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ファンタジーワールドと旅人〜前編



都会の真ん中に経つビルで働く、

和空(わくう) (まこと)」という男、努力や苦労を重ね出世を叶えるも、仕事やプライベートでの人間関係がうまくいかず、自分の経験不足だと思い悩み、仕事を辞め、自分自身を 見つめ直す事を決意。まあまあの手持ち貯金で旅に出るところから物語は動く。



早朝にしてはまだ暗い時間帯にアラーム音が部屋に響き渡る。


スマホのアラームを手探りで消すと、

ベッドから起き上がり、背伸びをして

カーテンを開ける。


いつもの朝のルーティンは、仕事スーツを身につけ、絶えないクレームの謝罪電話対応と品物を購入してから出社する事。


大きく変化したところといえば、退職してからの残金と密かにバイトで貯めた貯金を

、洋服やキャンプセットの道具など、必要な物をスーツケースに詰め込む今日この頃。



ある程度の道具は揃った。旅に出る準備と共に熱いコーヒーを飲みながら、ホッと息をもらす。


誠「学ぶために、経験を増やすために

もっと頑張らないとな。」


僕は、実家がある地元へ向かった。

言葉だけ聞けば帰省と言ってもいいもの。


帰省という形にしては、少し気まずい…

仕事を退職した上に、自分探しの旅などという、うまい理屈を並べた聞こえはいいだけの中身は空っぽなのだから。

両親に合わす顔などなかった。


決して仲が悪いわけでは無く、とても優しい両親と二つ上の兄の、僕を含めて四人家族。


兄とは、連絡も頻繁に取るほどの仲で

昔から何でもできて、完璧にこなす

尊敬すべき点が多い人間である。


優しい兄は、「悩みがあったら一人で抱え込まずに、兄さんに言いなさい。」と

いつも言われる。お互い両親に迷惑はかけたくない強いプライドを持っているからだ。今回の事は、兄には相談していない。


思い悩みはしたものの、自分を見つめ直す意味では僕自身の事であり、人を巻き込みたくはない。大事にして家族会議にでもなったら、それこそ何かが壊れそうな気がした。


僕は予定通り電車に乗ると、地元である

田舎町へと足を運ぶ。


電車から見える田んぼの景色が、子供の頃の懐かしさを思い出させ少し泣きそうになった。

到着後、駅から歩いてしばらく行った所に

子供の頃は一度も足を踏み入れたことのない一本道を、なんのためらいもなく

一歩、また一歩と止めどなく進めていく。


誠「少し休憩しようかな?…」


誠は一本道を歩き続け、足を休めるため

石の上に座り休憩した道中、先に分かれ道があり、その先に赤い鳥居⛩が見える。はじめてくる場所でもあり、

こんなところに神社があったことも知らず、せっかくなので寄り道してお参りしていこうと立ち上がり歩き出す。


鳥居を潜り抜けると、そこは神社ではなく、あたりは霧がかっており何も見えない


見渡すと周りに他の建物もなく、人もいない…しばらく歩き続けると大きな建物が見えてきた。

その大きな建物というのが、遭遇したことのない、天に届きそうなくらい空まで伸びている。


霧で見えないためそう見えるのだろうか?


建物の大きさに驚きながら、外観を眺めていると、人影らしきものが入り口から出てくるのです。


霧が少し引いて、顔が見えた瞬間目を丸くした。


そこにいたのは、

美しい少年で、少年はクールなオーラを纏いながら、子供とは思えない落ち着きと、人の心を見透かすような冷めたい視線をこちらに向ける。

フッと微笑みを見せると、


?「久しぶりのお客様ですね、

ようこそファンタジーワールドへ。

おつかれでしょう?中へどうぞ。」


そう言われるまま中へと案内される。


僕は少年について行くと、外の霧とは裏腹に、とても綺麗な内観で

まるで旅館のようだった。


少年は足を止めると、自己紹介をはじめる


?「僕の名前は、(さく) 叶人(かなと)といいます。ここのオーナーをしております。

久しぶりのお客様ですが、失礼のないようしっかりおもてなしをさせていただきます。よろしくお願いします」


誠「ご丁寧にありがとうございます!

