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第3章

翌々日になり、船も無事に種々のテストをパスした。

私は船に乗り込むと、船橋へと向かった。


「船長、今は出航準備中ですよ」

嶋山が私が船橋に入るとすぐに声をかけてくる。

手には、皇国政府の名前が書かれているA3サイズの封筒を持っていた。

ちょうど、嶋山もも入ったばかりのようで、手提げカバンを肩にかけて、まだ椅子に座っていなかった。

「そうか、今回の荷物は?」

「カルーがまだ来てないんで、どんな荷物があるか、よくわかりませんね。スールは、先ほど話を聞きましたので、えっと、軍人が5名、民間人が2名だそうですが…」

「どうした」

嶋山は、私に対して伏し目がちに聞いた。

「いえ、船長は軍人の乗船をよく許可しましたねと思いまして…」

「エル社の利益になるなら、仕方がないだろう。私も不本意ではあるんだが…」

「あ、そういえば、思い出しましたけど、政府のほうから通達です」

思い出したかのように、封筒を私に渡す。

「内容は?」

すでに見ているだろうから、簡単に報告を求めた。

「我々が航行経路の予定としているコース上に、宙賊が出ているそうです。それに関する注意文ですよ」

「なるほどな、後でしっかりと読んでおく必要がありそうだな」

「今読んでくださいよ」

すぐ後ろから、ホットココアを紙コップに入れて持ってきたカルーがちょうどいい感じのタイミングで入ってくる。

「カルーか、ちょうどよかった。今回積んでいる荷物についてちょっと聞きたいことがあったんだ」

「話題をそらさないで下さいよ。それ、政府からの通達書でしょ。船長が読む義務がありますよ」

「さすがに、元軍人は規律に厳しいね」

私は思わず元彼のこと、私が軍人嫌いになるきっかけになった人を思い出して苦笑いをした。

「そいや、あいつは元気にしてるのかな…」

「船長の元彼ですか」

私のひとりごとを聞いていたようで、私の背中を通りすぎていったサヴァンが私に言ってくる。

「そんなところだ」

私は彼女にそう言い返して、封筒の封を切った。

中には上質紙が一枚、裏表印刷されて入っていた。

「宙賊が我々の航路上に出ているらしい。報告された手口は、宙賊に襲われているという警報を発報し、真っ先にその宙域にたどり着いた船を襲うというものらしい。同時に航行している宇宙船はあまりないから、それで襲われても助けに来てくれそうにはないわね…」

「どうしますか船長。今のうちなら、宙賊出没により航路を変更したと当局に通告することは可能ですが…」

嶋山が私に言ってくる。

航路を変更する権限を持っているのは、基本的には船長だ。

だから操舵手である嶋山は私に聞いてきたのだろう。

「いや、このままで行こう。今回は軍人が乗っているのも好都合だろう。もしもの時には、傭兵行為をして、守ってもらうことにする」

傭兵行為は、宇宙軍組織法という法律に書かれている特殊な法律行為で、もしも船長が宙賊に襲われていると判断をしたときは、軍人が船に乗っている場合、その軍人を船長の指揮下にし、船を守るということができるとした行為のことである。

ただし、法律上の傭兵行為が行われたのはこれまでに3度しかなく、その3度とも宙賊が逃げ切っている。

「…わかりました。では、航路はそのままということで最終決定でいいですね」

嶋山が当局に報告する前に、私に確認をした。

「ああ、それでいこう」

嶋山に答えると、彼はすぐに近くにあったマイクで航路についての報告をしていた。

「出発準備が終われば、当局の許可を得てすぐに出発するよ」

私が船橋にいた全員に言った。

それから、すぐに乗降口へ向かいながら、貨物長のカルーから報告を受ける。

「今回は、日本皇国植民領の国立博物館にて来年4月より展示される予定の美術品130点、水、医薬品類が計400t分、種籾が300t、種小麦が150t、総価値は美術品が約3000億、その他で150億ほどと報告を受けてます」

「美術品が厄介だな。貴重品担当の係員は合計15人で3部交代制だったな。それで足りるか?」

「足りなくなれば、乗客科から連れてくることができますので、多分それでイケルと思います」

「そうか、なら調整はしなくてもいいな」

私は持っていた電子メモ帳にそのことをメモしておいた。

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