第22章
「山田か」
私は聞き返した。
「なんで、ドーンの手下になんかなったんだ」
「俺は元々、軍のスナイパー部隊にいた。だが、そこを辞めることになって、どこへ行くあてもない時に拾ってくれたんだ」
「なんで、辞めるはめになったんだ」
「お前には関係のないことだ。それよりも、船の準備はどうなってる」
「エンジンが不調なんでな。この船自身も、どうしようもないほどに傷んでしまったんだ。今は、小型機は一機も飛ぶことができない」
私が、あらかじめ裏を付けておいたことを彼らに告げると、急に静かになった。
なにかゴニョゴニョと話しているような感じだったが、私の耳には何を話しているのかわからない。
「じゃあ、そうしよう」
急に、大声を出して、私に言ってきた。
「人質は解放する。ただし、条件がある」
「なんだ。言ってみろ」
「俺らを捕まえることなく地球へ連れて行け。安全に逃走させるんだ。そして、この船に載せてある貨物のうち、日本皇国が輸送を委託した美術品の1点をよこせ」
「その要望は検討しよう。だが、人質をこちらへ返してもらわなければ、その要望をかなえることは到底不可能だ」
再び、彼らは静かに話し合った。
その間に、私は砲兵長を秘密裏に呼び、彼らが人質を解放してから突撃できる体制を整えさせた。
5分ほどで、彼らの話し合いは終わったようで、私に向かって言った。
「人質の解放は、後だ。まずは逃げれるように工面しろ」
「わかった。本国と話し合っておこう」
私はそう言いながら、砲兵隊を貨物室へ突入させることができたか合図を送った。
砲兵長からの合図は、出来た、だった。