その2
全部で8組が予選を突破、
8組でトーナメント形式に試合が行われ、優勝が決まる。
試合が行われる闘技場は、何もない更地になっていた。
初戦の相手は射出系と召喚系の魔法が得意な2人に決まった。
私が得意なのも射出系だから負けられない。
控室で準備を整えると、係員から魔法の障壁を張ってもらう。
この障壁は一定のダメージを受けると砕けるようになっていて、
先に相手の障壁を全て砕いた方が勝ちになる。
砕けるまでは自身がダメージを負うことがないので安心できる。
そして、遠くから歓声が聞こえてきた。
「いよいよね。絶対勝つんだからね。」
「わかってるよ。」
私はイアンの背中を思いっきり叩いて、気合いを入れる。
控室から闘技場へ向かう。完成はどんどん大きくなってきて、
闘技場に入った途端さらに一段と大きくなった。
それから、試合が始まるまでの時間はすごく長く感じた。
ここに来るまでの事を思い出す。
イアンが馬鹿にされることに抗議したこと。
気にするそぶりを見せないイアンを問い詰めたこと。
競技会にイアンを引っ張り出したこと。
イアンと一緒に予選を勝ち抜いたこと。
開始の合図が聞こえた。私はあわてて目の前の試合に集中する。
開始直後、魔法球が打ち込まれる。
私は魔法壁を張り、魔法球を弾き返した。
イアンは真正面から相手に向かって走っていく。
それに対して、召喚魔法で作られた3mクラスの土のゴーレムが立ちふさがった。
イアンとゴーレムが肉薄し、土の腕が振り下ろされる。
イアンが剣でいなすと、また魔法球を打ち込まれている。
私がそれを無視して魔法球を召喚師に打ち込むと、ゴーレムが右腕を伸ばしてそれを止める。
イアンが魔法球をかわしながらゴーレムの左足を強打すると、ゴーレムはバランスを崩す。
私がゴーレムに魔法球で追い打ちをかけると、相手の魔法壁に阻まれる。
イアンが相手の魔法壁を足がかりに空高く跳躍すると、ゴーレムが左腕を振り上げる。
私がこんどは射出師に魔法球を放つと、あわてて魔法球で迎撃している。
イアンが剣を振り下ろすと、ゴーレムの左腕と打ち合わされる。
イアンの足場になるように魔法壁を張ると、そのまま左腕を切り裂いた。
ここまでは順調に見えるけど、どうにも違和感を覚える。
相手のゴーレムが予選の時よりも動きが鈍い気がしていた。
でもその疑問は自分の障壁に対するダメージですぐに解消される。
「どうして!?」
周りを確認すると、2mクラスのゴーレムが二重召喚されていた。
2mが右腕を振り上げながら迫ってくる。
振り下ろされる。魔法壁を貼る。衝撃で吹き飛ばされる。またダメージを負う。
慌てて立ち上がろうとする。うまく立ち上がれない。目の前には2mの左足しか見えない。
目線を上げると、右足で思い切り蹴られるところで、思わず目を閉じてしまった。
何かが倒れる大きな音が聞こえて、目を上げると2mクラスのゴーレムがあおむけに倒れていた。
目の前にはイアンが剣を構えて立ち塞がってくれている。
「イアン?」
「あっち!!」
指差された方向を見ると、3mクラスのゴーレムも倒れていたが、
その後ろから大量の魔法球が準備されていた。
イアンに起こされながら杖を構える。
大量の魔法球が一気に押し寄せてくる。
私は3重に魔法壁を張り防ごうとしたけれど、防ぎきれない。
「ソニア!!捕まって!!」
後ろから抱えられ、そのまま運ばれる。
魔法球が地面に着弾し土煙がのぼる。
そのまま倒れている2mクラスのゴーレムの後ろに身を隠す。
「突っ込むよ。」
「えぇ!?」
「援護して。」
まだ魔法球は降りやまないのに、
私の返事も待たないで、イアンは2mの陰から飛び出してしまう。
剣で魔法球を弾いているけれど、ダメージも負い障壁が減っていっている。
私は残った魔力を全て使い魔法弓を形成する。
飛び出して行ったということは、あの魔法球の雨はなんとかできると考えているんだろう。
私はイアンを信じて、これ以上相手が攻撃できないように魔法矢を放つ。
命中はしなかったけれど、十分な牽制にはなった。
一気に駆け抜けていったイアンが相手に肉薄する。
3mクラスのゴーレムで止めようとしたけれど、
損傷が激しすぎるのか立ち上がるだけで精一杯みたい。
2人ともあわてて魔法球を放とうとしたところに、
イアンの切先が間に合う。
振り下ろされた剣によって2人の障壁が砕け散った。
審判の合図があり、私たちの勝ちが決まる。
歓声がやまない中で、イアンの下に駆け寄っていった。