第27章
1時間ぐらい経つと、軍艦が近づいてきたという接近アラームが鳴った。
「沢田だ。そちらの受け入れ態勢について最後の確認を取りたい」
彼の顔が、1時間前と同じ場所に映し出される。
「当方は、貴官の受け入れ態勢をすべて整えました。現在、宙賊は黙して語らず、こちらの応答にも応じない状況が続いています」
「了解した。すぐに専門の部隊を派遣する。捜索隊はすでに編成済みで、そちらの接舷と同時に乗船、捜索を開始する」
「わかりました。その捜索に関する件については了解します。宙賊の引き渡しについては、こちらの司法担当者と話し合ったうえで決定したいと思います」
「分かった」
彼はそれからいくつかのよく言う手続きに関しての確認を求め、私はそれに答え続けた。
「すべて理解した。ああ、大丈夫だ。これより、接舷する」
沢田がそういうと、画面から彼の姿が消え、嶋山が急に忙しそうになった。
嶋山がしているイヤコムを通して、向こう側と交信しながら接舷をするようだ。
「角度、速度同期中。完了。距離確認。100…90…80…角度固定。速度固定。50…40…エンジン一時停止、速度固定確認完了。角度微調節終了。係留索投下、接続終了。10…振動注意。ハッチ接続確認。完了」
嶋山が忙しそうになってからそこまで約1分。
すべての接舷の動作が終わると、船は軽く揺れた。
「接舷確認、完了。ハッチ解放、侵入許可。船長、接舷完了しました」
「こちらのハッチを開く前に、最後に向こう側が本物かどうかを簡単に確かめろ」
「わかりました」
私が嶋山に言うと、沢田が私に連絡を入れてきた。
「こちらは接舷ができた。そちらはどうだ」
「貴船が接舷が終わったのでしたら、当然もう片方の船も接舷が終了していると考えるのが道理では」
「それはそうなんだが、規定で確認する手はずになっているんだ。それに、そちら側のハッチがまだ開いていないようだ」
「分かりました。では、確認次第解放しましょう」
私はそう言って、嶋山を見た。
一回うなづいた。
どうやら本物だと確認できたらしい。
私は何も言わずにうなづき返すと、嶋山はハッチを開放させたらしい。
「こちらのハッチも開放したようですよ」
「そうか、だったらいい」
沢田は何も言わずにそのまま画像を切った。
私は嶋山に聞いた。
「彼らは本物なのか」
「船籍、船型、乗組員情報など、16項目を調査しました。すべてが本物だと示唆しています」
「そうか」
ちょうどその時、佐藤が船橋に入ってきた。
「船長、お疲れ様です」
「いいえ、こちらこそ。人質奪還作戦の協力、感謝します」
佐藤と私は力強い握手を交わした。
「けが人なしというのが非常によかった。だが、犯人の1人が逃走を続けているというのは、どうしてもとらえなければならない」
佐藤が私に力強くいってきた。
「ええ、それは私も同じ思いです。しかし、戦艦佐渡の艦長である沢田大佐が、捜索隊を組織してくれたという話なので、そちらに賭けるしかありません」
「沢田…ああ、沢田家満か」
あいつかという感じの一瞬見せたいらいらしたような表情を、私は見逃さなかった。
「お知り合いですか」
「ああ、兵学校時代からのな」
「そうだったんですか」
私は詳しく聞きたかったが、その前に、沢田が直接こちらに来た。