幼少期1
まさかの3000字オーバー!!
今回から少し独白から戻り、主人公の成長する様子をやっていこうかと。
一応テンプレ的な転生なんでね、テンプレに沿って行かないとね。
システム面を結構面倒な仕様にしてしまったので、改善案がある方は教えてください。
あとは中で出てきた単語の解説なんかもあとがきでやります。
こういうのもなんだが、前世での俺はなかなかに平凡な人生を送ってきた。
それなりの高校に行き、目的もなくそれなりの大学を受験。
出た後はそれなりの企業になんとか就職。
最期はトラックに轢かれそうになったJKを助けるべく身を挺して庇い、24歳独身の人生に幕を閉じることになった。
そんな俺にも、趣味というものはあった。
TRPG――テーブルトークRPG。
特に嵌っていたのはクトゥルフ神話TRPGとソード・ワールド。
最後に友人たちとやっていたキャンペーンが途中でやれなくなってしまったことは悲しかったが、それくらいしかやり残したことはなかった。
自称神のじいさんに間違えて死なせてしまった旨を伝えられ、最近ネット小説で見かけるような主人公の如く華々しい異世界生活をスタートさせる――こともなく。
異世界に興味はあったが、俺が見てきたものは所詮、観賞用の脚色された異世界である。
実際に異世界に行って生活しようず、となっても生きていける自信もなく。
普通に生きてきた身なので戦闘なんぞできるはずもない。
そんなわけで俺は二度目の地球生を望んだ。
……で。
華々しくもない、至って地味な二度目の生を始めたわけだが。
転生主人公たちのよく通過する、精神は大人なので赤ちゃんプレイをしているような気分、という最初の関門だが、するりと通過させていただいた。
恥じらいなんか持ってTRPGなんぞやれん、というのが友人の持論であり、自分もまたそれには全面的に同意するところであった。
自分ではない人物を演じていると思えばなんとかなるのだ。そういうことにするのだ。
幸いにしてこの両親は昨今には珍しくちゃんとした人たちで、惜しみない愛情を注いでくれた。
のは、いいのだが。
五歳になる誕生日の日に、俺は父親の書斎に呼び出された。
普段ここには入らないように言われているため、何か重要なことなんだろうというのは想像がついていた。
「雄二。落ち着いて聞いてほしい。五歳になった時に話そうと、母さんと二人で決めていたことなんだが……」
言い忘れていたが俺の名前は穂積雄二。一人息子なのになぜか雄二だ。
「その、非常に言いにくいことなんだが……」
実は俺はここの子ではないとか、そんな衝撃の事実だろうかと思ったのだが。
「実はね、父さんも母さんも、魔術師なんだ。」
……実のところ、俺はこの衝撃的な、ともすれば父親の頭を疑うような発言が真実であることを知っている。
だってステータスで見えてるし。
自分の顔を鏡で見ると自分のステータスも見れるわけだが、生まれはなんと魔動機士。
技能としてちゃんと習得していないが、マギテック技能レベル0と、技能欄に追加されていた。
そもそも両親の顔を見たときに、その横に出てくるキャラシート風ステータスにも職業:魔動機士と書かれていた時点で飲んでいたミルクを噴き出しながらも、そういう家系か……と無理やり納得したし。
だからまあ、知っていたのだがここは知らないふりで通すか。
「そうなの!?じゃあお父さんは魔法使いなんだ!」
「あ、ああ……そうだね、うん。そういうことになるのかな……?」
……我ながらキモイと思える子供の演技だが、そういった羞恥心を持っていてはKPはおろかPLすら務まらない。
「なにか魔法使って見せてよ!」
「うーん、そうだな……」
俺が父に魔法を使うことをせがんだのにはちゃんと理由がある。
クトゥルフとSWが混ざっているこの世界観的に、魔法/魔術の立ち位置がどうなっているのか知りたかったのだ。
クトゥルフもSWも、基本的にはMPを消費して魔法、あるいは魔術を使用していた。
しかしながら、クトゥルフの魔術は正気度ポイントとMPを消費し、数ラウンドかけて詠唱するようなものが大半であるのに対し、SWの魔法というのは詠唱は基本10秒で完了するものとなっていた。
このあたりのシステムの変化を理解できていないと、絶対にいるであろう神話的恐怖と遭遇した際、俺の周囲の人物を守ることができなくなる。
親が、友人が、恋人が、発狂し、侵され、潰され、犯され、殺される――そんな未来のために二度目の生を得たわけではないのだ。
というか目の前の父はいつまで悩んでいるんだ。
マギテック技能はレベル10までいってるから大半の魔法は使えるはずだろ。
「うん、『クリエイトウェポン』ならまだ安全か。」
ようやく結論の出た父は木製の重厚な机の引き出しを探り、手の平サイズの銀色の石のようなものを取り出した。
――まさか、それは。
「これはマギスフィアという特殊な石でね。ウチのような魔動機士はみなこれを使用して魔法を使う。……まあ、厳密には魔法ではないんだがそれは置いといて。これから簡単な魔法を見せてあげよう。」
なにやら詠唱し始めた父よりも、俺の目線はマギスフィアに固定されていた。
