終
結局カグナは、村を出ることになった。
『世界を旅する』約束をしてしまったし、やはり村を好きにはなれなかった。
怪物化した首長を倒した後、カグナはホムラから分離した。
元の人の姿に戻ることができた。
しかし村人たちはカグナに、近づくことはなかった。
それだけ『炎人』は、彼らにとって鮮烈だった。
畏れるにたる姿だった。
これには流石のカグナも鼻白んだが、仕方はないとは思っていた。
カグナはもう、ただの『乱暴者』ではなかった。
カグナの胸は、あの晩からずっと熱いままだった。
気に食わない習わしは取り去った。
でも村の立て直しには関わらない。
そんなところで、カグナは溜飲を下した。
カグナは村から離れ、草地を歩いていた。
時折、カグナは団子飯を頬張った。
村を出る時、家の前にポツンと置かれていたのだ。
飯は純粋なコメだった。
この時期にそんな蓄えが?と首を傾げたが、首長の『備蓄』があったのかもしれない。
なんにせよ、もらっておくことにした。
それくらいの報酬は受け取ってもいいだろう。
春の暖かい風が、草の海を撫でていった。
団子飯を齧るごとに、緑と土の匂いがした。
いつもなら畑で泥だらけになっている頃か、などと思いを馳せる。
村にもいた鳥の声が聞こえて、カグナは少しだけ寂しい気持ちになった。
「は〜〜〜ハニームーン♡ハニームーンじゃあ♡♡どこ行くかのう、何見るかのう〜〜♡♡」
頭上に居座る緋色の鶏が、元気よく鳴いた。
寂寥感が無惨に吹き飛ぶ。
カグナは団子飯を一気に飲み込むと、短い髪を掻きむしった。
「お〜〜ま〜〜え〜〜!いい加減自分で歩けよ!」
ホムラは羽を広げて飛び上がり「ほほほ」と笑った。
「ハニーの頭は居心地がよいのじゃ。いつでもカッカしておるからのう♡」
カグナとホムラは幾度目かわからない攻防戦を繰り広げた。
そしていつも通りカグナが根負けした。
ホムラは上機嫌に鳴いた。
それはどこか、新しい風景に胸を躍らせているようにも聞こえた。
カグナは嘆息しかけた。
「言っておくがッッ!!」
が、気を取り直してホムラに宣言した。
「俺は離縁のすべを探すからな!首長の件は感謝するけど、人でなし傲慢女とはやっていけねェ!」
「ほーん♡」
ホムラは嘴でカグナの頭を突いた。
「吾がメロ男を手放すとでも?誰がなんと言おうと、吾とハニーは常世が終わるまでず〜〜〜〜と一緒じゃ♡♡」
カグナは鼻を鳴らした。
「じゃあその常世って奴をぶっ倒す!」
「ほほほ、ゴーマンな男じゃ♡」
こうして一人と一柱は、春の草原を東に向かった。
新たな夫婦を歓迎するかのように、追い風がびゅうと吹き抜けていった。
***
その村には、伝説があった。
『かの者、黄泉の境より焔を抱きて還り、土蜘蛛の禍を討ち払ひき。
その御姿、さながら舞ひ踊る御火ノ神なり。
これより後、村人は炎を崇め奉り、御火ノ神現れし春ごとに祭を催し伝へり。
折には、焔の御前にて御神に捧ぐ舞を舞ひし。
かくの舞を執り行ふ者を、<舞焔巫>と称へ伝へり』
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