第18章
サンセルを使って航行している間は、燃料のことを考える必要がない分、別の方向へ考えを向けれるのがよかった。
「とにかく、人質の安全が第一だ。犯人の確保は後としよう」
「分かりました。では、河内ご夫妻を最優先にします」
「まあ、今さらの話ではありますけどね」
私は、嶋山とサヴァンと話していた。
「まあな」
銃撃戦も収まり、敵の場所も分かっているが、一番の問題は人質を持っているということだった。
「とにもかくにも、彼らが離さない人質をどうにかしないと…」
嶋山が腕組みをしながら、私に話す。
「どうやって離すか。一番問題なのはそれだよな」
「どうやってしましょうか。生体反応計とか便利なものはないですよ。電話がかかってきてるから、それで、現在の場所を把握することはできますが…」
「そうか、場所が分かれば対処しやすいじゃないか。隔壁で分断をすれば…」
私が言ったことで、一気にそっちに向かって進みだした。
すぐに2人が見ている目の前で、私は伊川と連絡を取る。
「伊川です」
「エルだ。ちょっと頼みたいことがある」
「なんでしょう」
「確か、特殊部隊の教官だったよな」
「ええ、そうですよ」
「隠密行動とかは得意か」
何かを察したように、急に伊川の声色が変わった。
「何か作戦が?」
「ああ、今からいう所へ向かって、敵を見張ってほしい」
「分かりました」
私は、ドーンたちがいるであろう座標を教え、伊川を向かわせた。
「大丈夫ですかね」
私が受話器を置いてから、嶋山が心配そうに話しかけてくる。
「大丈夫、あいつだったら」
私は、昔通りの彼を思い浮かべながら返した。
「私が知っている通りのあいつだったら」