第25章
船橋へ戻り、私は簡単にイワンフの捜索結果の報告を受けた。
今のところ見つかっていないという簡単なものだったが、外へ出て行った船も一隻もなく、確実にこの船の中にいるということだった。
「そうか、引き続き、捜索にあたってくれ」
私が指示をすると、報告をしていた砲兵員は一礼して、船橋から出た。
「エンジンは?」
「右舷は止まったままですが、左舷は順調です。左右エンジンともに動作試験を社規に基づいて行ないましたが、全てクリアしました」
「では、サンセルと左舷エンジンで運航を続けよう。軍もまもなく到着するようだ。先に軍に引き渡しても構わないだろう」
私はサヴァンとスールと一緒に今後の予定を話し合った。
「軍にエスコートしてもらって、火星まで行きますか」
「一応の予定として、そうしておこう。全部局に通達しておいてくれ」
サヴァンに私はそう言うと、彼女は艦橋の端っこにある乗務員専用のマイクを使って放送をした。
その間に、スールと宙賊3人の処遇について話し合った。
「彼らはどうなるんだ」
「皇国宇宙軍に引き渡された後、または火星にて皇国の当局へ引き渡した後は、裁判にかけられます。おそらく、船長が提示した罪すべてで裁判は行われるでしょう。その後のことは、裁判所が決める事なのでよくわかりませんが」
「最高刑は何になるんだ」
「極刑だったはずですね」
スールがすぐに答えた。
「そうか…」
私はなんとなく胸の中にもやもやが残ったが、割り切って考えることにした。
「それよりも、軍のほうから何か連絡はなかったのか」
「いいえ、今に至るまで、船長が交信するときに返送する以外には、連絡はありません」
私は嶋山と艦橋に荷物の報告書を持ってきていたカルーを一緒に呼んだ。
「軍のほうに連絡を取りたい。犯人1名逃走中、その他は捕縛済みと」
「なら、自分がしておきましょう」
嶋山がカルーが持っていた書類を見て言った。
「頼んだ」
私が言うと、嶋山はすぐに彼の席に戻り、続いてカルーが簡単に貨物の損害状況について報告をした。
「第3貨物室にいれていたのは基本的に種で、小麦に少々被害が出ましたが、数百kg程度の損害で済んでます」
「政府にぐだぐだと怒られるのは好きじゃないからな。さっさと積み出しを終わらせて、修理工場に持っていかないと…」
私がカルーにそう言っていると、嶋山が軍とつながって話したがっていると伝えてきた。