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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

王女暗殺未遂事件の犯人に仕立て上げられてしまいました。

 俺は今、裁判にかけられていた。


「では!ハルト・マサツグの裁判を開廷する!」


 王が裁判を開廷した。


「では、検察側、被告人の罪状を」


「了解しました。彼は我が国の第一王女のミノル・ララクトリーナ様を暗殺しようとした容疑にかけられています。現場は人混みの中、ハルト・マサツグがミノル・ララクトリィーナ様の背後にこのダガーナイフを握って立っていたという目撃情報が出ております」 


 先日、ララクトリィーナ家の第一王女(以後『姫』とする)ミノル・ララクトリィーナは「街に出てみたい」という姫様ありがちの欲望に駆られ、人混みの街に出ていたところ俺がダガーナイフを持って立っていたところを兵に取り押さえられたということだ。


「被告人、反論は?」


 言葉に詰まった。絶望的なこの状況切り抜けれる予感が全くしない。牢に捕えられても最悪逃げ出せる。この王族しかいない裁判では平民である俺の話などに耳を貸すことはないだろう。しかし、物は試しだ。


「俺はやっていない」


「本当か? よし、では証人を呼べ」


俺の背後にあった大扉が勢いよく開いた。

「自己紹介をお願いします」

と検察官が言うと彼は名を名乗った。


「冒険者のベルノ・ルーペだ」


「では、証言を」


「俺は比較的姫さんの近くにいたんだよ。勿論、当時の俺は姫さんだとは思ってなかったけどね。ただ、高い服着てるなーとは思ったよ。そしたらその背後で俺は見たんだよ。ナイフを持ったその男をな。俺はすぐにその男を取り押さえてやったんだ。」


 証拠品には、血のついたダガーナイフがあった。


「それではここで本当に彼がこのダガーナイフを持っていたかの検査を行う」


 俺は魔法によって指紋をとられ、そのデータとダガーナイフについている指紋と照らし合わせた。

 結果は合致だった。

 そこから、しばらく討論が続いたが俺の状況はかわらなかった。


「では、判決を言い渡す。被告人は有罪。後日、死刑に処す」


 あまりにも残酷な判決に流石に驚きを隠せなかった。しかし、言葉は一言も話さない。


「お父様!あまりにもそれは!」


 姫が反論したがもう全てが遅かった。


「黙れ!王族に手を出そうとしたのが悪いのだ! そいつは牢屋にぶち込んでおけ!」


「は!」


 俺は兵達に連行され、牢屋に入れられた。


 おそらく十時間程経過した。

 外はすっかり夜だろう。とにかく死刑執行までにはここを出なければならないのだ。

 牢に捕えられる際、脱出ルートを見て、もう考えは終わっていたのだ。深夜に入ったので今から実行に移すところである。


「よし、ボチボチ行くか」


 鉄格子を『金属溶解魔法』で容易く乗り越えて、通路を走った。あらかじめ、逃走用の魔法一式を自分にかけていたので、足音もせず、脚も速い。監視が少ない牢屋の地下は容易く突破できた。


「おい、ちょっと待てよ」


 城の兵に呼び止められた。しかし、脅迫めいた厳しい言い方ではなかった。


「姫さんがお前と話したいらしい、今牢屋に向かってるらしいんだが」


「そうなのか?てかお前誰だ」


「まあ覚えてないか、そうだよな」


 兵は残念そうな顔をしていた。


「というか、お前、何で俺の声で止まったんだ?」


「いや、なんか反射的に」


 とりあえず、彼曰く、牢屋に戻ったらええ感じになるとのことで、彼に牢まで連れてってもらった。

 牢屋に着いても誰もいなかった。鉄格子は溶けてしまっているが。


「これ、大丈夫なのか?」


 兵は心配していたが、


「問題ないと思う。また固める」


 俺が牢屋の中に入って、鉄格子を固めると見事に元の状態に戻った。


「じゃぁ多分少ししたら来ると思うぜ」


「ああ、何かとありがとう」


 しかし、この夜、姫は来なかった。


 死刑の執行は大体午前に取り行われる。そのため、死刑囚が牢屋から出されるのは朝早くなのだ。しかし、日程は分からない。手続きなどによって時間がかかる場合があるが、あまりにも度が過ぎた問題行動を起こすと急速に手続きも多少簡略化され、翌日執行もよくある話だそうだ。その度が過ぎた問題行動に姫の暗殺未遂は当然入るだろう。


