スラム街にて絶叫中
「さっきっからうっせぇなぁ‥‥ここに何しにきたんだよ?ガキンチョ。とりあえずそこ通ってんだったら通行料な。60リル。」
うわぁ‥‥なんかすごい強面のお方に絡まれちゃったよー。
ここのお金の単位はリルなのかね。
というかガキって言われた。ガキって。
僕今何歳?
「聞こえねぇのか?さっきまであんだけギャーギャー言っておったんに。とっとと金だしな。財布ごと持ってって欲しいのか?」
「いや、あの僕お金持ってませんので‥‥失礼します。」
多分断られるとは思ってなかったのだろう、強面が揺らいだ。
その瞬間脱兎のごとく駆け出した。
あー怖い怖い足がガクガクでもつれそうだ。
「あんのガキャア‥‥!待ちやが…ん?っなんでっ‥‥やめっやめてくれっ!!助けてくれっ!!!」
強面の悲鳴が聞こえた。
同時に獣の鳴き声。
振り返ると、そこには服を噛まれて動けずにいる強面と、とても大きな狼がいた。
‥‥そういえば閻魔様から狼を授かってたね僕。落ちた時にどっか行っちゃってたのかな。
ちょっと狼に申し訳ないことをしたと思いつつ助かった。
‥‥あれ、でも狼ってこんな大きくなかったような。
もっとちっちゃかったのに。
強面をくわえて振り回していた狼は僕に気づくと、強面をくわえたままこちらに駆けてきた。
遠目で見ていたから分からなかったけど、こうして近くで見るとおそらく普通の狼より遥かに大きい。
僕なら普通に乗れそうだ。
少しその迫力にビビりつつ話しかけてみる。
因みに強面は恐怖のあまりか失神した。
「えぇと‥‥貴方は閻魔様のとこの狼さんですか?」
肯定するかのようにガウと一声吠える。
その拍子に強面が地面に落とされた。
さっきっから少し不憫だ。
まぁでも悪いことをしようとした罰と思ってもらおう。
「僕の仲間、ですか?」
またも肯定するように吠える。
こちらの言葉は理解してるんだろうなぁ‥‥
狼が喋れればいいんだけど。
ファンタジーだからそれくらいできないかなぁ‥‥
「貴方は喋れますか?」
ダメ元で聞いてみる。
すると狼は一瞬逡巡した後に肯定の意を示した。
‥‥まさか、鳴き声で喋ってるつもりとか?
ちょっと待ってそれじゃ僕は残念ながら理解できない。
少し困っていると、唐突に狼は粒子状に崩れて始めた。
「待ってなんで!?」
どこにそんな要素あったの!?
もしかして人を一回助けたら成仏するの!?
待って成仏って既に死んでる!!
狼は焦る僕を尻目に「まぁ見てろ」とか言いたげな視線をよこした。
粒子が風に舞うように形を形成し始める。
そして狼の粒子は瞬く間に人へと形を変えた。
ー全裸の女性へと。
「服着てえええええええええええ!!!」