第14章
連絡の主は伊川だった。
砲兵長から頼まれて、4101号室へ向かうチームのリーダーになったらしい。
「船長、4101号室には誰もいないぞ」
「周囲を捜索してくれ。不審者がいれば、即尋問を」
「了解」
こういうときには、何も言わずに私の言うことを聞いてくれる。
前もこんな感じだったらよかったんだけど、そんなことを考えている暇はなかった。
再び、宙賊から船内電話がかかってきた。
「地球へ向けたか」
「ああ、今向かっている。だが、時間はかかるぞ」
「それは考慮に入れてある」
宙賊はそう言った。
「そういや、まだ名前を聞いてなかったな。お前の名前は何だ」
私は電話の向こうにいる宙賊に言った。
「名前など聞いてどうするつもりだ。まあいい、ドーン・テーンと聞いたら、誰か分かるか」
「ああ、十分だ」
私はそう言って、船内電話の受話器をおろした。
「船長、どうしたんですか」
すぐにサヴァンが私に聞いた。
「宙賊の名前がわかった。軍のデータベースと照合してくれ。名前はドーン・テーンだ」
「ドーン・テーンを検索します。1人ヒットしました。ドーン・テーンは15年前から宙族として活動をしており、略奪を繰り返しているそうです。100万の賞金首でもあります」
「100万か…」
宇宙軍のデータベースに登録されている宙賊は、金額の高低はさておき、全員一定以上の賞金がかけられていた。
賞金狙いのハンターが広く宇宙で活動をしていたが、運悪くこの周囲には誰も来ていないようだった。
ちなみに、その賞金額は一番下が1000で、上は上限なしということになっていたが、100万程度が今の最上であったはず。
私は、しばらく考えてからサヴァンに聞いた。
「仲間は?」
「カワセ・アーノルド、イワンフ・セカルドが登録されています。ともに80万の賞金首です」
「噂だと、ドーンは4人組って聞いてたが…」
私は、地球で仕入れた噂を思い返しながら聞いていた。
「軍のデータベースに登録されているのは以上の3人です。軍からは合計260万の賞金がかかってますね」
「生きて渡すことが条件とか?」
「生死問わずだそうです」
サヴァンの話を聞いて決断した私は、船内放送をかけた。
「現在、この船に宙賊が入り込んでいます。最低でも3人はいる模様です。今回の宙賊のトップであるドーン・テーンには100万、カワセ・アーノルド、イワンフ・セカルドの両名には80万の賞金がかかっています。最初に捕まえて、船長である私の元へ届けたものには、その賞金が軍より渡された時点で全額を渡します。その他の宙賊が紛れているおそれもあるが、その場合は、独自に10万を同様に支給するものとします」
そう言うと、船内放送を切り、サヴァンと簡単に打ち合わせをした。