 しかし、今日の朝、牢から出されることはなかった。

 昨日の兵は俺に鎌をかけたのかと思っていたらその兵が来た。


「おい、結局姫さん来なかったぞ。どうゆうことだ」


「いや、一応行こうとはしたみたいだけど、なんせここ、深いから」


「そうだな確か地下10階くらいだっけ?」


 兵は「おおー」と感心していた。


「ちなみに、お前の執行、結構先になりそうだ。姫さんが書類にサインするのを拒んでいるらしい」


「なんで?貴族なら俺なんか平民の死。気にすることなくサインするだろ?」


「いやぁ、実に謎なんだそれが。でも俺はお前が姫さんを殺すような奴ではないと信じてるぜ」


 兵は優しく俺に向けて笑顔と信用を送った。


 二日目の夜だ。

 俺は脱出経路を確認し、牢に戻る。一応死刑が執行される直前に逃げ出せるようにしたため、もし、死刑執行日になっても、上手くいけば逃げ出せる。しかし、これはあまりにもリスクが高いので出来れば避けたい。

 この日は脱出しないことにした。今日は外が祭りで警備も厳しく、脱出には不向きだからである。

 俺は大人しく牢屋で脱出してからの進路について考えていた。


「とりあえず、この国の国境を超えて、バリア村まで行く。ここはまだ近いから長居は出来ない。目的地はシー村にしよう」


 とぶつぶつほざいていると通路から足音がした。こつこつこつとこちらに近づいている。アイツ(兵)か?と思ったが、違った。俺がこんなことになってしまった一つの原因。

 ミノル・ララクトリィーナが来たのだ。


「本当にすみません!」


 俺は姫に深々と頭を下げられ謝罪された。


「大丈夫だと思う?死刑囚だよ、俺」


「しかし、あの時は本当にありがとうございました。貴方の冤罪は必ずしも晴らしてみせますので」


 俺は首を横に振った。


「いいよ、もう、この街からも出るし、別にこれくらい逃げ出せるし」


 姫はポカンとしていたが、すぐにハッと何かを思い出したような顔をした。


「もしかして、我が国のスパイ団の……」


「スパイ?」


 姫は「しまった」と気まずいような顔をした。


「すみません。取り乱しました」

 

「それにしてもあの後どうなったの?」


と俺が質問をすると、姫は事細かく説明した。

 どうやらあの後、証人ベルノはあっさり解放されたようだ。そこから、姫様可哀想。俺外道のようなので風潮が高まっているようだ。

 今は姫が、死刑執行書類の第一王女の欄にサインをしない形で持ち堪えているが、それも時間の問題である。もし、王が簡単に第一王女の交代(妹に託される)とした場合。俺はすぐさま死刑となる。これは避けたい。

 牢屋は大した警備はされていないが、出入り口、城内等は、尋常じゃない警備がされているようだ。


「こちらをどうぞ」


 姫が手渡した紙には城内の構造、そして、警備の特に厳しいところが記載されていた。これは大変助かる。


「ありがとう」


「では、ご武運を。まだ脱出されないようでしたら、また明日来させていただきます」


 といい、彼女は去った。

 何故彼女はここまで協力的なのか、俺は大体予想がついた。彼女はいい姫だ。


 それは、事件発生当日に遡る。

 俺は、久しぶりにこの街に戻ってきて、新しい武器を買おうと市場に来ていた。

 人混みの中でたいそう綺麗な服の女性を見つけた。『人物鑑定』を使って調べると、ミノル・ララクトリィーナ第一王女がウキウキ気分で歩いていたのだ。

 しかし、『人物鑑定』に注意人物の反応があった。サクト・ニシジマ。聞いたことがある。数多の貴族などを暗殺した。殺しのプロである。彼はダガーナイフを握って姫に近づいていた。


「こりゃまずいぞ」


 俺は人混みをかき分け、姫に近づく、危険を知らせるためだ。しかし、近づく速さはサクトの方が上のようだ。


「しょうがない」


 俺は『加速』を使い、一瞬で姫に近づいた。間に合ったか?と思うと、サクトはナイフを刺してきた。

 刺されたのは俺だった。腹から血がドロドロ出てくる。

 姫はその一部始終を見ていた。

 俺はダガーナイフを抜き、『回復魔法』で治療をした。その後、サクトは俺に覆い被さってきて、こんなことを言った。


「誰かー!兵を呼んできてください!こいつ、姫さんを殺そうと!」


 俺の手には抜いたダガーナイフが握られていた。血がついているが、これが俺の血だと言える証拠もない。もう傷も治療してしまったからだ。そして、彼の腹には切り裂かれた傷のようなものがあった。


「コイツっ!」


 俺は抵抗したが、サクトの力が強くて動けない。

 俺はいとも簡単に、兵に捕まった。


 そこから、俺は裁判にかけられここにいる。しかし、気になることが一つあった。

 何故、彼女は裁判のとき、最後の最後まで反論してくれなかったのだろうか?