あぁ!僕は和空(わくう)(まこと)と言います。今は旅人ですが、こちらこそ宜しくお願いします!」


子供なのに、オーナーで

こんなにも丁寧な挨拶ができる。

今の子は、育ちが良い。などとおじさんのような気持ちになってしまった。


誠「叶人くん?は、ここのオーナーなんだよね?すごいね!ご両親は誇りに思われているでしょう!」


叶「そう言っていただき、ありがたく思います。では、部屋に案内します。

真音(まおん)、こちらのお客様を部屋まで案内して」


叶人は、真音という少女に指示すると

少女は僕の方を見て、丁寧にお辞儀をする


真「いらっしゃいませお客様、お部屋までご案内させていただきます。(さく) 真音(まおん)といいます。どうぞよろしくお願いします。こちらへどうぞ」


誠「どうも、よろしくお願いします。」


最近は、子供が接客するところが増えたのだろうか?親の経営の手伝いという話はいくつも聞いて来たが、丁寧かつ、子供がオーナーという、現実味のない光景に

少し戸惑いを覚える。


真音に、部屋へ案内されると、

障子戸に和室の部屋、落ち着いた雰囲気の空間で、なんだか僕はほっとしてしまった


障子戸を閉めると、少女は僕に尋ねる。


真「お兄さんは、私たちの夢を壊しにきた人?それとも優しい人?」と聞いてくる。


先程までの丁寧な対応とは違い、可愛らしい子供口調でこちらの顔色を伺う。


誠「え?」


返し方に戸惑っていると、そこで真音の兄が部屋に入ってきて、


叶「真音、はじめてのお客様に失礼があってはいけないよ?いつもの言霊をやるからこちらにおいで」と優しく微笑み語りかけると、「僕の妹が失礼しました。宿泊費はいただきません。ごゆっくりしていってください」とだけ言うと妹を連れてどこかへ行ってしまった。


薄々そうではないかと思っていたが、

美男美女の兄妹がここを経営してるかと思うと少し不思議でならなかった。


誠「それにしても、 ここはとても静かな場所だ…自分を見つめ直すには最適かもしれない。」


お代をいただかないという言葉に引っかかりを感じる。


家庭の事情があるのだとしても、理由を簡単には聞けない。


お食事は好きなものを注文すると、AIが部屋まで運んでくれるシステムで、食後もそのままAIがお下げしてくれるという、

なんとも便利すぎるシステムで、

トイレやお風呂も部屋に設置してあるし、快適すぎた。


こんなに快適でリラックスできるのに、

代金を払わないのは…さすがによろしくない。罪悪感が残るけど、何度聞いてもお代はいただきません。と言われるばかり。


コンッコンッと木の柱部分を叩くノック音が鳴る。


真「失礼いたします。お兄ちゃんに許可をいただいて、少しだけならお兄さんとお話しをしていいと。ご迷惑じゃないですか?」


誠「大丈夫だよ^_^お話しか、僕も話したいことがあったから、ちょうどいいね。

それで、お話しって何かな?」


真音の真剣な眼差しに、誠は深刻な悩みなのだろうか?と心配な表情を見せた。


真「はい。お話しというのは、

先程質問した、お兄さんは私たちの夢を壊しにきたのですか?それとも優しい人ですか?というお話です。」


誠「その、“私たちの夢を壊しにきた,,というのはどういう事かな?」


真音はしばらく考えてから、説明してくれた。


真「ファンタジーワールドに来た人の中に全身黒服の人が4人いてね、その人たちは建物のあちこちに変な機械をつけて、音を聞いたり、叩いたり壊したりするの。お兄ちゃんが言葉でいい負かして追い出すのに成功したけど、お兄さんも黒い服着てたし大きな荷物持ってたから、そうかな?って。」


誠「そんな事があったんだね…怖かったでしょう?お兄さんはね、仕事の人間関係がうまくいかなくて辞めちゃったんだ。

それでね、僕の経験不足なんだって…

ダメな部分が何か見つけたくて、自分のことを見つめ直したくて、旅をすることにしたんだ。僕、弱いよね…情け無い。

こんな姿、真音ちゃんにも見せたくなかったんだ。」


まるで、親戚のおじさんのように優しい口調で真音に話すと、真音は笑って誠の手を握る。


真「お兄さんもつらいことあったんだね。

大丈夫だよ。私はお兄さんが優しい人だって信じてる。今までも優しいお客様はいたんだけど、黒服の人が来てからは

お兄ちゃんが誰も入れるなって。

でも、お兄さんの事中に入れたし、大丈夫なんだ!って安心した。お兄ちゃんに伝えてくるね^_^ありがとう!

ゆっくりしてってね!」


誠「お兄さんの方こそありがとう^_^

真音ちゃんと話して、なんだか楽しくなってきたから、これから大丈夫な気がして来た!あ、行く前に、真音ちゃんの歳聞いてもいいかな?女の子に歳聞くのはどうかなって思ったけど、あ、僕は26歳です。」


真「14歳だよ。

私はいいけど、お兄ちゃんには年齢聞かないでね?私の口からは言えないしお兄ちゃんから止められてるから、

バイバイ!またお話ししようね!」


女の子の年齢を聞くなんて失礼極まりないとわかっていながら、教えてくれた真音ちゃんには感謝しなきゃいけない。

それにしても、叶人の年齢はどうして聞いてはいけないのだろう?



謎は多いけど、しばらくはここにお世話になって見つめ直すとしよう。


快適な部屋でリラックスして眠りにつく。






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