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第十一章 三つの正義

 夜。

 廃区画C-12。

 今夜はライの他に、もう二人いた。


 ガーディアンのメンバーだ。

 一人は背の高い女性。もう一人は年配の男性。どちらも武装している。


 そして——白峰奈緒も来ていた。


 全員が顔を合わせた瞬間、空気が張り詰めた。


「白峰さんを連れてくるとは聞いていない」とライが言った。

「俺が判断した」と駿は言った。「彼女は敵じゃない。そしてお前たちの中に、俺たちを利用しようとした者がいる。それを確認したくて来た」


 ライの表情が動いた。


「どういうことだ」

「白峰奈緒の通信記録が改ざんされた。バロス連合のエージェントのように見せかけた偽の記録が埋め込まれた。コードのクセがガーディアンのものと一致する」


 ライが背後の二人を見た。

 年配の男性が——一歩、後退した。


「動くな」と甚之助が前に出た。


 空気が凍った。


 ライが年配の男性を見た。


「……ドクター・ヴェルス」

「ライ」と男性が言った。「これは全体のためだ。白峰奈緒を排除しなければ——」

「俺の指示じゃない」とライは言った。低い声で。「俺はそんな命令を出していない」

「組織の判断だ。お前がいつまでも決断しないから——」

「その組織の判断を誰が承認した?」


 沈黙。


「ヴェルス」とライは言った。「お前は——何者だ」



 ヴェルスが動いた。

 瞬時に。


 女性メンバーを盾にして、後退する。手に武器——小型のエネルギー兵器だ。


「どけ!」

「やらせない」と甚之助が前に出た。


 エネルギー弾が放たれた——甚之助の肩を掠める。強化スーツが受けた。


「ちっ」

「甚之助!」とヨーコが叫んだ。

「大丈夫だ!」


 ヴェルスが廊下に走り込んだ。

 駿が追う。



 廃区画の薄暗い廊下を、駿が走った。


 強化スーツのブースターが起動する。時速百キロに迫る速度。

 ヴェルスとの距離が縮まる。


 ヴェルスが振り返った。エネルギー兵器が向く。


 駿は壁を蹴った。

 斜めに跳んで、弾丸の軌道をずらす。天井に触れ、反転して落下する——その軌跡はどこか、重力を無視した動きだ。


「嘘だろ——」とヴェルスが呻いた。


 着地と同時に、駿の手がヴェルスの手首を掴んだ。

 一捻り。エネルギー兵器が床に落ちた。


「終わりだ」


 ヴェルスがもがいた。

「離せ! お前たちにはわかっていない!バロス連合と協力することが——地球を守ることになる!あいつらを敵に回したら——!」

「バロス連合に取り込まれることが守ることか」と駿は言った。

「地球の多様性がなくなっても、生存できる方がいい!オムニアが言う多様性なんて——」


「ヴェルス」


 ライの声が廊下に届いた。

 駿が振り向くと、ライが歩いてきていた。


「ガーディアンに入った理由を覚えているか」


 ヴェルスが黙った。


「地球を守るためだろ。バロス連合と繋がって、地球を内側から渡すのが守ることか?」

「……完全に排除するのは不可能だ。やつらは強すぎる——」

「強いから従う、と?」

「現実的な判断だ」


 ライが、ヴェルスの正面に立った。


「それは——俺も一度、考えた」と静かに言った。「計算が正しければ、何でもしていい。強い相手には従う。そういう考え方だ。でも——」

 ライが止まった。

「俺の幼なじみを殺した計算は正しかった。でも——それで俺は何も守れなかった。わかるか?」


 沈黙。


 ヴェルスの肩が——少し、落ちた。



 その後、ヴェルスは甚之助が設計した拘束具で確保された。

 ガーディアンの女性メンバーが通信でEDFに連絡を入れた。


「クロス少佐に引き渡す」と駿が言った。「バロス連合のエージェントとして処理してもらう」

「少佐は信用できるか?」とライが聞いた。

「できる」と駿は言った。


 白峰奈緒が歩み出た。

「証拠の提出は私がサポートする。内閣府を経由した方が、処理が早い」


 ライが白峰奈緒を見た。

「……あなたに、謝らなければいけない。組織の一員がやったことだ」

「謝罪を受け入れる理由はない」と白峰奈緒は言った。「でも——同じ敵を追っているなら、それでいい」


 廃区画に、少し静かな時間が流れた。


 駿がライに言った。

「ガーディアンは、これからどうする?」

「変える」とライは言った。「これだけのことが起きた。変えなければいけない。でも——独りではできない」

「俺たちに頼む気か」

「……頼む気があれば、頼んでもいいか?」


 駿は少し考えた。


「今夜のことを話してみる。俺だけでは決められない」



 三人で外に出た。


「どう思う?」と駿がヨーコと甚之助に聞いた。

「ライは信用できると思う」とヨーコが言った。「でも組織全体はまだわからない。時間をかけて見ていく必要がある」

「俺も同じ意見だ」と甚之助。「今日みたいなことが起きる組織と、深く連携するのは危険だ。でも——縁を切るのも惜しい」

「ヴェルスのような人間が内側にいたのは、組織の問題だ。でもライが変えようとしているなら——変わる可能性がある」


「様子を見る、ということか」

「そうだ」とヨーコは言った。「ガーディアンが変わるかどうか、見届けながら——俺たちは俺たちの戦い方で続ける」


 駿がうなずいた。

「それで行く」


 「アマテラス」の夜が、少し静かになっていた。

 遠くで地球が輝いている。


 守るべきものは——内にも、外にも、ある。


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