と言う疑問があったが、考える間のなく俺は眠りに落ちた。




「ハルト・マサツグ出ろ」


「何で……」


 牢屋生活二回目の朝。

 俺は兵によって牢屋から出された。


 俺は抵抗せずについていく。


 俺は公開処刑に処されていた。思いの外警備が強く、例のルートを使うことができなかった。俺はギロチンによって、首が取られようとしていた。

 内心諦めかけていた。しかし、そこで俺は見た。ニヤニヤと笑うゴミの姿が。


サクト・ニシジマ。現在偽名。ベルノ・ルーペ。


 彼が発した言葉。聞こえはしなかったが。口の動きで、ハッキリわかった。


ざ ま あ


 俺の糸が切れたと同時に、ギロチンは落ちた。


———————————————————


 ハルト様の死刑が執行されました。

 

 私は死刑書類には断じてサインをしませんでした。しかしお父様が勝手にサインをしてしまったのです。


 私はどうすることもできませんでした。ハルト様が亡くなったら私も死んでしまおうと思いました。


 今、死刑が執行されましたが、ハルト様の死亡は確認されませんでした。死体が確認されなかったのです。


 ハルト様は執行同時に姿を消しました。


 お父様、役員、民はこの状況に混乱しました。勿論私もです。


 そして、執行日が行われてから三年が経ちました。

  現在も捜索は行われています。


 この間に長い間勤めてくださった牢屋の警備担当兵長。ベルギロ・マルクが辞任しました。理由は「見つけたい人がいるんです」とおっしゃっていました。


 ベルギロとハルト様は、ベルギロは兵長として、ハルト様はスパイ長として共によく過ごし、仲が良かったです。だからハルト様が辞めるとなったときはベルギロは泣いて送り出していました。兵、スパイから辞めるときは極秘情報が流出しないため、『記憶消去魔法』をかけられます。ベルギロにもかけましたが、ハルト様の記憶は消さないでおきました。


