二週目主人公の場合
今回の草案は二週目主人公。強くてリトライならぬ強くなってリトライ。
一週目、異世界に来た主人公の願いは“異世界召喚術式の破棄及び根絶”
自分の世界の危機位自分たちで何とかしろ、それができないなら大人しく自然淘汰されろとばかりに召喚者に食って掛かった主人公。しかし元の世界に帰るにはどうあっても魔王を倒さねばならないという。
紆余曲折を経て魔王を討つ旅の出立前、主人公は再度召喚者に確認する。
『次に魔王が現れたとしても異世界召喚と異世界人に頼らない事。現存する異世界召喚の術式を破棄、根絶すること。此処以外の国が異世界召喚の技術を保有するなら、同様のことを周知徹底すること。』
それを快諾した召喚者。しかし主人公にはこの約束は守られない確信があった。異世界の人間の戦略的価値と知識。千金万金を積んだとしても、この世界では得られない未知。それをおいそれと手放すものか、と。ましてや自分はこの世界から退去するのだ。約束相手が文字通り世界から消えるのだ、欲深い連中がその後どうするかなど想像に難くない。
そして呼ばれた二度目の異世界転移。二度目となれば心得もあったもの。落胆、安堵。そして、嘲笑。耳に届くどよめきは瞬く間に悲鳴へ転ずる。目を開ければ、どうやら召喚者と思わしき者が亡くなっていた。
「命を懸けて魔王を倒す代わりに取り付けた約束だ、ならそれを破るのに命を要求するのは当然だろう」
しかし約束は果たされず、哀れそれを知らずに召喚を行ったものは死に絶えた。ざまぁみろと沸き立つような歓喜。かくして二度目の召喚にて異世界に立った主人公。
その目的は己の手による異世界召喚術式の破棄及び根絶である。
[導入]
二回目の召喚。
百回は見た異世界転移もの同様。ただし今回は召喚した側が死亡している。過去に召喚された国でもいいし違う国でもいい。大事なのは一度目の召喚の時に主人公が取り交わした約束を知っているかどうか、である。
[主人公]
今回の主人公は【一週目主人公】【合間主人公】【二週目主人公】の三パート分の情報が必要になる。【二週目主人公】視点をベースに【一週目】と【合間】の回想を情報として描写を挟んでいく。以下必須になるである情報他。
【現世~一週目主人公】
・両親に愛されて育ち家族が大好きな、何処にでもいる純朴な青年。両親に愛されている事を自覚し、こつこつと努力を積み重ねれば目標に届し、それが自己のアイデンティティとしている。が、異世界召喚によりそれが根本から瓦解。アイデンティティクライシスを起こす。
・魔王討伐の報酬として“異世界召喚術式の破棄及び根絶”を要求している事。及びそれが守られない可能性を大とし、対策を打つ為に魔法に対する知識を深め、異世界召喚術式を解析。ある程度の類推が出来るまでの情報を獲得。(→対策の模索へ)
・異世界召喚術式は被召喚者に魔王を討伐するなどの目的を設定する必要がある。これが成されると自動で召還が発動し、術者は召還術の発動を感知することができる。主人公は“魔王討伐”が契約に含まれている...が、それは召喚者から聞かされて初めて知ることになる。つまり同意の上での契約ではない。
・そこから異世界召喚術式のカウンターとして召喚対象を自分自身に固定すること、及び自身が召喚された時に召喚者に対して致死量の負荷をかける術式を組み込むことを思いつき、実行。当然この時点では術が再召喚時に発動する確証はない。
・葛藤、というよりは心を殺す手段である。魔王を討伐して現世に帰って大好きな両親のもとに帰れる。しかしその後、再びこの世界に呼ばれる可能性があるのだ。その葛藤たるや、如何なる意志を持てば実行できるのか想像もつかない。
・他、自身が生きている間でしか有効でない事だが、どうしてもそこだけは解決できなかった。
・また地球に帰るに際して自身の記憶や現在所持している魔法やスキルがどうなるのかもわからない。
・確証が得られないことばかりながら、やれることはやる。
・この時点での最大の誤算は、主人公は【まだ現世に自分の帰る場所がある】と思っていたことである。それを前提に主人公の行動指針を決めて実行し、合間の主人公に絶望してもらう。
【合間主人公】この時点の年齢は召喚時点+異世界の滞在時間のイコール。
・現世への帰還。異世界と現世の時間の流れの差異によっては召喚時点より未来に帰ってくる可能性がある。普通失踪の時効は七年なのでそれ以上を目安にするといいかもしれない。いかなる理由であれ、主人公が愛した温かい家族は離散して帰るところがなくなったことを知る。結果、擦れた心が完全に崩壊する。自身が心の拠り所にしていたものがなくなり豹変の引き金となる。
・地球産のアイテムを買い込めるタイミング。一度目の異世界を経験してるので、欲しいもの、便利なものが判る筈なので、作中の後出しでもそれなりに整合性が取れる。
・理科、科学のお勉強。魔法はイメージだと言うのなら、また役に立つかもしれない。回想で差し込むなら現代風に動画などでの表現がいいだろうか。
・保有魔法やスキル...はあると良し。アイテムボックス大事。それと上記のお勉強の成果も確認できるのも大事。
・何より恐ろしいのは有るかも知れない未来、それも“もう一度あるかないか判らない異世界召喚に備えて待ち続け、必要なことをコツコツ積み重ねられる精神性”。
復讐と報復の為二度目の召喚を切望して地球での日常を送る。そしてある日、その狂気が報われる時がくるのだ。この復讐心を二度目の召喚へのモチベーションとする。
【二週目主人公】年齢は合間主人公時+現世から召喚時までのイコール。
