第4話:エルフの村
エルフの村の人口はわずか30名であり、遠く離れた「世界樹」のそばに静かに佇んでいた。エルフたちは、この世界の「世界樹」を守るために創造された存在であり、その使命に忠実に生きていた。
日の出と共に活動を開始するエルフたち。ある朝、エルフの一人、リアンナは日課の水汲みに井戸へと向かっていた。ふと、聞き慣れない赤子の泣き声が耳に入る。「この村で赤子の泣き声なんて…」リアンナは訝しげに耳を澄ませた。数十年もの間、この村には赤子がいなかったはずだ。
急いで井戸に向かうと、そこには「ユウキ」とエルフ語で書かれた籠の中に、黒髪の赤子が泣いていた。エルフの民は基本的に金色の髪を持つが、この赤子は黒髪であり、人間族の赤子のようだった。
「どうしてこんなところに…」リアンナは赤子を抱き上げ、すぐに村長のもとへと向かった。
村長の家は村の中心にあり、リアンナは急いでそこにたどり着いた。村長のエルダースは長い髪と威厳ある顔立ちで、村の誰もが尊敬している存在だった。リアンナが赤子を抱いて駆け込むと、エルダースは驚きの表情を浮かべた。
「どうした、リアンナ?」エルダースは優しく声をかけた。
「村長、この赤子が井戸のそばに置かれていました。ユウキと書かれた籠に入っていて…」リアンナは赤子をエルダースに見せながら説明した。
エルダースは赤子を見つめ、深い思案にふけった。「ユウキ…この子は人間族のようだが、何故この村に?」
リアンナは首を振った。「分かりません。でも、この子をどうすれば良いか…」
エルダースはしばらく黙考した後、ゆっくりと口を開いた。「この子をここに残す理由が何かあるに違いない。我々はこの赤子を受け入れ、育てることにしよう。世界樹が我々に託したのかもしれない。」
リアンナは安心したように微笑んだ。「分かりました、村長。私がこの子を大切に育てます。」
エルダースは頷いた。「リアンナ、お前がこの子を育てたいという気持ちはわかった。村全体で協力して育てよう。」
こうして、ユウキはエルフの村で育てられることになった。リアンナはユウキを愛情深く育て、エルフたちも協力して彼を見守ることになった。
村の唯一のハイエルフであるエルダースだけは気づいていた。この赤子が神々の力によってこの村に託された存在であることを…。