らしている。
『目星:50 1D100→62 失敗』
だめだ。見つからない。
だが、諦めるわけにもいかない。
もう一度探す。
『目星:40 1D100→41 失敗』
「っ!!」
思わずダイスの女神に対する愛の言葉が漏れそうになったが堪える。
変人認定されるのは困る。
もう一度。
今度は精神を落ち着かせて、違和感に対して糸を手繰るようにそれを探す。
『目星:35 1D100→19 成功』
そんな脳内ダイスの結果と同時に、一冊の本を見つけた。
一見して装丁されたただの本だが、違和感は間違いなくそれである。
「ああ、くそ、いやだなぁ――」
しかし見ないわけにもいかないので手に取る。
表紙には「LIVRE D`IVON」の字が。
嫌な予感が現実味を帯びてくるのをひしひしと感じながらそれを開く。
…
……
………
…………読めない。
「ラテン……いや、フランス語か?」
どうやら手書きの写本らしき本なのだが、ざっと見てみた感じで理解はできない。
図書館の本についているはずのシールはなく、誰かが置いていったものというのはわかった。
別に持ち帰っても問題はないが……
どうするべきだろうか。
危険そうな本であるために持ち帰り、ついでに読み解くというのもありではある。
だが、中身はおそらくフランス語で書かれている。
たいていの人が読めないだろう。
「まあ、放っては置けないよな。」
触っただけで正気度ロールが入るようなものでもなし、そこまで危険でもないが、万が一もありうる。
オカルト関係への造詣を深めるという意味でも、読むだけの価値はあるか。
とりあえず司書の先生にバレないように持ち出すとしよう。
経験点:SWで技能を習得する際に必要となるもの。
決定的失敗:本来なら戦闘時の武器の技能ロールで96以上を指す。ここでは通常時とすべての技能に適用される。
威力:SWでは、攻撃のダメージ算出を2D6の合計値と威力表というのを使用して算出する。2D6の値が2の時、自動失敗となる。
図書館(技能):本を読んだりして特定の知識を手に入れたいときに使用する。基本中の基本。
目星:事件現場に小さく残されたメッセージやら、一つだけ使われていないグラスやらを探し出す技能。探偵さんはみんな持っている。
愛の言葉:中指を突き立て叫ぶのだ。「Fu○k you!」
LIVRE D`IVON:わかる人には分かる本。結構やばい。