第16章
「次は何だ」
私が誰彼問わずに叫んだ。
「軍属の方々が、貨物室付近でで発砲した模様です。砲兵部隊も発砲個所へ急行させます。同時に、右舷側エンジンも不調です」
カルーが私に向かって叫んだ。
「了解した。敵の人数は分かったか」
「4人および2人です」
敵が4人で、人質が2人ということになる。
私はすぐに軍属の誰かと連絡を取るために、船内電話をひっつかむと同時に、サヴァンに指示をした。
「サヴァン、左舷側のエンジンもすべて停止させろ。サンセルを起動させる」
「サンセルですか。あれは久しく使ってない機能ですよ」
「いいから準備を」
最後には、私は怒鳴っていた。
それから、伊川に連絡を取ろうとして、番号を押し、相手が出ることを期待して電話をかけた。
「はい、伊川です」
後ろでは、パンパンと獣の発砲音がわずかに聞こえる。
「船長のエルだ。敵は4人、人質は2人と聞いているが」
「ああ、その通り。向こうから発砲をしてきた。空気の漏れは今のところないが、あったら、非常に危ない。軍艦はいつ来るんだ」
「こっちに向かってきているそうよ。後4時間ぐらいでこの宙域に到着するって」
「4時間か、持ちこたえればいいんだが」
「なんとかして。私も行こうか」
「いや、エルはそこにいてくれ」
伊川は、そう言って私に伝える。
「分かった。敵は…」
「ドーン・テーンだろ。分かってる。ただな、4人目が誰かわからん」
「私も情報を探してるんだけど、4人目だけはなぜか出てこないのよ。もしかしたら、データベースに漏れがあるのかも…」
「かもな。じゃあ」
伊川は、それだけ言うと、電話を切った。
切ると、船がゆっくりとなり、一瞬止まったような感じがした。
だが、再び微速前進を始めた。
「サンセル解放完了です」
「確認のため、外部ビデオを回してくれ」
私はサヴァンに言うと、目の前にあるテレビの左半分が、外部カメラからの映像になった。
サンセルは、太陽帆のことであり、太陽風を受けて徐々に速力を得ることになる。
通常は使用しないのだが、エンジンが完全に停止した際の動力として使うということになっているため、どの船にも搭載されている。
カメラの広角レンズからはみ出るほどの大きさのサンセルは、太陽の光を反射し、きらきらと輝いていた。
「火星にいったら、ちゃんと取り替えておかないとね」
「もちろんです」
非常サイレンを止め、私は船長席でしばし考え事をした。
それが遮られたのは、船内電話がまたかかってきたからだ。