第20章
「はい、伊川です」
すぐに、伊川が返事をした。
「ああ、船長だ。さっき伊川が確認した人数は?」
「えっと、3人です」
「3人か。それは人質と思われる人物も混じっているのか」
「ええ、そうです」
「分かった。では、伊川はそのまま彼らを追いかけてくれ。おそらく、ドーン・テーンと人質だ」
「分かりました。このまま彼らを追撃します」
簡単に復唱すると、電話を切った。
私はそのまま、別のところへ電話をかけた。
「はい、砲兵長です」
別働隊として動いている砲兵長へ、確認の電話だ。
「船長だ。今どこにいる」
「貨物室へ通じる通路で、散発的に撃ってきている敵とにらめっこ状態ですよ」
「第3貨物室はそこから見えるか」
「いいえ、死角ですね」
「第3貨物室の侵入者警報が発令されている。制圧前進してくれ」
「しかし、軍務者といえば、メート・ゲート少将とヒップ・ティップ司法長官しかいませんよ」
メート・ゲートは、北米条約連合の火星基地と地球の間の連絡将校として派遣されており、ヒップ・ティップは彼女の上司の上司になる人であった。
私は少し考えて言った。
「わかった。では、私自身が行こう」
「船長、危険ですよ」
すぐに話を聞いていたサヴァンが言った。
「大丈夫だ。私が倒れたとしても、サヴァンが後を継ぐからな」
「残されたこっちの身にもなってください」
「何も心配することはないさ。防備は万全で行くから」
私は受話器を置いて、船橋を出た。
砲兵部の武器庫から軽火器を受け取り、防護庫からはアクリル製の盾とヘルメット、防弾チョッキなどを一揃いそろえて、砲兵長が銃撃戦を繰り広げている貨物室の通路へ向かった。
その時には、いつでもだれとでも連絡が取れるようにと、無線電話を持っていくことにした。