新天地
私、権藤 学は爬虫類の卵を研究しているしがないポスドクだった。
研究に関する考え事をして、ほっつき歩いていた時に、誤って赤信号なのに道路を渡ってしまい、車に轢かれて死亡してしまった。
意識が途絶える寸前、
「せめて研究だけは続けさせてくれ」
そう、神に願った。
すると、朦朧とする意識の中、脳内に直接語りかけるように声が聞こえた。
神の声「あなたのその願い、承知しました。可能な限り、ご希望を反映した転生となるよう、尽力しますね。転生先が決まるまで三途の川〈まちあいしつ〉でお待ちください」
そんな人事異動みたいなことあるのかよ、なんて思った。
こうして、あれから現世での意識も途絶えて私は、三途の川の河辺のベンチで待ちつづけている。
神「転生先の準備が完了しました」
すっと、目の前に神が現れた。
神「あなたの転生先は、魔法使いとドラゴンが共生する魔法世界、ティラーナです。魔法使いとして転生します。」
権藤「ほう」
ドラゴン、つまりは爬虫類の研究ができるのか!
神だ、この神!
神「原則、現世の記憶の引き継ぎはできないのですが、今回のご希望を叶える上で、研究の知識は不可欠だと判断しました。この承認を得るのに時間がかかっていたのです」
なるほど、それで私だけ三途の川で2週間待ちぼうけだったのか。
神「その代わり、あなたの生まれつきの魔法スキルはナシです。厳密には爬虫類の知識が魔法相当だとして、生まれながらの魔法スキルに設定してあります」
ほうほう。
神「今回は知識との整合性を取るために、28才の男性のままの転生となります」
めちゃくちゃ制度を守るタイプの神だこの神。
神「では、ご説明はこのくらいにして、転生先をお楽しみください」
こうして、私は新天地ティラーナで生活をすることとなった。