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52話 フェス

 取材の翌日、私たちはひたすら飛行教導群の訓練を受けた。格闘機動について、みっちりと飛行教導群流の技術を叩き込まれる。


 ユウミさんも大概スパルタだったけど、この人達の特訓はそれ以上だ。


 ひたすら模擬戦を反復してインプットとアウトプットを繰り返す。


 そんな訓練が続き3日が経過した。私たちはもう一つ、石川県に来た重要な理由がある。それは石川県で開催される小規模の音楽フェスへの参加。


 特訓の合間にもこれらについての準備は進めていた。私達には持ち曲は二曲しかないが、そもそも知名度が低い私達には与えられている持ち時間は少ないのでなんの問題もない。


「朝から夕方まで厳しい戦人機の操縦訓練、その後はフェスへ向けての準備……温度差で風邪引きそう」


 格納庫内の空きスペースで練習をする私達、疲れた様子で地面に座り込むハルカがさんな事を言った。


「いままでも大体同じだったでしょ」


 パイロットとアイドルというギャップ差に今更驚いていても仕方ない。これが私達のお仕事なんだし。


「む〜……どうして私は出れないの?」


 と、練習の様子を眺めてるアカネは不満がない様子でそう言った。


 アカネは今回のフェスには出ない、というより、昨日の取材に参加しなかった事からわかるように、小隊のメンバーではあるが"Shooting Star!!!"のメンバーでは、まだないのだ。


「もうちょっとで一緒に歌ったり出来るから」


 私はアカネのフォローをする。


 実は、"Shooting Star!!!"のメンバーでは無いのには理由がある。彼女の歌声は未だに不安定な部分が多いという、無理に合わせたりすると暴走する可能性もあるとの事で今のところメンバー入りは保留となっているのだ。


「はぁ……みんなが羨ましいなぁ」


 まだ納得いかない様子のアカネ。


「……」


 どうにかならないのだろうか。暴走なんて言われてもそんな実感全く無いけど……とは言え、上から止められている以上はどうしようも無い。


「アカネ……」


 珍しく、アカネに心配げな視線を向けるエリナ。



 そんななんとも言えない雰囲気の中、練習を続けてその日は終わる。


 そして翌日。この日は特訓は午前中だけで終わり、午後は音楽フェスのリハーサルに参加する。


 他に出演する人達へ挨拶を済ませた後、適当な場所で待機する私たち。


「他にもアイドル結構いたね……」


 と、ハルカ。彼女の言う通り、他にも同業者と思われるユニットがちらほらいた。


「まぁ、音楽フェスだし」


 私はそう返す。


「ある意味、ここにいる他のアイドルは先輩でありライバルね」


 ジェイミーがそんな事を言った。


 そんなこんなでリハーサルをこなす、明日の本番に向けての準備を終えた私たちはそのまま基地へと帰還した。



〜〜〜〜〜〜〜〜



 翌日、今日はフェス本番となる。この日は朝から会場入りして準備する。


「こっちに来て初めて訓練無しの日だぁ……」


 控室で準備をする私達。ハルカが嬉しいような複雑な様子でそんなことを言った。


「ある意味訓練よりこっちの方が大変だと思うけどね」


 ジェイミーがそう返す。まあ確かに、こっちはこっちで大変だ。


「……」


 若干緊張した様子のエリナ。私は彼女の元に近寄る。


「……色々あるのはわかるけど、とにかく今日はそれを発散する気持ちで歌っちゃおうよ」


 未だに、ユイナさんとは微妙な距離感が続いている彼女。


 姉を持たず、どのようにしたら上手く行くのかわからない私に出来るのはそんな言葉をかけるくらいだ。


「ええ、わかってますわ」


 と、気持ちを切り替えた様子のエリナ。


「……正直言って、私はあなたとアカネが羨ましいですわ」


 唐突にそんな事を言ってきた。


「え?」


 思わずそう聞き返してしまう。


「出会ってまだ一ヶ月ちょっとくらいなのに、誰がどう見ても仲の良い姉妹みたいで……」


 うーん、そうなのかなぁ……


「私たちも昔はあなた達二人のような姉妹だったのですけれども……」


 と、寂しそうな様子のエリナ。


「……何があったのか聞いてもいい?」


 思わずそう言ってしまった。


「大した話じゃありませんわ、勝手に私が向こうに憧れて、勝手に失望しただけですわ」


「……そうなんだ」


 なんだか微妙にはぐらかされたような気がする、これ以上詳しい事は言ってくれなさそうだ。


「まぁ、家族って色々あるからね」


 と、そこにアカネがやってきた、一応関係者扱いなので控室にも出入り出来る。


「お姉ちゃーん!! きたよー!!!」


 私に駆け寄ってくる彼女。


「えっと……今日はがんばってね! 私も本当は一緒に歌いたいけど……」


「……そうだね、ありがと!」


 私は彼女を抱きしめる。


「えへへ、エリナお姉ちゃんも、ジェイミーお姉ちゃんも、ハルカお姉ちゃんもがんばってね!」


 と、私だけではなく皆んなにも応援の言葉をかける彼女。緊張感の漂っていた控室の空気が一気に和らいだ。


「……やっぱり、あなた達が羨ましいですわ」


 エリナがそんな事を呟く。


 ……エリナって、ユイナさんにこうやって甘えたいのだろうか?

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