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51話 初取材

「……うぅ、緊張する」


 ガクガク震えるハルカ。緊張しすぎじゃないこの娘。



 訓練が終わり、私達は小松基地へと帰還する、この後石川県のローカルテレビ局の取材が入る。ここに来た理由の一つだ。


 今は適当な控え室で準備をしている真っ最中だ。


「はぁ……ちょっと落ち着きなよハルカ」


 私が宥めると彼女はガタッと勢いよく椅子から立ち上がる。


「だってテレビだよ!」


 ハルカはバンと机を叩きながら大声を出す。


「っても、地元のローカル番組でしょ?」


 ジェイミーは軽い口調でそう言った。彼女はハルカとはうって変わって冷静であった。


「にしてもなんで石川県のローカル局なの?」


 私がそんな事を言うと、エリナが思い出したように「あぁ……その局の偉い人が千駄木司令の知り合いと聞きましたわ」と説明してくれた。


「それってコネ……」

 

 ハルカがボソリと呟く。


「はいはい細かいことは気にしない気にしない」



 そんな会話をしながら自衛軍の制服に着替えて準備を終える私たち、部屋を出て私たちの機体がある格納庫に向かう。取材を受けるのは格納庫内でだ。


「あれ? ハルカとジェイミーの機体は?」


 格納庫には何故かXA-51とピーコックが無かった。一体どこに消えたのだろうか。私はキョロキョロと格納庫内を見渡す。


「なんか、あれは軍事機密だから映しちゃいけないんだって、取り敢えず私の機体はあれって事になるみたい、ジェイミーもアメリカ帝国軍の人なのを隠さなきゃいけないみたい」


 指をさすハルカ、そこには青色のカラーリングをした一般的な晴嵐が二機。あぁ、そういえばそんな事を千駄木司令が言っていたような気がする……


「……なんか堂々と嘘つくみたいで、いいのかなぁ」


 ハルカは二機の用意された晴嵐を見つめて、複雑な表情でそんな事を言った。気持ちはわからなくもないけど……


「まあ、機密なんだししょうがないでしょ」


 それ以外にも色々と喋ってはいけないことも多い。軍人というのはこういう時大変だ。色々と制約も多い。そういう立場なんだから仕方ないけど。


「そういえば、喋っちゃいけない事リスト貰ったんだっけ、エリナー! 持ってる?」


 自分の機体の近くにいたエリナに声をかける。


「……持ってるわよ!」


 そういって彼女はこちらに冊子みたいな物を投げてきた。


「うわ……投げないでよ!」


 それをキャッチ、パラパラ薄い冊子の中を捲る。


「多い……」


 やたら色々書いてあってわかりにくい……


 暫く冊子を読む私、まあ取り敢えず、ステラ計画の事は一切喋ってはいけないのはわかった。この計画に米帝が関与していることも言ってはいけない。


「私たちの扱いは……自衛軍広報課に所属する未来のパイロット候補生」


 一応、対外的にはそんな肩書きになっているらしい。候補生が広報の一環としてアイドル活動をしている……パイロット候補生とアイドルの因果関係が思いつかないけど、細かいことは考えないようにしよう。


 というか、本当はもう正式なパイロットだけどね。候補生はとっくに卒業して実戦も経験している。そういえば実戦経験があることも言ってはいけないらしい。


「こ、候補生らしく振る舞ってなきゃ……!」


 気合を入れるハルカ。


「いや普通にしてた方がいいって」


 かえって変に構えていると逆に疑われてしまうだろう。


「ふ、普通ね! わかったわかった!!」


 ……この娘、大丈夫だろうか。



 そうして、暫く待機していると、格納庫にテレビ局の人がやって来た。


「あ、広報課の皆さんですか?」


 と、女の人が。雰囲気からして多分、テレビ局のアナウンサーなのだろう。その後ろにはカメラを持った人が。


 そうして取材が始まる。



〜〜〜〜〜〜〜



「うぅ……めっちゃ噛んだ……」


 項垂れるハルカ。かわいそうに……彼女のダメージは大きそうだ。


「元気だしなって、まあああいう噛みキャラも悪くないでしょ」


 と、慰めてあげる。


「キャラじゃないからね!? 狙ってないからね!?」


 必死になって反論するハルカ。


「はいはい……ん〜、この海鮮丼最高……」


 私は怒るハルカをスルーして海鮮丼を堪能する。取材を終えた私達は今地元の小料理屋に来ていた。


「ジェイミーとエリナは完璧だったね、受け答えとか」


 聞かれた質問に淀みなく無難に答えてた二人。


「別に……つまらない事しか聞かれなかったし」


 クールに応えるエリナ。


「まあ確かに、パイロットを志望する理由とか、アイドル活動はどうとか、普通の事しか聞かれなかったしね……」


 殆ど想定していた通りの事しか聞かれなかった。用意していた答えで十分対応可能だった。


「それで噛んだ私って……」


 さらに落ち込むハルカ。彼女もちゃんと備えていたはずなのにあの有様、そりゃ落ち込むか……


「元気だしなって……ほら、あーん」


 ハルカの好物だという、海鮮丼に乗っていた鮪を口に運んであげた。それを大人しく食べる彼女。


「おいしい……」


 少しだけ表情が綻ぶ。うん、この娘やっぱり単純。



 そうして、落ち込むハルカを宥めながら、夕食を楽しむ私達であった。

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