[不可逆型能力系主人公]
不可逆。つまり元に戻らない。
肉体的な変形を伴う能力にデメリットとして引っ付くと日常パートでどえらいことになること請け負い。物語の主人公よりは悪役にとっての最後の手段、戦隊モノの巨大化みたいな。
肉体改造。寧ろ肉体魔改造。人を辞めるのに人型なんて許せない。
[お披露目]
実は一番難しい所でもある。あんまり変形させ過ぎると後の展開に響き、逆に少ないとインパクトに欠ける。
単体転移なら主人公が助けた村人に悲鳴をあげられるのもいいし、クラス転移ものならほかのクラスメイトに攻撃、排斥される口実になる。異世界召喚ものなら王様や重役が呪いでもかけて牢屋に放り込み、戦争の際に自由に使われる兵器にされるかもしれない。
そこから復讐に走るも救いを求めるも作者次第。しかし主人公の最終的な目的は、やはり【元の肉体に戻る】に落ち着くだろう。
[ヒロイン]
美女と野獣における美女。主人公が醜くなるなら隣には目も眩むような女性を。
とは言え変形や改造を繰り返して化け物一直線になりがちな主人公の隣に座れる女性像などそう多くはない。
恋に盲目な幼馴染。光を知らない奴隷。SAN値ゼロの狂人などだろうか?誰にせよとんでもねぇ胆力である。
[日常パート]
仮に主人公の能力として採用する場合、やはり日常パートに支障が出てくる。瞳や服の下に変化が出る程度ならまだしも、翼やら尻尾やら生やそうものなら服装で隠すのも限界が出てくるだろう。
色んな魔獣のパーツが引っ付いた人型の何か。下手すると歩いて喋る不出来なパズル。そりゃ街の衛兵だってすっ飛んでくる。当然日常パートの主体は街の外になるだろう。
狩りをして腹を満たし、川の水で喉を潤し、魔物や獣と相対してその能力を自分のモノにする。環境としては理想的だ。
逆に人の利便性の無さこそがドラマを生むだろう。
[戦闘パート]
戦闘面に関しては寧ろ無双できそうなもの。個対集団に夜間に於ける対暗殺者戦など、主人公の改造具合によって取り得る選択肢も豊富なものとなるだろう。魔法戦よりは肉弾戦、戦いの基本は格闘だ。
ただ描写と肉体的な稼働領域破綻が難しい。自分が持ってない器官の説明なんぞどうすればいいのか、少なくとも僕には分からない。
[葛藤]
【人間である自分から徐々に人ならざる者の肉体に変異変形していく自身の不安】
【変形変異する肉体に引っ張られがちになる人間としての自分】
【主人公を拒絶する周囲の反応からくる戸惑い、悔恨。そこから生じるストレスや敵意】
などがあげられる。
自分以外の殆どから疎まれたり敵対される関係上、主人公に相当のストレスが圧し掛かるためそれを軽減できる何かが必要になる。
書いてて何ではあるが、まともな精神してる主人公ならポッキリいきそうである。
[終点]
先にも書いたが最終的な目的は【元の肉体に戻ること】になるだろう。その合間の小目標として【自分を貶めた者への復讐】や【ヒロインのマイナス部分の克服】等を挟むとそこそこの長さを確保できる。
もし肉体の回帰を目標としないならば、主人公は異形のまま異世界に残ったり現代に帰還することになる。その場合肉体を戻さない強い説得力が必要になるだろう。
需要は知らない。だが異形主人公は良いものだ。