・物語のスタート地点。ハイライトの無い瞳と目の下のクマの草臥れた男性だと個人的には良いかと。
・召喚者の死亡&それによる召還の発動がない事を確認。一週目で主人公が立てた仮説と召喚のカウンターが可能であると立証される。しかしそれと同時に“己が現世に帰るための召還条件が不明”になってしまう。
・召還条件は情報収集の結果戦争の気運が強いため“国家間戦争への参加と勝利”ではないかと凡その辺りをつける。実際の所は作者次第。
・このカウンターは放たれた召喚陣を自身に誘導するため、異世界に戻った主人公が他の国に再召喚される可能性がある。うまく活用しよう。
・取捨選択は効率重点。不要であれば有機物無機物関係なく切り捨てる面を持つ。何故か?異世界の諸々が本人にとっては平等に無価値だからである。
・地球と異世界の時間のずれ方によっては一週目で出合った人と再会できるかもしれない。また、それに合わせて主人公の年齢を考慮すること。
[主人公の目的]
・異世界召喚技術の破却。それを国家相手に行う事。だがチート能力で国を平らにするような真似はできない。元々魔王を倒すために召喚された主人公は、“異世界人に頼らず魔王と戦え”と啖呵を切った。それができないなら大人しく自然淘汰されろ、とも。つまり国家を潰してしまうと人類側のパワー低下につながる。この世界の人間が異世界召喚を行わずに世界の脅威に立ち向かう、その可能性を信じたいのだ。
また、今の主人公は召還条件が判っていない。異世界召喚の破棄を完遂する前に召還条件をうっかり踏んでしまうことも避けたい。うっかり召還されて次の召喚があった時、自身が満足に戦える年齢にあるのか分からないからだ。
つまり主人公の縛り内容は
“召還条件を満たさずに国家に眠る異世界召喚の破棄を成す”となる。
・どこかでこの異世界召喚技術もこの世界の努力の一つだと認識はしている。勿論許すか否かは別である。
[お披露目]
初戦闘は召喚直後。召喚者が死亡したのを理由に衛兵が連行しようとするが、その抵抗などがいいだろう。圧倒的な暴威を示して異世界召喚の破棄勧告の有無を確認。また国が持っている異世界召喚の資料の破棄を要求、ではなく脅迫。合間に手に入れた現世の武装などでも良し。
[ヒロイン]
一度目の召喚で一緒に冒険した人物が好ましい。一週目の主人公を知っているからこそ二週目の主人公の様変わりっぷりに驚愕し、その心を解せる役回りがあると過去編で主人公以外の視点を獲得できてお得。一週目から二週目までの時間を経ても全盛期を維持できる、それなりの長命種であることが望ましいだろう。
[日常パート]
自分が救った世界が、自分のいない間にどう移り変わったのかを眺めながら、国家が保有する異世界召喚術の情報を集めて回る。巡る国(異世界召喚術を保有する国)は話数次第でもあるが、凡そ四か国ほどがいいのではなかろうか。うち二週目初めの国は即潰れる流れなので。
・一週目に召喚した国の扱いは作者次第である。主人公の約束を破り召喚してもいいし、逆に約束を厳守して主人公が漏らした科学というものを国主導で研究しているのかもしれない。前者の場合はともかく、後者の場合は主人公の心を動かす可能性がある。守られないと思っていた約束、その国だけはまもっていたのだから。
・帝国/教国/王国/共和国etc
国のあり方次第で異世界召喚の扱いも変わってくる。神から授かったものだと思い込んでいたり、始祖が生み出したものだと言い伝えがあったり。ただ元々何処かの国が異世界召喚を開発し、その技術が持ち出されて国家まで急成長したという歴史にするとそこまで矛盾が出ない、はず。もしかすると召喚された現代人による戦争などもあったかもしれない。
[戦闘パート]
序盤は国家保有の騎士や魔導士といった戦闘員、後半は主人公に脅威を覚えて異世界召喚で揃えたチート持ちと戦うことになると思われる。
無双寄り、それも現代兵器なんか使えると二週目感があってよい。また、異世界人に銃を見せても反応は薄いが現代から召喚された人間ならその脅威を知ってる、等人間の知識格差など組み込むと尚良し。
現代兵器による初見殺しや再学習した化学でイメージを補填した魔法によるごり押し。作風次第ではわりとやりたい放題できる。
ただ兵器の調達は現代社会では難易度が非常に高いため、理由付けに苦労する。がんばれ。
[葛藤]
徹頭徹尾徹底的に。燃えるような復讐心に大義名分免罪符は既に持っている主人公。その中に葛藤が生まれるとすればヒロインとの絡み次第とも思われる。つまりヒロイン力の有無が此処で試されるのである、と言う名のぶん投げ。
他に葛藤と言えば自身の召還条件を如何に回避しながら目的を達するかが上げられる。確定していない召還条件、その中で可能性があるものを洗い出し、それを避けて計画を立てて実行する。その工程こそ作者にとっての葛藤になるかもしれない。
[終点]
設定した国から召喚術の方法を抹消すればそれでゴール。ただもう一声欲しい場合は異世界召喚を齎した存在からの接触とその淘汰があるといいのだろうか。つまりちゃんとしたラスボスの登場。また異世界召喚を広められると主人公の八つ当たりもパーである、そりゃあ全力で殺しに行く。
根絶を果たせば主人公は今一度、この世界に残るかの選択を自問自答することになる。が、現世も異世界も自身が積み重ねたものは崩してしまった。その上八つ当たりの完遂で燃え尽きてしまった主人公の心根を考えると自決する未来も考えられる。
作者の望ましい結末に向けて物語の舵取りをしてよりよい主人公の後日談を目指してほしい。