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9.馬車に揺られて帰路につく

魔力調整シーンです。


 

 「……アレ……ン」

 「どうしたの? 俺の可愛いお姫様」

 「まっ……て」



 帰りの馬車へと共に乗り込んだかと思えば、私はアレンに抱きしめられ魔力を注ぎ入れられた。



 「待たない」

 「お……願い……」

 「だーめ。夜会前は応急処置しかしていないでしょう?」

 「ひゃっ……」

 「ほら。すぐにこうやって溢れるんだから」



 ぶわっと出てきた私の魔力を食べるように、アレンの魔力が包み込む。



 「当分の間は魔力が暴走しないよう、しっかり調整しておくよ」

 「……んうっ」



 アレンの魔力が次々と私の中へと入ってくる。



 「すぐに楽になるよ、シェリル」

 「うう……」



 注ぎ込まれるアレンの魔力量が多く、圧迫感で呼吸がしづらい。



 「アレ……ン、くっ苦しっ……」

 「苦しいよね。ごめんね。でももう少し入れなくちゃ」

 「ひっ……」



 アレンの魔力が体内に入っていく。その度に刺激が走り身体がプルプルと震える。



 (我慢しないと……)



 レイモンド様からも魔力を自重した方が良いと言われたくらいだ。このまま制御しきれず周りに迷惑をかけては良くない。



 刺激に耐えていると自然と呼吸が荒くなってくる。私は声を出さないように唇を噛みしめた。



 「シェリル。唇噛んじゃだめ」

 「ふあっ」



 私が唇を噛んでいることに気付いたアレンが、私の口の中に優しく指を入れてきた。少し上を向かされてブルーグレイの瞳と目が合う。



 「傷になっちゃうよ。辛かったら、さっきみたいに俺の肩掴んでても良いから」

 「…………っ」



 こくこくと私が必死に頷くと、アレンは私の口から指を引き抜く。



 私は藁にもすがる思いでアレンに縋りついた。ふわりとベルガモットの香りがする。



 「ふふ。良い子だね、シェリル」



 アレンに強めに抱きしめられる。



 「んぅ……」

 「可愛いよ」



  (すぐに楽になるって言ったのに……!! 全っ然ならない……!!)



 心の中で抗議するも、それがアレンに届くことはない。もはや口を開く余裕さえなくなってきた。



 すると、たっぷりと入ったアレンの魔力が、私の体内で波打って動き始めた。



 「んっんっ」



 アレンの魔力が動くたびに、だんだん熱が貯蓄されていく。



 ぐわぐわと動きながら進むアレンの魔力のせいで、次第に頭がぼーっとしてくる。



 (アレンは魔力を流して調整することを本当に何とも思わないのかしら)



 とろんとした状態でアレンを見つめると、アレンはふわりと笑う。


 

 「ひゃっ!」



 その直後、波打っていた魔力が捏ね回すようにグリグリと動き、強めの刺激が私を襲った。



 「んあっ」

 「あ、ごめんね。可愛いからつい」

 


 (つい……!?)



 こちらはもういっぱいいっぱいなのだ。「つい」で刺激を与えることは、お願いだからやめてほしい。



 そう思いながらも、だんだんと私の身体はこの刺激を享受することに喜びを覚えはじめていた。



 「もう少しだけ入れるね」



 アレンの魔力がグプグプと容赦なく私の中へ入り、更に刺激を深くする。



 「はうっ」

 「これで良い感じに整うはず」

 「…………っ」



 (アレンは真剣に魔力調整してくれているのに、私はなんでこんな風に感じてしまうのだろう)



 気持ちよさと情けなさが相まって、目が潤んできた。



 「シェリル? どうかした?」

 「ううん、なんでも……ない……」



 その時。雷に打たれたように、全身に気持ちの良い刺激が駆け巡った。



 「!!」

 「ここだね」

 「……っっ」

 「心配しないで。ここさえ調整すれば……っと」



 身体が熱で張り裂けそうになる。もう無理かもとアレンに伝えたいが思うように口が開かない。



 「…………終わったよ」

 「あっ」



 その瞬間あんなに張り裂けそうだった熱が止み、アレンの魔力が私の身体からゆっくりと抜かれた。



 たくさん入っていたアレンの魔力が急に消えて、少しもの寂しい。そう思う一方で身体はもうくたくたでアレンに身を委ねたまま、私は意識を手放した。





 アレンはシェリルが気を失ったことを確認して、困ったように笑う。



 「ちょっと意地悪しすぎちゃったかな?」



 そのまま愛おしそうに、シェリルの汗ばむ前髪を手でとかし額にキスを落とす。そして再びぎゅっと抱きしめた。



 「……シェリルには、俺だけで充分だ」



 アレンがせつなく溢したその声は、静かに寝息をたてる彼女には届かなかった。







 ――アレンが王都を発ったと聞いたのは、夜会の次の日。私が朝、目を覚ました時だった。





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