6.【お付き合いの種類】
修司「え、待って、それいつから? ニカとお付き合い
した正確な日にち教えてよ」
郁巳「は、春頃……?」
竜二「はぁーっ、猫もしゃくしも発情する時期だな」
竜二さんの呟きがまるでそんなのは本能的なものだと
言わんばかりに空気を切り、言葉が途切れてしまう。
店内に静寂が広がって、カウンター越しに修司さんの
真剣な眼差しが俺を捉える。
竜二さんはお茶を啜りながら静かに様子を伺ってるようだ。
俯きながら頑張って付き合うまでの経緯を話したのに2人からはあまりいい感触を得られない。
何でだろうと首を傾げると、修司さんがいきなりカウンター越しにぐいっと顔を近づけた。
修司「えっと……いく、それはどういった〝付き合う〟なん?」
郁巳「ど、どうとは……?」
意味が分からす反芻して固まると、竜二さんが
「やめろ」と修司さんの髪を引っ掴んで引き離した。
修司「だってぇ! 竜二、わかるやろ? 〝付き合う〟言うても色んな付き合いがあるやん! トイレ付き合っても〝付き合う〟やん!」
店内に修司さんの声が弾けて俺の頬はますます赤くなる。
竜二さんは呆れたようにため息をつき、茶をもう1口
啜るが、俺は上手く答えられないままただレジの硬貨をそっと数えるフリで誤魔化した。
竜二「うるせぇな女かよ。……まぁ、普通は前触れなしの〝付き合って〟なんて言葉に即答はしないわな」
郁巳「え!?」
俺は真剣交際のつもりで申し込んだのに、二階堂さんは違ったってことなのか!?
修司「てのは冗談、まぁ付き合ういうたらそれしかないわな……何?ヤッ__いってぇ!!」
竜二さんに頭を叩かれた修司さんが堪らずしゃがみ込む。
俺は恥ずかしさに耐えきれずダンボールの中の服を出しながら仕事をするフリをするのが精一杯だった。
確かに2人の言う通り〝お付き合い〟には色々な種類がある。
俺は二階堂さんの好きなところを一つずつ思い出しながら、本気の度合いを2人に理解してもらうことにした、
華やかなルックス、自信に満ちたオーラ、キラキラした存在感、引きつける話し方。
目を引くファッションセンスや意外と優しい口調に客を立てる気遣いも全部が好きだ。
竜二「へぇ……」
郁巳「でも、1番は……」
修司「1番は?」
郁巳「お前ならできるよって言ってくれたこと……」
人生経験があまりに少なく何もできない俺に、二階堂さんは真剣な目でそう言ってくれた。
あの堂々とした自信に溢れるオーラに満ちた俺の憧れの人が、『できる』と言ってくれた瞬間、俺は何にでもなれる気がした。
その言葉に突き動かされ、思わず『付き合って欲しい』とまで口にしてしまったのだ。
修司「___そんなん俺でもええやん」
竜二「おい」
郁巳「え!? いや、お2人は違うっていうか……」
修司「勝手に振られたわ」
2人が苦笑するが慌てて言葉を繕った。
郁巳「お2人ともかっこいいです! アクセサリーも革も似合ってるし、自信に溢れてて……」
修司「ん、……ありがとな。でもその話聞いてるといくはニカの存在に憧れてるだけで……それって本当に好きなんか?」
郁巳「えっ……」
竜二「そうだな。郁巳の言ってることは全部ニカの外見だろ?ニカじゃなきゃダメな理由は?」
本当に好きかと問われ、心の奥で何かが引っかかる。
俺の好きとは、なんて曖昧なものなんだろう。
カウンターの上のお茶の香りが静かに漂う中、俺は答えを見つけられずただ2人を眺めた。




