第4章
乗降口には、乗客長のスールが待っていた。
「船長、乗客が乗り込んでくるのには、もう少し時間がかかるようです」
「何があった」
私は船長の制服の身だしなみのチェックを簡単にしながら聞いた。
「軍の関係の方が、火器を船内に持ち込むと言って、口論になってるんです」
「仕方ない、私が直接交渉に行ってくるよ」
船内で唯一の紺色をした船長帽をしっかりかぶり、乗降口を船から出て行く方向に歩いた。
「お客様、困ります」
女性の声が、しっかりとした男の声にかき消される。
「軍人とは、自ら身を守らなければならない。よって、武器の携帯を許可していただきたい」
私が通路を歩いているだけで、そんな言い争いが聞こえてくる。
とても聞き覚えがあるその声の主のことを考えるだけで、気が滅入りそうになるのを抑えて、検札の所へついた。
「やっぱりか」
さすがに銃を振り回すようなことはしていなかったが、恰幅いい体に腰には黒光りしている銃が、ホルスターから垣間見えた。
「エル、久しぶりだな。何年ぶりだ」
「閣下からの命令だから仕方無しにしたが、普段だったら願い下げだからな」
奴の満面の笑顔を見ていると、無性に殴りたくなったが、軍服を着ている状態で殴ると、公務執行妨害や特別公務員暴行罪とかに問われかねないので、ここは我慢する。
「とりあえず、銃などの火器は、こちらに預けてください。規則となっております」
私が丁寧にそこにいた軍人に言った。
軍人たちは、仕方ないという表情を浮かべながら、受付にいる女性に武器の数々を渡した。
「拳銃5丁、弾55発及び予備165発。佐藤小梢少将さま、伊川神戸中佐さま、N・G・C中将さま、メート・ゲート少将さま。たしかにお預かりいたしました。預かりサインをお願いします」
受付嬢は、預かったという証明として、それぞれの名前と預かった品物を印刷した薄くて白いカーボンシートをそれぞれに渡し、その上からボールペンを渡して書かせた。
「ありがとうございます。お預かりした品は、目的地に到着次第、ご返却させていただきます」
「分かったよ」
伊川が、仕方がないという感じに吐き捨てた。
私はそんな伊川を苦々しげに見ていたが、営業スマイルを顔一杯に浮かべて、彼らに告げた。
「では、こちらへどうぞ。客室までご案内いたします」
そういうと、彼らは手荷物を持って、宇宙船の中へ入った。