人外転生:デュラハンの場合
人外転生増えろ。もっと増えろ。
首無し騎士の伝承の一つに“死者の葬列に現れる”というものがある。これを骨子に人外転生もののプロットを組んでみようと思う。
[物語概要]
主人公は闘争を司る神の下僕である首無し騎士。その役割は死した戦士の魂を闘争神の身元へと導くこと。
昼夜を問わずに世界と言う箱庭を飛びまわり、信者や戦士の魂を神の御許に導いては僅かにその記憶に触れて自我を取り戻していく。その姿に恐れられ、時折感謝され、それなりに戦いを挑まれるこの新しい世界。擦り切れて冷たくなった魂を持つ主人公の、異世界転生の前日単...ですらない“狭間の物語”である。
[世界観]
地球ではないどこかの世界。“前世に於いて何を成したか”が来世における才能の礎になることがぼんやりと信じられており、実際その通りのファンタジー世界。より大きな功績をあげた魂はそれに見合った神に祝福され、より高質な才能を与えられて来世へと旅立つサイクルが存在する。
数多に存在する神にその権限が主神より与えられているが、それに熱心か否かは大きく個人差がある。
如何なる神の御許に導かれるかは、その人間の信心。次点で思想や生き方を参照され、その上で該当する神が自分の御許に導くか否かを委ねられる。勿論見逃すことも多々あるため、熱心な神は自身の“使徒”や“御使い”を遣わせて自身の元へと導く。主人公の立ち位置はその使徒に当たる。
[導入]
主人公の通常業務を見せて物語における役割を印象付けること。二話目に主人公視点での物心ついての話を挿入すると良いと思われる。
[主人公]
闘争神の信者、若しくは雄々しい戦士の今際の際や葬儀に現れてはその魂だけを神の元へと導く首無し騎士。上司にあたる闘争神から受けた指示は上記の通りで、他細々としたものは好きにしろと広すぎる裁量権が与えられている。
フルプレートの鎧の身体で兜は左腕に抱えられている。首のない馬が牽く馬車には、地上で使用されている闘争神を示すシンボルがあしらわれ、その客室にはアシスタントのバンシーが複数体詰まっている。
戦闘面に関しては大剣など画になるだろうが、主人公が何故戦闘スペックをもつのか、その整合性を取る必要がある。ただ戦闘シーンの有無は話を広げる手段になるので、可能な限り武力は持たせておきたいだろう。
【主人公変態の裏側】
会社で扱使われ、家庭内に居場所もなかったサラリーマン。会社ではパワハラ、家庭では無視や暴言を受けながらも義務感だけで賃金を稼いでは心身を擦り減らしていた。それはある種の呪いとして魂に根差し、肉体を失った死後に於いて命の本質たる“生存”を拒否する暗く冷たい魂となってしまった。
意志なくとも拒否する矛盾を抱えた魂は輪廻の輪に還るなら消滅も免れず、魂が輪廻に還るのも拒否するという有様。それに頭を抱えたのは地球での輪廻の管理者である。
昨今この手の魂が増えてきたことに頭を抱えた地球の輪廻の管理者は、冷たくなった魂を癒す事よりもすぐに輪廻に応じれる魂を欲した。結果、異世界の神と魂のトレードを取り付けて、主人公の魂を異世界の神に押し付けた。
さて問題を押し付けられた異世界側。主神が他の神を招集し、あーだこーだと話し合う。
ある神曰く、この世界に於いては“酷い主人に虐げられた奴隷”の魂が一番近いが、それでもここまで酷いことはないという。如何にしてこの魂を癒すか?そこで他の魂に触れさせるという提案をしたのが闘争神だった。冷たいなら温めてやればいい。他の魂の熱に触れれば熱は移るものだ、と。
[ヒロイン]
この物語にヒロインの必要がない。必要はないが、あった方が華になるのだが、主人公の周りにいるのは首のない馬とアシスタントのバンシーのみである。馬は絡ませれば視聴者が勝手に嫁認定してくれる場合もあるので、意識させるべきはバンシーの方だろうか。闘争神の命令で主人公を監視する役割だったり、物語が進むにつれて自我を獲得する役割だったりするのもいいだろう。積極的に主人公に絡むのではなく、一つの視点として物語を支える役割の方が意味合いとしては大きくなるかもしれない。
[日常パート]
(上司好みの)既に死した、若しくは間際に瀕した戦士の魂の元へ現れてその御許へ導く葬儀屋。以下、これを葬儀と称する。見た目から周辺の人間には恐れられ、時折平伏され、それなりに戦いを挑まれたりと葬儀のバリエーションを増やすことがそれなりに長い作品にするポイント。短編にする方が寧ろ簡単。
御許に送られる魂に触れることで自身の魂に熱(生きたいという意思)を取り戻していくことが主人公を監視下に置いている神の目的。葬儀を繰り返していく内に熱とともに首無し騎士としての自我が芽生える(取り返す?)していく様子が主人公の成長として描くのもポイントの一つだろうか。
以下ありがちなイベント
・同行者が居り、間際にその同行者の安全を頼まれる。
・葬儀の帰りにその近縁に勝負を挑まれる。
・葬儀に現れるも他の神の元へと召されている。
・いつかに戦いを挑んできた近縁と再会する。
・時代が流れて主人公が教会などからモンスター認定される。
・他、バンシー視点や闘争神視点の感想や進行。
[戦闘パート]
あるならそれに越したことはない。が、主人公は前世がサラリーマン。戦闘できるなら相応の理由が必要になる。何なら、魂と鎧を別物にしてもいい。魂を日常パート、鎧を戦闘パート担当としてみるのも面白いかもしれない。
しかし忘れてはいけないのは、主人公は葬儀屋であるということ。闘争神の部下故挑まれれば応えるのは吝かではないが挑戦者を殺害してはいけない。折角なら育つように導くのだ。お眼鏡に適うなら闘争神印の武器を授けても良いだろう。収穫時期になったらその印へ向かえばいいのだから。
もし。もし主人公自らが刃を握る時が来たのなら、その魂には既に熱が籠っていることだろう。そうなれば物語の閉幕も近い。
[葛藤]
冷たい魂が熱を取り戻していくにつれて主人公の意識も浮上してくることだろう。しかし人間だったころの名残は当然良いことばかりではなく葛藤を呼び込むこともある。
凡そ進行にして中盤程。機械から不合理な機械へ。不合理な機械から熱を持つ人間へ。
時に闘争神から課せられた役割から逸脱することもあるだろう。当然神は怒るだろうが、そも神を怒らせる行動を取れるようになったのなら来世への旅立ちが近いともいえる。
[終点]
冷たい魂に熱が籠り、生存を拒まなくなった魂は再度来世への旅に出ることになる。
物語の流れ次第ではこのまま闘争神の使徒を続けることもあるが、数多の戦士の魂に触れた主人公の選択は、いずれにせよ尊重されることとなる。
...案外闘争神から祝福され、次回作の主人公でもやってるかもしれない。何せ主人公が転生するまでの狭間の物語でもあるからだ。
細部は詰めないほうがいいと思いつつも、いち設定として記載しておく。