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61話 ステラ因子を持つ者たち

 ゴォォォォォォ……


 戦人機特有の排気音、特にこの低い音は旧世代機にありがちな音だ。


 チラリと右モニターを確認する。そこには紅のSz-21、ディーヴァの愛称で呼ばれる機体が飛行している。先程まで私の紫雲と戦っていた機体だ。


『お疲れ様ですマスター』


 シリウスの労いの言葉。


「んー……」


 私はそれに生返事で返す。先程の戦い、なんとか勝てた。


 正直最後の格闘戦(ドッグファイト)はかなりギリギリだった。互いに押して引いて一進一退の攻防、だか教導群からビシバシと叩き込まれた近接格闘術のお陰で乗り切ることができた。


「よいしょ……」


 小隊やグリフォン隊、エメリアの部隊が待機している場所にたどり着く。スロットルを絞り地面に着地。


 私の紫雲がズシンと音を立てて地面に降り立つ。


『マイ! やったじゃない!』


 ジェイミーの興奮した声が通信に入る。


『見てたよー、おつかれ』


『お姉ちゃん凄い!!』


 ハルカ、アカネも嬉しそうな様子だ。


「あはは、まあ結構ギリギリだったけどね……」


 正直言って、あんま褒められた戦い方では無いと思う。特に最初なんか自分の得意な狙撃を捨ててディーヴァに近づいたし。


 ……でも、流石にあの歌声を聴いてじっとしていられる程、私は大人しくは無かったようだ。


 なんというか……こういうのって、アイドルの(さが)というものなのかな?


『ふん……まんまとあの歌声に釣られたくせに』


 と、エリナにはそこを突っ込まれた。まあ仕方ない。だって心が惹かれたんだもん!


「でも、あの歌声みんなも気がついたよね?」


 彼女の歌声からは間違いなく私たちと同じものを感じる。


『ええ、間違いなくステラ因子を持っているわね』


 ジェイミーがそう言った。


 ステラ因子……私たちが保持しているゴーストに対抗できる証のようなもの……


 私達以外にもきっといる……そう思ってはいたけどまさかあの人が持っているとは。


「シリウス、さっきの歌ってちゃんとデータとってる?」


 私はシリウスにそう問いかける。


『勿論ですマスター、音声、その他データを纏めたファイルを作成しています」


 優秀な娘だなぁ……さすがウチのAI。


「じゃあ、そのデータ。後で研究班の解析に回してもらおっか」


『了解ですマスター、研究班にデータを送信しておきます』



 その後、いくつかの演習項目をこなしてエメリアとの合同演習は無事に終了した。なんだか凄く貴重な体験をしたような気がする……



〜〜〜〜〜〜〜



「はぁ……気持ちい……」


 ザバァと湯船に浸かる、仕事を終えた後のお風呂は別格だ。


「マイちゃーん、そこのシャンプーとってー!」


「ん、ほらっ」


 私は彼女にシャンプーを渡した。


「ありがとー」


「それにしても……綺麗な歌声だったなぁ……」


 私は演習で聞いた"歌姫"の歌声を思い出す。綺麗であるが、何処か情熱を持ったような歌声に聞こえた。


「そうだね〜」


 身体を洗いながらそう返事をするハルカ。


「世界にはもっと……私達以外にもステラ因子を持っている娘もいるんだよね」


 ハルカは唐突にそんな事を言った。


「ん……そうらしいけど」


 ステラ因子……研究が進みつつあるが未だに全容は明かされていないという。


 発現する確率は極めて低いとされているが、世界には見つかっていないだけでまだ因子を持っている少女がいる事が推測されているそう。


「私思うんだ……ステラ因子って、ゴーストに歌を伝える手段なんだって」


「え? どういう意味?」


 珍しく真面目な事を言い出すハルカ。


「……私もよくわからないけど。戦うんじゃなくて、いつか歌でゴーストとも分かり合えたらなって」


 主人公みたいな事を言うなぁこの娘。あ、主人公だった。


「できるのかな、そんな事」


 私がそう返すと、ハルカはシャンプーの泡を流してこちらにやってくる。


「……アカネちゃんみたいに、きっとわかってくれるよ!」


 湯船に入り、私の隣に来るハルカ。


 ……たしかに、アカネはゴーストだけど私たちの歌を好きと言ってくれる、そうして私たちと一緒に歌ってくれる。


「うん……かもね」


 私はそう呟いた。と、その時。ハルカが私の手に手を重ねてくる。湯船の底で重なり合う手と手。


「私、マイちゃんの歌声が大好き」


「え? ありがとう……私も好きだよ、ハルカの歌声」


 ハルカの歌声は……なんというか聞いてて元気が出る。


 決して高い技術力があるとかって訳じゃないんだけど……やっぱりこういうのって一番大事なのはどれだけ心がこもってるか、だと思うし。


 私はハルカの手を優しく握った。そうして、私は気がつけば自然と歌い始めていた。


 私の声にハルカの歌声も重なる。お風呂場の中に私達の歌声が反響し響き渡った。



 そうして、気がつけば一曲、私たちの始まりの曲でもあり、ユニット名でもある"Shooting Star!!!"を歌い終えていた。


「マイちゃん、これからもよろしくね!」


「な、なに? 改まってどうしたのさ……」


 なんだかこういう事を面と向かって言われると恥ずかしいんだけど……



 その後、私たちはのんびりとお風呂を堪能した。

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