第19章
伊川を派遣してから3分後、船長席のすぐ横にある船内電話が鳴った。
「はい、船長です」
「伊川です。目標補足しました」
「了解、隔壁が上がる場所になったら、ひとつ前の隔壁のすぐ横にある赤いボタンを押して。タイミングは任せる」
「了解しました」
電話は必要最低限に、情報はその中でできる限り多く。
ずっと彼が言ってた言葉だ。
私が彼との電話を切った瞬間に、ふと思い出した。
「船長、どうしたんですか」
私は思わず知らずに笑みを浮かべていたようだ。
サヴァンがちょっと首をかしげながら私を見ていた。
「いや、ちょっと昔を思い出してな」
「昔って、伊川中佐と付き合ってた頃ですか」
「そのあたりだよ」
私はそう言って、2人と談笑を楽しんでいた。
10分ほどしてから、隔壁が遮断されることを示すランプが私の手元で付き、ちょっと遅れてから、息を切らした伊川の声が電話越しに聞こえてきた。
「捕まえたぞ」
「誰を?」
「誰か知らんが」
「今すぐ砲兵隊をその場へ送るから、そいつを拘束し続けといて」
「任せろ」
彼との連絡をそれでいったん途切れさせ、すぐに砲兵長へ連絡し、伊川がいる場所へ派遣する。
3分経たずにその場所へ着いたと連絡が入り、捕まえたという情報が船橋へも届いた。
「誰だ?」
「カワセ・アーノルドのようです」
連絡を受けている私のすぐ横にいた嶋山が、ボソリと悔しそうに言った。
「伊川に80万だな」
「嶋山も行くか?」
私がメモを終え、受話器を置くと嶋山に聞いてみた。
しかし、嶋山は肩をすくめるだけで、答えようとはしなかった。
「まあいいわ。それよりも、カルー、捕まえたことを緊急通信でお父さんに知らせて」
「分かりました」
カワセを捕まえたことをお父さんに伝えると、大臣に直ぐに連絡をすると言っていた。
「残りは3人。問題なのは、名前がわからない一人か…」
「伊川に言って、顔写真だけでも取らせましょうか。それがあれば、軍部にある宙賊のデータベースと照合させて、確認してみたらどうでしょう」
「そうだな。伊川へ連絡を入れておかないと…」
私が受話器を手に持った途端に、カルーが私に言ってきた。
「船長、貨物室に誰か侵入しました」
「乗務員以外の誰かか」
「ええ、扉を無理やりこじ開けて入った模様で、盗犯防止用のセンサーに引っ掛かりました」
「どこの貨物室だ」
「第3貨物室です。もしかして、敵は第2貨物室の美術品を狙ってるんじゃ…」
「だが、貨物室からは今の場所は結構距離があるぞ。10分あっても着けるかわからないというのに」
「別働隊とか…」
とりあえず、その話はいったん切って、伊川へ人数の確認と続いての作戦を伝えることにした。