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第32章

2ヶ月後、ようやく火星の日本皇国首都である新東京へ到着することができた。

「新東京、新東京です。エル社をご利用いただきまして、誠にありがとうございます。お降りの際は、忘れ物がないようお気をつけてお降りください。新東京です」

私は船内放送でそう呼び掛けた。

3か月にわたる旅がようやく終わり、私は乗客の方々を見送るために、ゲートのところへ立っていた。


「今回は、ありがとうございました」

出てくるたびに、礼をして見送っていく。

いつもしてきたことだが、今回は、いつもよりも無事に着くことができたという気持ちが強かった。

北米条約の方々を見送ると、ちょっと間を空けてから佐藤たちが下りてきた。

「佐藤少将、今回はいろいろとご不便をおかけしたことをお詫びいたします」

「いや、大丈夫だ。実戦経験もほしいと思っていたところだし、それに、宙賊との戦闘など、そうそうできるものではないしな」

そう言ってくれたのが、素直にうれしかった。

その後ろから出てきたのが、伊川だった。

私と顔を合わせるのが、なぜか気恥ずかしいようで、軍の制帽を深くかぶり、私と視線を合わせないようにそそくさと逃げて行った。

「あいつもこれからは変わるんだろうな」

佐藤は、荷物の引き取りカウンターへ速足で動いていく伊川の後姿を見ながら言った。

「前と変わらないというのは無いと願ってますよ」

私は佐藤にそう言った。


佐藤とはそれから僅かな時間だったが話した。

その直後に、急にハイテンションの人がやってきた。

「とっても楽しかったです!」

「お喜びいただけたようで何よりです」

私は、いつもの営業スマイルで見送った。

「宙賊という最高のアトラクションがあり、退屈せずに済みました!帰りもぜひ、よろしくお願いします!」

両手で私の手を握られて、向こうは軽い握手のつもりのようだが、私はとても痛かった。

「お客様…」

「え?ああ、すいません。ついつい力が入ってしまって」

彼は、そう言って手を離してくれた。

「次回のご利用時に私かどうかはわかりませんが…」

「それでも、エル社を使わせてもらいます。ありがとう!」

彼は手を振って荷物の引き取りカウンターへ向かう。

彼の妻である美内は、私にお辞儀を一回してからテールを追いかけて行った。

私は深呼吸を幾度か繰り返し、落ち着いてからその場にいた事務員に聞いた。

「これでお客様は全員降りられたわね」

「ええ、全員です」

手元にある分厚いファイルを見ながら、答えられた。

「わかった。お疲れ様。後は、荷物をおろして業務終了よ」

私は電話を使って、貨物のおろしている状況を聞いた。

「カルー、調子は?」

「第3貨物室で報告した通りの損害が見られるだけです。第2貨物室は被害はないようです。第4貨物室へ収容されていた荷物も同様です」

「わかったわ、ありがとう」

私は電話を置いて、一度伸びをした。

それから、この旅の報告書を出すためにサヴァンを呼び、一緒にエル社新東京支店へ向かった。

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