いくらなんでもそりゃねえぜと言いたい気分だ。
なにせ、マギスフィアの表面にはThothと小さいながらも刻まれていたのだ。
歪む、歪む、世界が歪む。視界はモノクロになり、強い吐き気がする。体は自然に震えそうになる。
今経っている場所がどこかすら朧げになるほどの強いショック。
嗚呼、そういうことかと納得する自分が冷静に状況を把握してしまう。
勝手に脳内でダイスが振られる。どこぞの女神は俺の状態を常に把握していて、なにかするときなんかはこうやってダイスを振ってくる。
落ち着け、飲まれるな。自分に言い聞かせ、唇を噛んで拳を握り、しっかりと前を見る。
――世界はもとに戻っている。
『SAN:99 1D100→15 成功』
このダイスというのが実に厄介である。
なにせ、こいつ自身はその結果を伝えてくれる指標のようなものでしかないのだから。
例えば、今の様にショックを受けた際。
何も考えず、耐えず、ただその恐怖に怯えるだけだと出目が悪くなる。
逆にそんなものがどうした、だからなんだ、と精神を強く保っていると出目が良くなる。
技能ロールの際は1D100の場合出目が低ければ低いほど達成値が高いとみなし、その成果が高くなる。2D6なら高ければ高いほどに、という形だ。
せめてロールは1D100か2D6、どちらかで統一してほしい。
「……雄二?どうかしたのか?」
しまった、正気度ロールに気を取られていた。
「ううん、なんでもない!お父さんがすごかったからびっくりしちゃった!」
「そうか?もっと褒めてもいいんだぞ?」
……実際、すごいとは思う。
マギスフィアを変形させてくねくねと曲がった歪な形の剣――フランベルジュにしたこと自体は。
確かマギテック技能レベル6から使えるはずの『クリエイトウェポン』。
それで作り出された武器は魔法武器になるはずなんだが……
「お父さん、なんでその剣は濡れてるの?」
なんかこう、一度水に浸して取り出した後、みたいに実に微妙な濡れ具合なのだ。
「父さんの魔法で水属性を付与したのさ!」
「ソウナンダースゴイナー」
まあ、ここでのマギテック技能が見れただけ良しとするか。
後は想像通り、1分経過した時点で元の石に戻った。
その際、
「誕生日プレゼントとしては物足りないかもしれないが、これをあげよう。おめでとう、雄二。」
「ありがとう!」
というやり取りのもとマギスフィアを手に入れたが、素直に喜べないのはThothのせいなんだよなぁ……
基盤はクトゥルフってことかよ、畜生。
TRPG:テーブルトークRPGのこと。ドラクエやらFFやらのようなRPGを紙とダイスでやるゲーム。自分が喋って実際に勇者やらなんやらを演じる。
クトゥルフ神話TRPG:みんな大好きクトゥルフ神話のTRPG。大体神話的恐怖に敵わず全滅するとか・・・
SW:正しくはソードワールド2.0。作中では面倒なのでSWで統一します。いかにもなファンタジーの異世界を旅する感じのTRPG。生存率は高め。
キャンペーン:TRPGの物語をいくつか繋げたような形のもの。長いので疲れます。
ネット小説で見かける主人公:ロリな神様にチートをもらって異世界に行って奴隷を助けたり買ったりして最終的にハーレムを形成するリア充。基本的に異世界の人間は惚れっぽい?
赤ちゃんプレイ:精神は大人なため、授乳行為なんかは酷く屈辱的である。
雄二:一人息子でも雄二なのは完全に作者の趣味。とあるキャラからとっただけ。多分知ってる人には分かる。
魔動機士:SWの生まれというところに関係してくるもの。マギテック技能が使える。
マギテック技能:基本的に銃と魔法を使って戦う形になる技能。時たまやばい技能構成のがいる。
キャラシート:TRPGで使われる、自分の分身を情報化するもの。
KP:TRPGのシナリオの全容を知る人。大体ドSかドM。この人の指示に従ってゲームを進める。GMと呼ばれることも。
PL:プレイヤーのこと。大体キチガイか変態。あまりKPの胃にダイレクトアタックをするのはやめましょう。
MP:言わずと知れたマジックポイントの略。マッスルポイントでも通じる。
正気度ポイント:その人物がどれくらい正気を保っているかを表す値。ガリガリ削られる。
ラウンド:行動の基準となる考え方。SWでは戦闘時1ラウンド10秒だとか・・・
神話的恐怖:大いなるクトゥルフだったり、アザトースだったり。たいてい遭遇すると発狂である。
クリエイトウェポン:SWのマギテック技能レベル6から使える魔法。マギスフィアをランクAの武器に変形させる。6ラウンドしか持続しない。
マギスフィア:魔動機士の人は必須なアイテム。これがないと魔法が使えない。
Thoth:話によれば某アニメのヒロインであった銀髪の神話的恐怖のことを指しているらしい。
SAN:現在の正気度。みんな大好きSANチェックはここからである。今は正気度ロールというらしい。
1D100:100面ダイスを一回。
2D6:6面ダイスを2回。
魔法武器:属性のついたすごい武器。強い。
なんかすごい量になってしまった・・・
まあTRPGができる人は読まなくても大丈夫です。