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62話 襲われる東の都

間が開きました、週一くらいで更新を再開しようと思います。よろしくお願い致します。

〜東京湾上空〜



『フェンリル1より、不明機を視認した……あれが小笠原に現れたっていう黒い晴嵐なのか?』


 東京湾上空を飛行する晴嵐が僚機に通信を入れる。


『IFFに応答はない、気をつけろ、ただフラフラ飛んでいる様に見えるがいつ攻撃してくるか分からん』


 僚機……フェンリル2はそう返答した。東京の湾岸部、その上空にて前触れなく出現した不明機に接近するフェンリル隊の晴嵐二機。


 二機は火器管制システムを起こし、いつでも攻撃体制な状態だ。


 先日の小笠原沖での不明機による偵察機撃墜以降、自衛軍上層部はかなりピリピリとした状態になっている。そこにさらなる不明機の出現。


『全く……気が重いぜ』


 そうして、徐々に黒い晴嵐に距離を詰める二機。


『あー、国籍不明機に告げる。直ちに武装を解除して貴機の所属と目的を明らかにせよ、警告に従わない場合は……』


 フェンリル1は不明機にオープンチャンネルで警告を入れる。しかし相手からの応答は全く無い。


 そうして、二機は機関砲の射程範囲にまで接近する。


 フェンリル2の晴嵐は手持ちの機関砲を構える。


 ダンッ……ダンッ……!


 わざと黒い晴嵐から標準をずらし、セミオートで数発の威嚇射撃を行う。


 だが、不明機は全く反応せずに優雅な空を飛んでいた。


『やれやれ、こうも無視されると流石に傷つくな』


 呆れ半分、驚き半分の気持ちでそう呟くフェンリル2。


『──おい、なんだこれ』


 僚機の動揺した声。フェンリル1は「どうかしたのか」と声を掛けようとするが、その理由はすぐに判明した。


『なんだ、周りにいきなり……コイツらどこから!?』


 突如、音もなく霧の様に出現した黒い晴嵐の数々。


『司令部!! 聞こえるか!? 大編隊が……クソっ、どんどん増えるぞ!!』


 司令部に通信を入れようとするが、応答がない。ノイズが走った様な不協和音が響くだけだ。


『ジャミングされてるのか……? ちくしょう! このままじゃ喰われるぞ! フェンリル2、当空域を離脱するぞ!』


 二機は速やかにその空域を離れる、その間にも次々と増殖を続けるゴーストのコピー戦人機。



 そうして、東京湾上空に軍団規模の大編隊が出現したのであった。



〜〜〜〜〜〜〜〜



 後に"東京戦役"と呼ばれるゴーストとの大規模戦闘の火蓋が切って落とされた。


 ゴーストの動きは迅速であった。東京湾上空に出現したゴーストの大軍は大挙して東京を急襲、東京の街を破壊して蹂躙し尽くした。


 周辺基地の戦人機隊が速やかに迎撃に上がったが、敵の数が多すぎる。


 軍団規模に膨れ上がったゴーストに対して、三個飛行隊程度では対抗は絶望的であった。


 そもそも、戦人機による急襲という出来事を想定していなかったのが対応遅れの原因でもあった。


 また地上においても従来型のゴーストの出現が観測。旧首都圏全域に特別非常事態宣言が発令され、住民の待避が行われた。


 その日のうちに占領区域は拡大。政府は防衛ラインを下げ。東京一辺はゴーストの手に落ちた。



〜〜〜〜〜〜〜〜〜



『また、この戦闘による死者、行方不明者の数は……』


 テレビでは、東京で発生した大規模戦闘のことを報じている。


 あちこちで煙や火の手が上がっている。そうして飛び交う戦人機。自衛軍の戦車隊がゴーストと交戦している様子。様々な映像が流れる。


 かなり激しい戦闘が繰り広げられているようだった。まさしくその様子は"戦場"そのものだ。


「…………」


「…………」


 私とハルカはそれを無言で見つめる、東京、私とハルカの故郷がゴーストに襲われている。しかもあんな大軍に。


「と、東京が……」


 ハルカが震える声でそう呟く。


 ……覚悟はしていたつもりだけど。実際にこうして自分の目で見ると、なんとも言えない恐怖と不安感を覚える。


『各地で避難の遅れからなる混乱が発生しており……』


 ニュースは東京での出来事を報じ続けている。


 と、その時だった。寮の外から甲高いクラクションの音が連続して聞こえた。


 それとほぼ同時にポケットの中のスマホにメッセージの通知音が入る。


『マイ、非常召集! ハルカも呼んできて!!』


 ジェイミーからだった。外の車はジェイミーのものだろう、急いで迎えにきてくれたようだ。


「……あ、あぁ」


 ハルカは声にならない声を出し震えていた。それもそうだ、故郷がこんな状況になっているのだから。


「ハルカ、しっかりして」


 私は震える彼女の手を握り締める。私も不安だが……こういう時こそしっかりしなければならない。


「ま、マイちゃん……」


 ハルカの強張った手が少しだけ柔らんだような気がした。


「非常召集、多分関係あることだから……ほら行くよ」


「うん、わかった……」


 そうして、私たち2人は手を繋ぎ急いで寮を出る。外にはジェイミーの赤いスポーツカーが止まっていた。


「マイ、ハルカ! 早く乗って!」


 窓からジェイミーが顔を出す。私たちは後部座席に乗り込んだ。


「飛ばすわよ!!!」


 ジェイミーがそう叫ぶ。唸るようなエンジン音と共に深紅のスポーツカーは急発進した。

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