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みんな仲良く  作者: 夕顔
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 進藤さんは相変わらず表情が乏しいが、人数の増えた「進藤組」とは会話が随分増えたように思う。

 気付いたら「進藤組」の人達は社内での評価が相当上がり、皆楽しそうに仕事をしている。




 そんな時小さなプロジェクトを立ち上げる事になった。


 このプロジェクトはEさんが主体で、オブザーバーとして進藤さんがつく事になった。


 Eさんは「わきあいあいチーム」の若手メンバーなのだが仕事の評価は良くなく、これまでも「わきあいあいチーム」の助力の下どうにか仕事をこなしてきた人だ。


 だからEさんはこのプロジェクトが始まるに当たって担当を知った時に顔色が青くなってしまった。

 「仲良くする必要はない」と言う進藤さんと、助力が無ければ完遂できない自分がペアで仕事をする事に不安を感じているのだ。


 Eさんは若手とはいえ勤続年数的にそろそろ一つ階段を登るべき時であり、ただでさえも評価が低い彼は、今後を思うとここで結果を出さなければならない。


 勝負の時である。


 当然「わきあいあいチーム」も彼を心配し、反対を唱えた者がいた。

 私も正直な所、小さなプロジェクトとは言え彼の将来に関わる大切な仕事なので不安を覚えた。




 そこでこのチームを提案した大久保さんの意図を聞いてみる事にした。

 「相性があまり良くなさそうに見えますが、何か考えがあるんですか?」 

大久保さんは

 「まあ見てなって。」

と笑顔で言った。




 すると

 不思議な事にプロジェクトが開始されて暫くするとEさんの顔色が良くなり覇気が出てきた。

 それからは相変わらず無表情の進藤さんと頻繁に会話をするようになってきた。


 そしてついに私や「わきあいあいチーム」の心配をよそに、なんとEさんはこのプロジェクトを最後まで自分が主体となり完遂させたのだ。

 更に彼はこのプロジェクトを経て仕事能力も相当上がり、これまでは無かった自信さえも感じられるようになっていた。




 私は嬉しく思い、二人におめでとうと声をかけた。

 すると進藤さんは

 「仲良くする必要無いからね。」

と言い、Eさんは笑っていた。




 「仲良くする必要はない」と言った進藤さんの隣で笑っているEさんを最初はどうかと思ったが、何より彼が別人のようだった事に驚いた。




 遂に「わきあいあいチーム」から「進藤組」への移行組が現れた。




 大久保さんは

 「彼のような人を伸ばすには本来進藤くんのような人が最適なんだよね。」

と言い、Bさんは

 「自分の時と同じですよ。」

と言った。


 進藤さんは相変わらず無表情で「進藤組」の皆と飲み会に行く訳でもなく、ただひたすらに「仲良くする必要はない」と言い、定時には帰っていく。




 大久保さんは進藤さんを随分信頼しているようだが私はどうも腑に落ちない。


 本来は会社の中で立場が危うい人こそ他人と仲良くしたいものではないのだろうか。

 しかしあの会話の流れだと、Eさんは仲良くしない事で進化を遂げたという事か。




 彼の言う「仲良くする必要はない」という言葉にはいったい何の意味があるのだろうか。

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