 ある日、私たちはシー村の視察に来ていました。ハルト様にお会いしたとき、つぶやいていた村です。


 そのときに私は発見しました。コソコソと私たちに隠れるように行動している人物が。


 私はその方たちを追いかけました。そして、話すことができました。


 片方は身体が大きく、力が強そうな剣士


 片方は細身で、身軽そうな冒険者


 まさに、ハルト様と、ベルギロだったのです。


「ハルト、この人誰?」


「覚えていないのかよ、あれだよ、ララクトリィーナ第一王女だよ」


———————————————————


 まさかこんな秘境で会うとは思わなかった。聞きたいことは山程ある。しかし、


「何やってるんですか?こんなところで」


「あ、ああ、視察です。シー村のあなたたちは何をしているのですか」


 俺とベルギロは顔を見合わせて言った。


「「逃亡生活です」」


「まぁ、そうですよね」


 姫は理解するように言った。


「まぁそれもあるんですけど俺はアイツを殺さなければならないんですよ」


「もしかして、ベルノ・ルーペのことですか?」


 姫は厳しい目で言った。


「そうです姫様」


 ベルギロは即答した。俺が事細かく説明していく、


 まず、ベルノ・ルーペとはあの暗殺者。サクト・ニシジマということ。


「そんな、まさか だから私を狙っていたのですか?」


「そうだと思われます。そして、彼は今行方不明です。俺たちは今、彼を探す旅に出ているのです。この手で殺すために」


「そうなのですか、それでは頼みます。私もその旅に連れて行ってください」


 彼女はそんなことを真剣な顔で言った。


「危険な旅になりますよ、彼は人を殺すための魔術を山程持っていますあまりにも」


「行かせて下さい!!」


 彼女は叫んだ。すると、周りの人がなんだなんだ?と集まってきた。兵も来た。


「おお、ベルギロさんじゃないですか」


 と言ってきた。ベルギロは俺に「誰?」と問いたが俺は「知らん」と返した。


「ああ、すみません。すみません」


 姫様もとい、ミノルはめっちゃ謝ってくる。


「ありがとうございます。姫様、いえ、ミノル。旅はそろそろ終わりそうです。最後くらい、力を貸してもらえますか?」


 人混みの中に、サクト・ニシジマがいたのだ。


「いやー見つかっちゃったかー。実はずーっと君のことはつけてたんだけどねー三年経ってやっと見つかったよ」


 ベルギロと俺は剣を抜いた。サクトもナイフを構える。ミノルは杖を構え、俺たちに支援魔法をかけてくれた。


「いくぞ!ベルギロ!」


「おう!!」


 街の中で、サクト対俺たちの戦闘が始まった。


 俺は猛ダッシュで突っ込み、サクトと剣を交える。ベルギロは後ろに回り込み、追撃をした。


 しかし、サクトはナイフを二つ持っていた。二本のナイフで俺たちの剣を受け止めた。


 サクトは『火炎魔法』を周囲の地面にかけ、燃やした。俺たちはそこからすぐに離れる。


 その隙をサクトはついた。俺と交戦を交え、腹に一つ傷を与えられた。


 サクトのナイフには毒が塗ってある。傷を魔法で治しても解毒しなければならない。


「誰か解毒剤を!」


 ミノルが兵に頼んで、解毒剤で解毒してもらった。この間、ベルギロはずっとサクトと交戦をしている。


 ミノルは『火弾魔法』で攻撃を加える。効いているようだ。


「一気に決めようか」


と俺はつぶやくと俺は死刑のときに使った。『瞬間移動』を使い、サクトの懐に入り、腹、いや首に剣を入れた。


 サクトも所詮人間。首を斬られてしまったら流石に即死した。


「終わったかー」


 とベルギロはつぶやく。サクトの首からは血がドロドロと出ていた。なんかむごい。


 ミノルは兵に命令し、サクトの死体は馬車に運ばれた。


 こうして、俺たちの三年の旅は終わった。


 ララクトリィーナ国の兵たちとミノルはこの村に泊まった。俺はミノルに相談を受けていた。


「ハルト様。少しいいですか?」


「いいけど」


「実は私、王ではなく、もと奴隷なのです」


 衝撃の事実が明らかになった。


「どうゆうこと?」


「事細かく説明します」


 ここからミノルの細かい説明が始まった。


「王は子供を作ることができない身体でひた。たがら跡継ぎができなかったのです。だから奴隷を利用しました。そのときに、三人の奴隷を買いました。それが私を含めた三姉妹です。男は利口そうな奴がいないので選ばなかったようです。そこで、一番利用しやすそうな私を第一王女に任命しました。私は嫌でした。それに、私は元奴隷、王族の中ではやはり力は強くないため、あの裁判のときも口答えは最後までできなかったのです」


「そうだったのか」


 ミノルは暗い顔で、また俺に頼んだ。


「もし、まだ旅を続けるのであれば私を連れて行ってください!私を攫って下さい!」


「姫様」


 後ろには護衛の兵がいた。


「えっと……」


「大丈夫です。行ってください。私達も王のやり方にはうんざりしておりました。ハルト様どうか頼めますか?」


 旅を続ける目的はなくなったからどうしようか、と思うと、ベルギロが話してきた。


「俺はまだお前と旅を続けたいぜ。まだ行ってないところ沢山あるからな。勿論姫様もな」


「いいこと言うじゃねぇか。よし、いいぜ!」


 こうして、俺たちは翌日。この村を出ることにした。


 ちなみに兵たちは姫様を逃して、国に戻ると処刑ものなので、全員でストライキし、偽名を使って冒険者にでもなるらしい。


 そして、朝がやってきた。


 俺たちは旅の支度を終えて、次の街へ向かおうとしていた。


「次は温泉街のスパニストかー」

 とベルギロがつぶやく。


「楽しみですね」

 とミノルが言う。


「じゃぁ行くか」


 俺たちはシー村を後にした。

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[良い点] タイトルがよかったね。 プロットもおもしろい [気になる点] 今後の成長がどのくらいなのか? [一言] 星5いれたわ あんたのためにしたんじゃないからね おもしろい返信400文字程度でし…
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