名づけたりとかしてみたり。
読んでくださっている方、ありがとうございます!
今週分、遅くなってしまい申し訳ありません。
次回分は土曜日に投稿を予定しております。
「この状態なら言語による意思の疎通は可能ですが如何致しましょう。」
「服を着て欲しいですかね!」
「しかし私はこの時点で身にまとえる布を持っておりません。」
「じゃあこれでも羽織ってください!」
「‥‥主様、この羽織は少々私には小さいのですが。」
「悲しい事言うなよ!!とりあえず隠してください!」
身長が低いことへの再確認とか不要。
「仕方ないですね‥‥主様、しばし記憶をお借りいたします。」
「え?」
狼はそう言うと、僕に向かって手を伸ばした。
何をやっているのかわからずきょとんとしていると、狼は満足気な顔で手をおろした。
「何やってたんですか?」
「うふふ、見てからのお楽しみです。」
そして狼が指をパチりと鳴らすと、彼女は光の粒子を纏い始めた。
‥‥例えるならあれだね、日曜朝のプリティでキュアキュアな女の子たちの変身シーンみたいな。
すごいなー、どんどん服が形成されてく。
‥‥形成されてくのはいいんだけどさぁ、もしかするとその服って‥‥
「再現完了です。」
ドヤ顔で胸を張る彼女が纏っていた服は、真っ赤な地に白いラインが端に入っている、僕のー
「主様の脳内から『ジャージ』というものの記憶をお借りしました。なかなか着心地がいいですね。」
学校指定のジャージだった。
「いやいやいやちょっと待とう!?なんでわざわざジャージ選んだの!?」
「一番機能性が良さそうでしたからね。」
「それは合ってるんだけれども!お洒落な物を選ぶという思考はなかったんですか!?というか記憶読んで再現できるとか何のチートですか!!」
「主様は野生の狼に対してお洒落を求めるのですか?それに私をただの狼と思わないでいただきたい。閻魔様から直々に魔力を授かった魔獣ですよ?それくらいできないとお思いですか。そして私に対して敬語はおやめください。」
「一気に説明をありがとうございますパンクしそう!」
まとめると、お洒落に興味の無いなんかすごい狼でOK?
「まぁ、大体わかりました‥‥」
「敬語はおやめください。」
「でも見た感じ年上じゃないですか。」
「そりゃあざっと千年は生きてますからね。閻魔様に召喚され物凄く久しぶりに外へ出ましたが。」
わぁすごい年上だね!!
見た目的には十代後半のうら若き乙女なんですけど。
さっきっから突っ込んでばっかりでしっかり見てなかったけれど、顔はとても整っているしスタイルも平均的と言った感じだ。
艶のある黒髪をおさげにしていることで少々の幼さを感じる。
‥‥これで千年以上生きているとか見た目詐欺過ぎない?
「しかしいくら年の差があろうとも主従の関係に変わりはありません。どうか敬語を使うのをおやめになってはくれませんか。」
「むぅ‥‥」
できることならば年上には敬語を使いたい。
というか使わないと落ち着かないんだけど‥‥
‥‥そうだ、母親だと思えばいいのか。
そうすれば敬語を使わなくても抵抗は少ない。
「わかりまーわかった。できる限り敬語は使わないようにする。」
「ありがとうございます。」
深々と頭を下げられる。
‥‥やっぱりなんだか変な感覚だ。
慣れるしかないのかなぁ。
「それでまだ自己紹介してなかったんだけど、僕は中峯優。君は?」
「私に名前はありません。『参』という便宜上の呼び名があるだけです。‥‥図々しいかもしれませんが、どうか主様からお名前をいただけませんか。」
‥‥名付け親になるってこと?
うわぁ‥‥緊張するなぁ‥‥
「何かこんな名前がいい!とかこだわりとかリクエストはないの?」
「主様から頂けるのならば如何なるものでも喜んで受け容れます。」
困ったぞ。この人リクエストを言う気が無い。
うーん‥‥
「そうだ、シオンなんてのはどうかな。」
「シオン、ですか。わかりました。それが今から私の名。主様から頂けたこと、誇りに思います。」
「‥‥うん。よろしくね、シオン。」
僕の、大好きな花の名を。
大切な花の名を。
『優にはこのお花をあげるわ。どうかー』
僕は覚えてる。