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この作品には 〔ボーイズラブ要素〕〔残酷描写〕が含まれています。

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サクサク読める短編集

ネトラレ勇者とNTR男

作者: 2626
掲載日:2026/05/08

 「どうせ裏切られて傷つけられるなら、せめて君に傷つけられたい…………」

ベルドレッドは泣きながら俺に頼み込んだ。




 俺は遊び人のクーランスだ。

史上最強と呼ばれる勇者ベルドレッドの幼なじみで、その縁で同じパーティに所属している。


 この世界の人間は、魔物に対抗するかのごとくユニークスキルを持っている。

俺のユニークスキルは【ピュア】とか言う何に役立つのか全く分からない代物だが、ベルドレッドのユニークスキル【ネトラレ】は史上最強と呼ばれるに相応しい恐ろしいものだ。

凄まじい破壊力を持つ【NTRソード】を無尽蔵かつ無制限に繰り出して、敵を殲滅するのである。


 しかし。

強力なユニークスキルには発動条件がある。

信じている人に裏切られたりして心や体を傷つけられないと、ベルドレッドは爪楊枝さえも出せないのだ。

とは言え、戦闘中に体を傷つけるってのはあまりにも非効率なので、ベルドレッドが戦う時には遊び人の俺がその場でパーティメンバーをNTRしなきゃいけない。


 「街道北に魔物の大軍と思しき敵生体が200。 依然こちらに接近中なのじゃ。 みな、戦闘の用意をするのじゃ!」

女盗賊にして斥候役のエメラインが偵察から帰って来るなり、険しい顔で切迫の事態を告げる。

「ええ、いつでも良くってよ」

女魔法使いのサリーが杖を手に頷くし、

「背中はアタシに任せてくれ!」

女戦士のアメリアが斧と盾を構える。

「くれぐれも無茶はしないで下さいね」

女神官のマーシャは祈りを捧げてパーティメンバーに祝福(バフ)をかける。

そして、悲痛な顔をしたベルドレッドが聖剣を手にした。

「僕が先陣を切ろう! クーランス、頼む!」


 頼まれちゃ仕方ない。

こんなこと本当はしたくないが、幼なじみの頼みとあれば断れない。


 俺はベルドレッドの目の前で、女神官のマーシャの唇を奪ったのだった。

ベルドレッドが強く信じている彼女と俺が、裏切るかのように熱烈にキスをする――その絶望こそがベルドレッドのユニークスキル【ネトラレ】を発動させた!


 「――う、うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!」


 【NTRソード】が無尽に生み出されて、魔物の大軍を襲う。

逃げようとした魔物やそれでもこちらに襲い来る魔物は、全て残さずサリーとアメリアとエメラインが討ち取った。




 その日の夜。

テントの中で一人でベルドレッドは泣いていた。

「違うんだ。 クーランスは僕のためにわざとNTRしてくれているんだ。 なのにどうして僕はこんなに心が痛いんだろう……」

またか。

昼間のアレで、見事に脳が破壊されたらしい。

この世でただ一人、聖剣を振るえる勇者なのに、可哀想なくらいに泣きじゃくっている。

「ベルドレッド、早く魔王を倒そうぜ。 魔王を倒さないと俺達のこの旅は終わらないんだ」

「うん。 ……うん。 ねえ、クーランス。 僕はね……」

けれど昼間の疲れもあったのだろう、ベルドレッドはその言葉を言い終える前に寝てしまったのだった。




 俺が火の番をアメリアと交代して、ついでに夜明けが近かったので朝飯を作っているとマーシャが起きてきた。

「おはよう、マーシャ」

「ねえ、クーランス。 一度聞きたかったのですが、キス魔の癖に、どうして私達にはそれ以上のことをしないのですか?」

とうとうキス魔って言われてしまった。

少しショックだったが、でも俺の日々のセクハラじみた所業からすれば当然である。

「だってベルドレッドに悪いじゃん。 俺アイツのこと好きだし。 それにただでさえNTRで傷ついているアイツをこれ以上傷つけたくはないんだ」

「……」

マーシャはじーっと俺を見つめてから、

「ははーん。 【そう言うこと】だったのですね。 成る程、だからですか。 だからアメリアもエメラインも、サリーも……」

不自然にニヤニヤし始めた。

いきなりどうしちまったんだ?

「【そう言うこと】って何のこと?」

「いいえ。 まだ今は外野が騒ぐ時期じゃありません。 でもクーランス、神殿なら私のコネでいつでも押さえておきますから。 では二度寝してきますね」

よく分からないことを言いながら、マーシャはテントに戻っていってしまった。




 さて、とうとう俺達の旅は終わりを迎える。

魔王と戦う最終決戦を迎えたのだ。

人々に仇なす魔王は、とても強かった。

ベルドレッドが必死に【NTRソード】を駆使しても、アメリア達がどれ程戦っても、傷一つ付かなかったのだ。

しかも。

最悪なことに、背後でポーションやらアイテムやらを補給する係をやっていた俺が人質に囚われてしまう。

「グワーハハハハ! この人間から食ってくれるわ!」

そう言うなり俺の首筋を魔王の臭い舌が舐める。

しまった!

俺がNTRしないと、ベルドレッドはユニークスキルを出せないのに!

「ひっ!」

小さな俺の悲鳴とベルドレッドの絶叫が重なった。

「――止めろおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!」


 直後。

聖剣と【NTRソード】が融合した。

【聖NTRソード】となったその剣の一閃が、魔王を見事に滅ぼしたのだった。




 「……あのさ、ベルドレッド」

帰り道。

ベルドレッドは無言だった。

無言のまま、俺の前を歩いていた。

「……」

返事は来なかったけれど、少しだけその肩が震えたので俺は言葉を続ける。

「もしかしてさ、()()N()T()R()()()()()()じゃなくって、()()N()T()R()()()()()だと――ずっとベルドレッドは思っていたのか?」

「……」

不自然な沈黙。

「俺、ベルドレッドにとっては、そのくらい大事な人間だったと思って良いのか?」

もしかしたら俺の勘違いかうぬぼれかも知れないと危惧しつつ、俺は言ってみた。

「……」

否定の言葉が一切来ない。

さっきからずっと沈黙で全肯定している、ベルドレッド。

俺は困ってしまった。

「なあ、ベルドレッド。 俺は今はまだお前のことそこまで好きじゃない。 ずっと幼なじみだと思ってたし」

「……ごめん」

違うんだ、ベルドレッド。

俺はお前をそんな風に謝らせたかった訳じゃないんだ。

「だから、これから恋愛を前提に交際ってのはどうだよ?」

「……え?」

ようやく振り向いたベルドレッドは、目をまん丸にしていた。

「嫌か?」

違う、違うんだと言いながらベルドレッドは駆け寄って俺の手を握りしめる。

「本当に……!?」

「その代わり、俺を裏切るなよ! 絶対だぞ! 俺はもうNTRなんてするのもされるのも嫌だからな!」


 直後。

俺達はアメリアとエメラインとサリーとマーシャに小突かれ、揉みくちゃにされ、胴上げまでされながら祝われたのだった。

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