表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
10/20

第4話【犬神】2

 その後、小早川さんは娘さんの年齢、自宅の間取りや周辺の環境などの聞き取りを行い。


「それでは18時に琴似ことに駅でお待ちしております」

そう言うと小林さんは深々とお辞儀をして事務所を後にした。


その後すぐに“トントン”と事務所のドアをノックする音とともに橘くんが事務所に出勤した。


「今帰ったのって依頼者さんですよね?今度はどんな依頼ですか?」

そう言って橘くんは胸の前で左右の握りこぶしをぶつける。


「端的に言えば“犬”ですね。単純な動物霊か最悪は“犬神”です」

小早川さんは眉間に皺をよせる。


「犬神ですかー。講習とかで話は聞いてますけど、それって強いんですか?」

橘くんはワクワクしている様子で拳を握りしめ訊ねた。


「橘くんの強いの答えになるかは分かりませんが、儀式によって作り上げた呪いを何世代も重ねてまつった物なので橘くんでも一撃で消滅させるようなことは難しいと思いますよ。それに犬神の飼い主に見当が付かないので誰かが取り付かれてしまったら手が出せません。何の罪も無い人を失神するまで殴り続けるのは橘くんも嫌ですよね?」

小早川さんは真顔で言っている。冗談ではなく、これから決める作戦が失敗すると最悪そうしなければいけないのだろう。


「そうならないために全力で取り組みます・・・」

橘くんに先ほどまでの浮ついた様子は無く、不真面目だった態度を反省しているようだった。


「それでは、作戦ですが・・・」


 小早川さんの作戦はこうだ。前提として“犬”と想定される何かは小林さんの娘さんを狙っており、精神的に弱りきっている今日か明日も何らかの目的を果たすために娘さんの前に姿を現す。


 小林さんの自宅は2階建ての一軒家で左右と後方に隣家があり4m程度離れている。間取りは1階にリビングと和室、2階には娘さんが使う子供部屋と夫婦の寝室があるとのことだ。“犬”の侵入経路として、玄関とリビングの窓と和室の窓が最有力のため、娘さんには自室にいてもらう。玄関前に橘くん、2階への階段があり全体を見渡せるリビングに小早川さんが陣取り備える。小林さん夫婦は小早川さんとリビングで待機してもらう。


「ですが・・・これだと娘さんの警備が手薄になるのですよね・・・」

小早川さんは顎に手を当てて難しそうな顔をしている。


「それじゃあ、秘密兵器の私が行こうか?」

凜さんが奥の部屋からニヤリと笑いながら顔を出した。


「げっ、姉ちゃん、居たのかよ。何が秘密兵器だよ。見えない姉ちゃんがいても足手まといだから」

それを聞いた凜さんは無言で橘くんに近づきハイヒールのつま先で脛を蹴る。


「痛っ!!何すんだよ」

橘くんは蹴られた脛を押さえ苦悶の表情をしている。


「善意で手伝おうとしている姉に『げっ』だの『足手まとい』だの言うなんて、どこで教育を間違えたんだろう。シクシク・・・」

凜さんは目の下に指を置いて明らかな噓泣きをしている。


「それは言い過ぎた。悪かったよ。でも、口より手・・・今の場合は足だけど、が先に出るのは直した方が良いよ。だから彼氏に逃げられるんだ」

それを聞いた凜さんが無言で橘くんに近づこうとするが、小早川さんが腕を伸ばし静止する。


「凜の申し出はありがたいのですが、何が起こっているか分からないのでは離れている我々に助けを求めることも難しいです。それにお昼を過ぎていますけど、お仕事は大丈夫ですか?」

そう言って小早川さんは壁掛け時計を指差す。


「えっ、もうこんな時間!!それじゃあ、みんな気を付けてね」

そう言うと凜さんは慌ただしく事務所のドアを開けて階段を下っていく。


 人一倍賑やかな凜さんが居なくなったことで事務所内は静寂に包まれる。


「あの、私が付いて行くというのはどうですか?」

私は意を決し少し緊張しながら訊ねた。ここまで話は聞いていて蚊帳の外は少し寂しい。怖がりの私ではあるが、好奇心の方が恐怖よりも勝った。


「木花さんですか、見えているので条件としては大丈夫なのですが、ご両親と『危険な業務はさせない』と約束してますし・・・」

そう言って小早川さんは顎に手を置き考えている。


「危険になる前に解決してくれるよね?」

私は橘くんの方を向いて笑顔で言った。


「おう、まかせとけ」

そう言って橘くんは自分の胸の前に握り拳を上げる。


 昼休みになり、父親に小早川さん達と同行する許可を得るために電話を掛ける。後々になってから小早川さんが責められては困るので、“自分の意志で無理を言って付いて行かせてもらう”という事を強調して伝える。最初は『危ないのでは』と渋っている様子だったが、私の熱意に負けて了承してくれた。娘からのお願いに父親は弱いのだ


 私と小早川さんが雑務をこなしている間、橘くんは大き目なスポーツバッグに小早川さんに言われた必要な道具を詰めている。そうしている間に時刻は夕方、事務所を出発する時刻となった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