第13章
砲兵長からの連絡が急に入り、本社との交信を一旦やめた。
「船長、軍属の方々が到着しました。戦闘を開始します」
「戦闘を許可する。軍属の方々から全面的に援助を受けることになっている」
「了解しました」
そう言って、砲兵長との連絡が終わると、ほぼ同時にどこからか連絡が入る。
「はい、船長です」
「船長か、お前の乗客を人質にとった。今すぐ地球へ引き返させるんだ」
その声を聞いた瞬間、サヴァンへ目配せをし、サヴァンは嶋山へ発信源をたどるように伝える。
「地球へ引き返させる、ですか」
「そうだ。さもなくば、お前の船の乗客のうち、初老の2人が死ぬことになる」
この船に乗っている初老の方は、1組しかいない。
「分かった、ではこれから地球へ戻る」
「他の要求は追って伝える」
そう言って、彼らは一方的に電話を切った。
「サヴァン、乗客が人質に取られた」
「えっ。だって、厳重に隔離していたんじゃ…」
「それを行う前に入ってきたのだろう」
私は推論を言った。
しかし、それをいくら此処で言ってても始まらない。
「砲兵長、一部の人を4101号室へ向かわせろ」
「分かりました」
私に何も言わずに、砲兵長はすぐに幾人を向かわしたようだ。
「では、我々も出来る限りのことをしようか」
私がサヴァンに言った。
それから2分後、ようやく社長へ電話がつながった。
「社長、緊急事態を通告します」
私がお父さんをそう呼ぶときには、私の手に負えない時だと決めていたため、すぐに慌てた口調になる。
「何があった」
「宙賊に襲われました。軍に通告は済ましましたが、ちゃんと伝わっているかどうか…」
「分かった。宇宙軍に伝えておこう。AIを通して、場所も確認しておく」
「分かりました」
私が電話を切ると、嶋山とサヴァンを船長席へ呼んで相談をした。
「地球へは向かわない、ここから火星へ向かう」
「でも、火星に向かっていると気づいたらどうするんですか」
「舵が壊れて直進か、緩いカーブを描くことが精一杯だと言っておく」
「では、軍属の方々は…」
「そのまま戦闘を続けさせよう。宙賊が捕まれば、こちらに連絡を入れるだろうし」
そう言って、私たちはこれからの方針を決めた。
サヴァンがエンジンを再開させ、火星へ向けて進みだすと同時に、私が船長席に座り、そして通信が入ってきた。