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その4

 いよいよ決勝。

相手は射出系と地形操作形が得意な2人で、

正直いうと相性が悪いから戦いたくなかった。

地形操作とイアンの接近戦の相性が悪く、

近づくだけでも苦労することになりそうだった。

 「イアン?勝てるかな?」

 「どうしたの?作戦も考えたのに。」

 「そうだけど。」

 相性も悪いし、今までは私と対戦相手2人の魔力量は同じくらいだったけれど、

決勝の相手は2人とも私より魔力量が大きい。

だから、正面から戦ったら私は単純に力負けしてしまう。

それに作戦といっても、イアンがおとりになって注意を引き、

私が魔法矢で狙撃するという簡単なものしか考えられなかった。

作戦は単純な方が良いと言ってもらえたけれど、

もっと何か出来たんじゃないかと思ってしまう。

 「まぁ、負けたとしても十分なんじゃない?ここまでくれば。」

 「それじゃダメだって何度も言っているでしょ!?」

 「わ、わかったよ。」

 どうしてわかってくれないのか。

それともわかっているけど気遣ってくれているだけなのか。

きっと気遣ってくれているだけなんだろうと自分に言い聞かせて闘技場へ向かう。

今までで一番大きい歓声が鳴り響いてきた。

 そして決勝戦。

開始とともにイアンは走る。

これまでと同じように相手に向かって駆けて行った。

でもその足はすぐに止まってしまった。

 相手の足元の地面が盛り上がっていく。

呆然と見ていると、そのまま塔を形作っていく。

やがて塔が完成すると、その上から魔法雷が降り注いできた。

私はあわてて魔法壁を張り、イアンは魔法雷をかわしながら近づこうとしている。

魔法壁の陰から魔法球を3発放つけど、魔法雷に打ち消されてしまう。

イアンはなんとか塔に近づこうとしているけれど、魔法雷に阻まれて上手くいかない。

少し経つと魔法壁が破られてしまった。

 「ソニア!!」

 イアンが駆け寄り抱きかかえてくる。

そのまま何発かダメージを追いながら、闘技場の端に向かう。

相手からも遠いので、降り注ぐ魔法雷もなんとかこらえることができた。

 「さて、どうしようかねぇ。」

 「・・・。」

 こうなってしまっては、予定していた作戦は役に立たない。

まさかここまで大きく地形を変えてくるとは思わなかった。

このまま時間切れまで粘れば、ダメージを負っている私たちの負けになってしまう。

見栄えは悪いかもしれないけれど、無理して来ることもないように思える。

だってこれだけの地形操作魔法と魔法雷が放てれば、それだけで十分認められるだろうから。

でも、イアンはそれじゃぁ、

 「ソニア。しっかりして。」

 声をかけられて我に返る。

 「塔の上まで魔法で飛ばせる?」

 「え?」

 「あとは何とかするから。」

 正直、意外だった。こんなに前向きだなんて。でも嬉しかった。

 「ここからは難しいかな。塔の真下ならなんとかなると思う。」

 「よし。じゃぁ行こう。」

 突然、お姫様抱っこされて、そのまま運ばれた。

ちょっと恥ずかしかったけれど、もう魔法雷の中を突き進んでいたのでどうしようもできない。

イアンは塔に向かってまっすぐに突き進んでいく。

 すぐ横に魔法雷が落ちる。

加速する。すぐ後ろに落雷。そのまま進む。

雷が迫る。魔法壁で防ぐ。

減速する。目の前に落雷。

再加速。落雷。

壁。

加速。落雷。

壁。

減速。

加速。

加速。

加速。

 なんとか魔法雷を避けながら、塔の真下に迫る。

あと少しのところで魔法雷が迫る。

 「離して!イアン!!」

 叫ぶとすぐにイアンは私を投げ降ろす。

私もすかさず魔法風でイアンを塔の頂上に飛ばす。

でも魔法雷は直撃して私の障壁は破かれてしまい退場になってしまう。

係員に連れられて競技場をあとにする間、歓声はどんどん大きくなっていくように感じた。

そして、観客席に急ぐ。

階段を上り、薄暗い廊下を小走りし、観客席に飛び出す。

大きな歓声とともに見えたのは、イアンが、イアンだけが立っている所だった。

 ーーーーー

 そして表彰式。私たちは表彰台の一番上に立っている。

 「ねぇ。イアン。もっと喜びなさいよ。」

 「そう言われてもなぁ。」

 イアンの戦いぶりを見ることが出来なかったのは残念だったけれど、優勝できて嬉しかった。

なのに本人は喜んでいるそぶりを見せない。

 「どうしてよ。これでみんなに認められるのよ。嬉しいでしょ?」

 「だって。」

 「だって?なに?」

 「ソニアに認められていれば、それで十分だし。」

 一瞬、どういう意味なのかよくわからなかった。

なんとなく意味がわかると、顔が熱くなっていくように感じた。


 fin


お読みいただきありがとうございました。

予定通り、本作品はここで完結とさせていただきます。

今後の作風の参考にしたいので、

気に入っていただければ「いいね」お願いします。

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