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みんな仲良く  作者: 夕顔
3/8

 進藤さんはケーキが好きらしい。


 先日仕事帰りに、会社の近くに新しくできたケーキ屋さんへ行ったところ偶然居合わせて聞いたのだ。

 いつもあまり表情を変えず無駄口を言わない彼は嬉しそうにケーキの話をすると、微笑みながら帰っていった。


 普段の彼からは想像も出来ない姿に私は驚き、何となく秘密を知ったような気分になり嬉しく思った。






 ある日残業について話し合いになっていた。


 会社は時間対効果を重要視しようという傾向にあり、他県支社は既に移行済みなのに対して、我が部署は残業が多かったのだ。


 部長に理由を訊ねられると、どうやら他部署の仕事を手伝う事により本来の業務が滞り残業に繋がっていたとの回答だった。


 確かに主に仕事を依頼してくる他部署は能力があまり高くないため、うちの部の社員が手をかけた方が早く終わる。

 しかしそれでうちの部だけが残業時間が多いというのは問題に思う。


 「わきあいあいチーム」の人達は、同じ会社の人間だし利益と能力差を鑑みて、自分達が手をつける事は間違いではないと発言した。

 自分達の方に余裕があるのなら、仕事を手伝うのは当然で人道的にも正しいのではないかと。


 会社の和を重んじるとその考えも分からないでも無いのだが。




 それに対し進藤さんは

 「仲良くする必要はない。

  何なら依頼された仕事を自分に持ってきて下さい。

  全部断りますんで。」

と言った。


 進藤さんの残業が少なかったのは、仕事もできるが他部署からの仕事を突っぱねていたからのようだった。




 「わきあいあいチーム」は

 「こういうのは皆が手を取り合うべきだろう。」

 と進藤さんに良い感情を抱かなかった。




 しかし新入社員の一人のDさんは依頼された仕事を進藤さんに渡すようになった。

 進藤さんは当然のようにその仕事を受け取ってから元の部署に突き返していた。


 その後Dさんは仕事が目に見えて上達し

 「よく考えてみると進藤さんの言う事が正しいですから。」

と言っていた。




 「わきあいあいチーム」はその分の仕事量が増える事になり、助け合う意思の無い「進藤組」に不満をもらした。


 進藤さんは

 「仲良くする必要はない。」

と言って意に介さなかった。




 どこか釈然としない思いを抱えたのだが、先日Aさんと大久保さんの三人で夕ご飯を食べた時に非常に興味深い話を聞いた。


 「進藤さんが毎日のようにある飲み会を断る事で、職場に居やすくなったんだ。」

とAさんが言った。


 Aさんは飲み会に行きたがらない人だった。

 しかし断りがちになった事で風当たりが強くなったとまではいかずとも、少しずつ居辛くなってきていたのだ。


 大久保さんは

 「飲み会を否定はしないけど、A君も俺もオンとオフは分けたいからね。

  趣味の時間もプライベートの時間も無いのは参ってしまうよ。」


 私はあまり参加しないので知らなかったが、どうやら毎晩のように行われる飲み会では仕事の話がほとんどだったらしい。


 しかし、「わきあいあいチーム」はその飲み会によって、恐らくプライベートも満たされているのだろう。

 お酒が好きだからだろうか。

 いやしかしお酒が好きな人は「進藤組」にもいる。


 そして何が違うのか考えている時、そういえば「進藤組」の人達は首都圏出身者もしくは出身大学が首都圏である人が多い事に気付いた。

 対して「わきあいあいチーム」は地方出身者で地方大学出身者が多かった。


 これは以前考えた噂の「東京は冷たい」に類する事なのだろうか。

 しかし進藤さんはともかく、Aさんの顔色の変化に私は冷たさを感じない。




 進藤さんが言う「仲良くする必要はない」というのは、どういう意味なのか。

 これは監視を続けるしかない。

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