5話 決意とラッキースケベ
ラストで歌ってるのは実在しない曲です。
「あ……マジ……?」
私は思わず立ち上がり彼女見つめる、そしてあることを思い出した。
このシュチュエーションって……
私はおもわず後退りをする。その時、私は足元に転がっていた石鹸をおもいっきり踏んづけてしまった。
あっ……
ツルン、とギャグみたいな滑り方。
「ちょ……危ない綾瀬さん!」
ハルカが私に駆け寄る、しかし彼女も濡れた床に足を取られ……
これまたギャグみたいに2人で絡み合ってスッテンコロリンしてしまった。
「いったぁ……」
私はハルカ押し倒されるような形で床に寝そべっていた。
「あいたた……綾瀬さん大丈夫? ……ってあれ?」
もにゅん
「ちょっ……あっ……」
彼女の手は運悪く私の胸にのしかかっていた。
「……私より大きい」
「っ……! 手を退けろ……!!!」
私はハルカを押し退け胸を隠しながらワナワナ震える。
「いきなり押し倒され胸を……もうお嫁にいけない……」
「あはは……ごめんごめん」
……同じだ、蒼グレ第一話にもこんなやりとりがあった。
「……」
その時、私はようやく状況を理解した、もう物語は始まっているんだ、と。
「綾瀬さん?」
考え込んでいた私にハルカが心配そうな顔で声をかけてきた。
「……いや、なんでも」
私はなるべく冷静な感じを保ちながら答える。
「まあとにかくよろしく! じゃあ一緒にシャワー浴びよ!」
……はぁ、これから先大丈夫かなホント。
これから始まるであろう蒼グレの物語に不安を覚えながら、私はため息を漏らした。
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『昨夜未明、渥美半島沖に"ゴースト"の出現が確認されました』
私とハルカは食堂に用意されていた朝ごはんを食べながらテレビのニュースを見ていた。
ゴースト……この世界に現れ始めた未知の生物……
「こんな首都の目と鼻の先にも出るんだ〜」
ハルカは呑気な声色でそう言った。
……こいつ、大丈夫か?そのゴーストと、これから私達は壮絶な争いを繰り広げるんだぞ?
『出現したゴーストは自衛軍の戦人機部隊により撃滅されました、続いては芸能のニュースです、人気アイドルユニットの解散についての続報です……』
ニュースは続く。
「綾瀬さんって、どこ出身なんですか?」
ハルカが私にそう問いかける。
「東京府……ですけど」
「わぁ! じゃあ私と同じですね! もしかしたらどこかですれ違ってたりして……」
「そうだね」
テンション高いなぁこの娘……
そうそう、この世界では東京は首都ではないけど、中京都に並ぶ大都市であり、あまり元の世界の東京と変わらない感じであった。
私……マイは葛飾区の生まれで中学卒業までずっと東京で暮らしていた。
そういや、蒼グレでマイとハルカがユウミさんともう1人の娘を連れて、一緒に里帰りするエピソードがあったなぁ……
私は恐らくこれから起きるであろう経験を連想しながらハルカの話を適当に聞き流し、朝食をかきこんだ。
……この朝食誰が作ったんだろう?
私はふとそんな事を思った。今この寮には私とハルカの2人しかいなかった、ユイさんもユキさんもユウミさんも見当たらず、2人分の朝食だけが食堂のテーブルに用意されていた。
「綾瀬さんは……ってもう名前で呼んでいいよね?」
「……勝手にどうぞ」
この娘、ほんとグイグイくるな……私を攻略しにきてるのか?
「マイちゃん、さっきお風呂場で歌ってたよね?すごく上手だったよ!」
「ちょ……ゲホッゲホッ!」
飲んでいた味噌汁でむせてしまう、聴かれてたの?そりゃ聴かれてたか……あんなノリノリで歌ってたら……
「それは……そんな事ないって別に……!」
「いやいや!本当に綺麗だったよ!さっきはゴタゴタしてて言えなかったけど……」
もうやめて!私のライフはゼロよ!
「マイちゃん、綺麗だし歌も上手いし……はぁ、私のお嫁さんにならない?」
満開の笑みを浮かべながら私を口説いてくる彼女。
「なななな、何言ってるのあなた……!」
私の頬が赤く染まるのが自覚できた……こいつあまりにも天然ジゴロすぎる、さすが主人公……
その後、私は散々ハルカに辱めを受けながら朝食を食べる羽目になった。
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その後、朝食を食べ終えた私は部屋に戻り、届いた資料集をパラパラめくっていた。
「頭に入ってこない……」
情報を頭に入れなければいけないのは分かっていたが、どうも気分が乗らなかった。
そもそも、私はこの世界でなにをするべきなんだろう……
そんな考えが頭をよぎった。
私はマイの行動を踏襲すべきなのであろうか、しかしそれでは……
「このまま流されるようにアニメと同じ行動をしてたらバッドエンド一直線だよね……」
死にたくない、前世じゃ呆気なく事故死してしまった、せっかく新しい人生を歩んでいるのに死にたくなんかない。
……東京に帰ろうかな
ふと、そんな事を思ってしまった、そうだ、実家に帰って引きこもってれば惨劇に巻き込まれる事もないだろう。
「……だめだ、蒼グレだと東京は……」
私はアニメの内容を思い出して首を振った、東京は安全な場所ではない、のちに過酷な戦場となる場所だった。
逃げる場所なんてない、私はこれから戦いに巻き込まれていくのだろうか。
……だめだ、どんどん気分が沈んでいく。
「あーっ! もうこれじゃダメ!」
私はベッドから起き上がり出窓の方へ歩いていき窓を勢いよく開け放つ。
「すぅー……」
青空を見つめながら、呼吸を整える。
〜♪
鼻歌でメロディをとる。
“蒼き彼方へ、空へ続く架け橋へと……”
そして、歌い始める、あの曲を。蒼グレのオープニング曲を。
この曲、大好きなんだよね……私が蒼グレ知ったのもこの曲からだし……
“飛んでいけるなら、Blue poetry GUNGRAVIA……”
私は歌いながらハルカの顔を思い出した、馴れ馴れしく人懐っこいあの娘、だがあの娘の先に待ち受けている未来は……
私は、覚悟を決めた。"ストーリー"という未来を知っている私がこんな世界に転生した理由、それはきっとそういう事なんだろう。
そのうちテレビサイズのオープニング曲を歌い終わった私は胸に手を当て息を吐く。
「変えてやろうじゃない、その結末!」
ビシッ!と青空へ向けて指を指す、バッドエンドをハッピーエンドへと導く決意をした瞬間であった。
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"湯島ハルカ"
年齢 15歳
誕生日 8/1
出身 日本皇国 東京府 荒川区
本作"蒼き詩のガングレーヴィア"の主人公である、東京府から中京都に上京、入学式の日に異星侵略体"ゴースト"との戦闘に巻き込まれ偶然近くに墜落した輸送機に積み込まれていた試作実験戦人機で戦闘を行う。以降、彼女は対ゴーストの争いへと巻き込まれていく……
〜『蒼き詩のガングレーヴィア』設定資料集より〜