第七話:闇の影
エルフの村は夜の静けさに包まれていた。ユウキは自分の小屋の中で、フェリスを膝に乗せながら、今日の出来事を振り返っていた。フェリスはすっかりユウキになつき、安心しきった様子で眠っていた。
「君を守るために、僕ももっと強くならなきゃいけないな…」ユウキは静かにフェリスに語りかけた。彼の声に反応するように、フェリスは微かに耳を動かしたが、目を開けることはなかった。
その頃、村の中心部ではエルダースとリアンナ他数名の者が集会を開いていた。村の防衛を強化するための対策を話し合っていたのだ。
「エルダース様、襲撃者の正体がまだ分かりませんが、何らかの対策を講じる必要があります」とリアンナが真剣な表情で言った。
エルダースは深く頷き、「うむ、確かに。我々は森の守護者フェンリルを失った。フェンリルを倒すほどの者が近くにまだいる可能性もある。村の防衛を強化し、巡回を増やそう。リアンナ、君はユウキとフェリスを守ってくれ。何か見つけた時は私にすぐ連絡をするように。私が対処しよう。」
リアンナは頷き、「了解しました。エルダース様が対処してくれるなら安心です。この世でエルダース様を打ち破る者は他のハイエルフの方々か古龍の方々だけでしょうから。」
その言葉を聞いた皆は少し安心している様子だが、ハイエルフのエルダースは何者かの悪意を感じていた。
翌朝、ユウキは早く起きて訓練場に向かった。リアンナが既に待っていた。
「おはようございます、リアンナさん。今日はどんな訓練をしますか?」ユウキは意気揚々と尋ねた。
リアンナは微笑んで答えた。「おはよう、ユウキ。今日は魔法の訓練をしましょう。まず、この世界の主なる属性について話します。主たる属性は5種類あるの。地・水・火・風・空。それぞれが色々な魔法と関わって、精霊の力を借りて出すことができるのよ。火だけだと弱いけど、風と合わせることで火嵐の魔法にすることもできるわ。あと、魔法はイメージをすることで精霊に力を貸してもらう事ができるの。だから、イメージできないことには魔法はできないわ。」
ユウキは興味津々で質問した。「イメージって具体的にどうすればいいんですか?例えば、火の魔法を使いたいときはどういうイメージを持つべきなんですか?」
リアンナは手を挙げて、小さな火の玉を空中に浮かせた。「例えば、火の魔法を使いたい時は、火の温かさや燃える音、そしてその赤々とした色を思い浮かべるの。それを心の中で強くイメージするのが大事。最初は難しいかもしれないけど、練習すれば徐々に上手くなるわ。」
ユウキは目を輝かせながら、「なるほど、わかりました。じゃあ、やってみます。」と言って、両手を合わせ、目を閉じて集中し始めた。
「火の温かさ、燃える音、赤い色…」ユウキは心の中で繰り返し、集中を深めていった。すると、彼の手のひらの間に小さな火の玉が現れ始めた。
リアンナは満足そうに頷き、「上手いわ、ユウキ。初めてにしてはとても良いわ。今度はその火の玉を制御してみて。動かしたり、大きくしたり、小さくしたりしてみて。」
ユウキは目を開けて火の玉を見つめ、意識を集中させてそれをゆっくりと動かし始めた。「よし、動いてる…!」ユウキは興奮しながら火の玉を操作してみた。
リアンナは微笑んで、「とてもいい感じよ、ユウキ。その調子で頑張ってね。これからもっと難しい魔法も教えていくから、楽しみにしていてね。」
ユウキは嬉しそうに頷き、「はい、リアンナさん。もっと頑張ります!」
その時、リアンナの表情が急に真剣になった。「ユウキ、気をつけて。今、村の周囲に何かの気配を感じたわ。今日はここまでにしておきましょう。」
ユウキは驚きつつも、リアンナの言葉に従って訓練を中断し、警戒しながら村に戻ることにした。村の平和を守るために、彼はもっと強くなることを決意した。
訓練場から村へ戻る途中、ユウキはリアンナに質問を続けた。「リアンナさん、精霊たちはどうやって僕たちの魔法を助けてくれるんですか?」
リアンナは歩きながら答えた。「精霊たちはこの世界の自然に宿る存在で、私たちエルフと特に親密な関係を持っているの。彼らは私たちの願いや感情を感じ取り、それに応じて力を貸してくれるのよ。だから、強い意志と明確なイメージが必要なの。」
「なるほど…それって精霊と話すこともできるんですか?」ユウキは興味津々で更に質問をした。
リアンナは微笑んで答えた。「ある程度のコミュニケーションは可能よ。でも、言葉というよりは感覚や感情でのやり取りになるわ。特に強い精霊になるほど、その繋がりを深めるのは難しいの。」
ユウキは感心しながら、「それじゃあ、僕ももっと精霊との絆を深めて、強い魔法が使えるようになりたいな。」
リアンナは優しく頷き、「そうね、ユウキならきっとできるわ。私も手助けするから、一緒に頑張りましょう。」
村に戻ったユウキとリアンナは、エルダースのもとに向かった。リアンナはすぐにエルダースに報告した。「エルダース様、訓練の途中で村の周囲に何かの気配を感じました。念のため、警戒を強化した方がいいと思います。」
エルダースは眉をひそめ、「そうか、リアンナ。警戒を強化しよう。ユウキ、フェリスをしっかり守るんだぞ。」
ユウキは真剣な表情で頷いた。「はい、エルダース様。僕も力を尽くします。」
その夜、村は静かであったが、ユウキはリアンナと共に警戒を怠らなかった。彼の心には、フェリスを守り抜くという強い決意が宿っていた。