第17章
「船長か」
銃撃の音が、バックから聞こえてくる。
「そうだ」
声だけで、ドーンだとすぐに分かった。
「今すぐ銃撃をやめさせるんだ。さもなければ、人質の片方を殺すことになる」
「分かった。連絡はしてみよう。できるかどうかはわからんぞ」
「させるんだ。分かったな」
そう言って再び回線は途切れた。
私は受話器を下ろすことなく伊川へ連絡を入れる。
「伊川です」
「人質の命が危ない。今すぐ銃撃を中止せよ」
「…分かりました」
向こうから、銃撃の音が消えると、私は受話器を置いた。
置くとすぐにドーンから電話がかかってきた。
嶋山に指示をして、現在の場所を確かめる。
「船長、よくやった」
「そりゃどうも。人質はいつ解放してくれるんで?」
「最初に言っただろ。船で無事に逃げられたら向こうで解放するって」
「私はちゃんとドーンの言った通り、銃撃をやめさせた。だから、ちゃんと開放をするということを、今、ここで、確約して」
「ああ、ちゃんとしよう」
私は、電話の向こうで、ドーンの知らない顔がにやりと笑った気がした。
「どうだった」
電話を置くと、嶋山に聞いた。
「さっきと同じ場所ですね。さすがに、船中の壁にある船内電話を使っているんで、一発で場所がわかりますよ」
「それだけがありがたいことだな」
私は嶋山にそういうと、サヴァンに聞いた。
「彼らが逃げるための船というのにかかる準備期間を、どれだけ伸ばせれるか?」
「やろうと思えば、火星に着くまででも」
「どうするんだ」
「彼らが本船にぶつけてきた衝撃で、すべての予備機のエンジンが不調になってしまったというのはどうでしょう」
「なるほど、次言ってきたらそう返してやろう」
私は、そういう気構えで笑って見せた。