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参謀とメイド

「これからの日本国の未来のために共に歩んでいきましょう!!」

威勢のいい総理の言葉が聴衆を沸かせた。周囲に集まった約100人ほどの人々が総理の街頭演説を退勤ラッシュであるこの時間にわざわざ足を止めて聞き入っていた。首相の警護担当として、もちろん不特定多数のいる場での演説は控えるよう進言した。


しかし、今回の総理は国民と触れ合うことを第一としているらしい。だから、演説はこれからも定期的に継続する。そう突っぱねられ、一応国民であるはずなのだが、そんな僕の意見は通らなかった。


それでも首相をいかなる状況においても守る。それが日本国内の要人警護専門のSPとしての役目。要人を守ることができればこの命さえ惜しくない。


そう思っていた。


[[パンッッ!!]]


乾いた発砲音が東京の中心に響き渡る。と同時に自分の視界がかすみ、音が遠くなっていくのを感じた。


あ、死ぬのか。そう悟るのに時間はかからなかった。


銃が発泡される数分前、僕は一人の男に疑いの目を向けていた。その男は最前列から2列目に立っており、帽子とマスクをしていた。体格はややせ型だった。


流石の疑い深いSPといってもそれだけなら気にはするが完全マークはしない。


しかし、周囲はスマホ片手に総理に視線を集中させているのに対し、彼は前列で唯一両手をポケットに突っ込み、少し落ち着かない様子で目線を動かしていた。 


 一言でいえばその時僕は「違和感」を感じたのだ。


それが、こんな結末を迎えるなんて。これで良かったのだろうか、、、。これでもエリートと言われた人生。自分でもある程度の力はあると思っていた。


慢心していたことを今さらながら後悔した。命をかけて仕事はしていたつもりだったがもう少し長く生きられると思っていた自分がいたのだった。


まぶたの向こうがなんだか明るい。僕は神経を目に集中させ、ゆっくりと開いた。


視界がぼやけてよく見えない。茶色…。木目だ。 天井か。壁は、、、 白。


そこは、木の天井と漆喰のようなもので作られた壁でできた部屋だった。窓からは、眩しいくらいの光が窓の枠の影を落としながら降り注いでいた。


「ここは…… どこ…だ」


口の中が乾ききっていて口が回らない。僕はかろうじて出たつばを飲み込み、舌で唇を湿らせた。


どこからか足音がしてくる。それがだんだん近づいてくるのを感じると、僕は反射的に起き上がろうとしたがあえなく失敗した。


体に思うように力が入らない。


そうこうしているうちに足音がすぐそこまで来ていた。まずい。また、死ぬのか。現状すら把握できていないが直感的に何かの危機を感じた。


しかし、ドアの向こうから現れたのはメイド服を着た女の人だった。


年齢は20前後だろうか。とても美しく、優美で可憐という言葉がよく似合った。


「あら、お目覚めですか。」

若いメイド服の女性はその透き通る声で僕に気を使いながら持ってきた桶にタオルを浸し、絞り始めた。


「え、ええ。 ここは?」

そう尋ねると彼女はニコリと笑ってこちらに歩み寄りながら教えてくれた。

「ここは王家ルミナス家の侍従宿舎です。」


「…え?」


「え?」

そんなに可愛く首を傾げないで頂きたいものだ。その純粋無垢な大きい光で満ちた瞳。職業柄ハニートラップにかけられる地位の高いとされる方々の気持ちが分かったような気がした。


「王家、ですか?」


「ええ。」なんでも僕はルミナス家というこの国の王家の旅行の帰路で道端に倒れているところを助けてくれたのだという。

「そ、それはどうも。」


「いえいえ、私達は陛下のご命令に従ったまで。お礼は心優しい陛下になさってください。」


「はあ。」

なんだかよく分からない。僕は死んでいないのだろうか。


ベッドの感触もあるし、体も少し痛むから多分死んではいないはずだ。でも、ここは日本じゃない。ルミナス家といったか?でも、彼女は日本語を話している。現実ではないな。しかし、では何だというのか。


「異世界転生」という言葉が頭をよぎった。まさか、自分に限ってそんな。と、思ったがほかの可能性が浮かばなかった。アニメでしか見たことないが条件としては完璧だ。


やや前世に未練があり、目が覚めるとそこには美人なメイド。しかも僕は王家に救われている。


はあ、神様は存在していなさったのか。昨年の初詣でをすっぽかしたことに目を瞑ってくれていたことに感謝する。来年のお賽銭は弾んでおこう。


「あの〜。」

「は、はい。」

彼女の声にふと我に返った。そこには俯きながらタオルを持つ彼女の姿があった。

「お体お拭きしてもよろしいですか?」

まさかそんなサービスまでついているのか。あとでありったけ絞られるということは無かろうな。まあ、今手持ちは絶対に無いと思うからその心配はないか。


「お願いします。」

「はい。」

彼女の人当たりの良さは目を見張るものがある。これまで何人の殿方をその笑顔で虜にしてきたことか。この美女が仕えている王家か。どんな方々かそのご尊顔拝ませていただきたいものだ。

「明日、宰相がお見えになるそうですよ?」


「宰相?」


「ええ、何でも貴方とお話がしたいそうで。」

わざわざ宰相がでてくるのか。この国の宰相の位置づけが分からないがとりあえず失礼のないようにしよう。



これからどうなるかは分からないが前世ではかなり努力を積んできたつもりだ。神の与えてくださった第二の人生に感謝してひとまず頑張ってみよう。

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