第31章
「分離完了。本船は戦艦"佐渡"と完全に分離し、単独航行できます」
接舷するときとは逆の手順で、嶋山が鮮やかな分離技術を見せてくれた。
「了解した。最初は安定飛行をしてくれ」
「了解です」
私は分離ができたことを聞くと、嶋山にそう指示をした。
ゆっくりと船は軍艦から離れていくのが、船外カメラから見えた。
「安定飛行はいります」
今まで抑えていたエンジンを徐々に回していく。
「機関室、どんな調子だ」
今は機関長が副船長として船橋にいるため、副機関長のポッカが機関室にいて、私に報告をした。
「今のところ大丈夫そうです。何かあれば連絡します」
「分かった」
それから私は嶋山に伝えた。
「5分後、安定飛行から徐々に速度を上げ、通常飛行へ移ってくれ」
「了解しました」
私はそれからゆっくりと船長席に座りこんだ。
5分ほどすると、嶋山が私に伝えた。
「これより、通常飛行へ入ります」
「了解した。機関室、聞こえてるか」
「ええ、ばっちりです。エンジンの調子も万全です。通常飛行に入っても、問題ないと思われますが、念のために、保守の一部の人員を割いてもらってもかまわないでしょうか」
ここでいう保守というのは、保守部の中でも修理担当の人たちのことである。
「こちらから保守長へ連絡を入れておこう。1班の半分ぐらいを常駐させるということでいいか」
保守の修理担当の1班の半分は11人になる。
それぐらいいれば、何事にも対応することができるだろうと私は踏んだ。
「大丈夫だと思います」
ポッカがそう言った。
私はそれを信頼し、すぐに保守長に機関室へ11人修理担当の班員を派遣するように命じた。
通常飛行へ入り、速度を一定に保ってから1時間ほどが経ち、なにも起こらなかった。
私はサヴァンと話し合い、軍のエスコートをここまでとすることを決めた。
「沢田大佐、ここまでありがとうございます。なんとか通常飛行で行くことが出来るようです」
「そうか、一安心だな」
声だけしか出てこなかったが、ほっとした感じだった。
私はとりあえずの考えている航路を伝えると、何かあればすぐに駆けつけれるようにホットラインの番号を教えてくれた。
それから、私は電話を置いた。