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第1話【呪いのビデオ】1

 私こと、木花このは 咲耶さくやは20歳の女子大生である。

大学入学とともに北海道の田舎の町から札幌に出てきて一人暮らしをしている。

『桜が咲き誇るような美しさを持つとされる、桜の女神』にあやかり母がつけてくれた名前ではあるが、私自身はどこにでもいる平凡な容姿で明らかな名前負けをしている。


 そんな私が橘くんと初めて会ったのは、2005年の春のことだった。

 


 私はパンを売りにしたフレンチレストランで大学1年だった去年の秋からホールスタッフのアルバイトをしている。時給は安いが同年代の学生が多く、バイト終わりにご飯を食べにいったり、休みの日は誰かの家に集まりゲーム大会をしたりとスタッフ全員が割と仲の良いバイト先である。


「呪いのビデオを手に入れた?」

石永いしなが ひとみは訝しんだ目で厨房スタッフの佐々ささき 健二けんじの方を見た。


 瞳は私と同じ大学の2年生。中学から高校まで陸上をしており健康的な褐色肌をしたスレンダー美人で姉御肌の頼れる友人である。

 佐々木はバイト先の近くの専門学校の2年生。お調子者なのが態度や外見ですぐにわかってしまう残念な人だ。


「マジだって!見てよ!これ」

佐々木が持ってきたのは外側のケースに『見たら死ぬ』と血のような文字で書かれているVHSのテープだった。


「血みたいな文字が怖いね。『見たら死ぬ』って本当に見たら死んじゃうの?」

私は首を傾げながら尋ねた。実は私はこういった怖い話が苦手なのだ。


「怖いなんてもんじゃないぜ。これを見たら最後、7日後には必ず死ぬらしい」

佐々木は眉間にしわを寄せて低い声で言う。


「馬鹿じゃないのただの噂話でしょ」

瞳はため息をついた。


「違うんだ。先週、兄貴の友達の友達がこれを見て……今入院してるんだ」

佐々木は真剣な表情で言った。


「それってマジ……?兄貴の友達の友達ってずいぶん遠い関係だし信じられないなー。」

瞳はさらに疑りながら呟く。しかし佐々木の深刻そうな態度に心配になった様子だ。


「とりあえず、バイトも終わったことだし見てみようぜ。」

佐々木は冗談めかして言った。


「ダメだよ!危ないよ!」

私が慌てて制止しようとしたが遅かった。すでに佐々木はマニュアル講習用に使っている、テレビデオにVHSテープをセットしていた。


「ほら、再生始めるぞ」

画面が暗転すると白黒の映像が流れ始めた。様々な知らない場所の映像が1秒程度ずつ流れた後、荒廃した屋敷の前に立つ黒くて長い髪の女性のような影。その影が突然カメラに向かって近づいてくる。


「うわっ!」

一同は驚いて後ずさりした。


 突如、部屋全体が冷たく重い空気に包まれた。窓ガラスが震え始め、不気味な風の音が聞こえてくる。


「女が近づいてくる!!」

瞳は叫び、私は『キャー』と叫び瞳に抱きついた。


その時、部屋のドアが勢いよく開いた。


「何やってんのお前らは、そんなびっくりした顔して」

そこに立っていたのは眠そうな顔をした佐藤店長(28歳独身彼女無し)だった。


「学生と違って朝から晩まで働いて30連勤目だよ、早く帰ってくれないと店閉めれないんだけど・・・」

あくびをしながら悲壮感ひそうかんただよわせながら店長は言った。


「店長!テレビから女が!」

佐々木は叫んだ。しかし、テレビは黒い画面のまま何も映ってはいなかった。


「何も映ってないよ。さぁさぁ荷物をまとめて、さっさと帰った帰った。」

店長は気だるげに手を振った。


「お、お疲れさまでした」

私たちは急いで荷物をまとめ逃げるようにバイト先を出た。


「あれ何だったんだろうね?確かに女の人の手がテレビから出てきてたように見えたけど・・・」

帰り道の途中で瞳は呟いた。


「ごめんなさい。怖くて瞳ちゃんの腕しか見てなかったよ。1人は怖いから瞳ちゃんの家に泊まっていい?」

私はそう言って瞳の腕に抱きついた。


「俺の家なら泊ってもいいぜ。何なら一緒の布団で寝てやるよ!」

佐々木は胸を張りニヤニヤしていた。


「あんたみたいな野獣に私の大事な咲耶を任せられるわけないでしょ。気持ち悪い」

さげすむような眼で瞳は言った。


「ひでぇ・・・」


 そんなやり取りをしながら私たちはそれぞれの家に帰った。


「やっぱり瞳ちゃんの家に泊まればよかったかな」

ベッドの中で呟いた。


夜は深まり街が静寂に包まれている。時折遠くで車の走る音が響くだけ。

なんだかすごく不安になってきた。私は布団に包まり瞳にメールをすることにした。


『寝てた?やっぱり怖いから少しだけ電話していい?』震える指でメッセージを送信する。すぐに瞳から電話が来た。


「大丈夫だよ~。私もちょっと怖くなってたし、話しながら寝ようか」


「ありがとう」そう返事をしながら安心感に包まれる。そのまま学校の事やバイトの事などを話して落ち着いた私は電話を切り眠りについた。





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