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50話 優秀な妹とダメダメな姉

 翌日、名古屋から私とアカネの機体が大型の汎用輸送機で運ばれて来る。


『お久しぶりですマスター』


「久しぶりって程でもないけど」


 機体状況をチェックしながらコックピット内でシリウスと会話する。


「長距離標準装置は……ばっちりみたいだね」


 この長距離標準装置は紫雲改修の際に交換した最新型の標準レーダーを搭載したものだ。


 これとOSの噛み合わせが悪く、昨日までOSのアップデート作業を行なっていた為に到着が遅れたのである。


 長距離標準装置はスナイパーにとっての眼だ、これがまともに動かないとかなり厳しい。


 実際、不具合のせいで前回の戦闘では狙撃砲を使わずに戦闘を行わなければならなかった。


『マスターの場合、使えても使えなくても同じだと思います』


 と、シリウスには嫌味を言われた。本当に個性的なAIだ。


「個性的で口が悪いし……リゲルと変えて欲しい」


 ボソリとそんな事を呟く。


『何か言いましたかマスター?』


「いや、なんにも」


 機体のチェックを終える。


「それにしても、私はいつまでこれに乗ってなきゃいけないのかな……」


 みんなが羨ましい、米帝の試作実験機に現行機、そして晴嵐二機。私だけ型落ちの練習機。


『紫雲はいい機体です、使いこなせないマスターが悪いです』


 ド直球だなこの娘……



 そんなこんなで、演習場へと出発する私たち試験小隊、昨日と同じ演習場に向かう。


『昨日の演習データは拝見しました』


 と、シリウス。一応全ての演習データは昨日のうちにシリウスに送信してある。


「どう思う?」


 私はそう聞いてみた。


『どうもこうも無いです、少なくとも今のマスターじゃ勝負にもなりませんね』


 いや、それはわかってるけど……


「ていうか、"今の"なんだ?」


『言葉の綾です』



 そんな会話をシリウスとしながら演習場へと飛び、たどり着く。


『綾瀬准尉、今日はアナタの力を見せてもらいます』


 ユイナさんから通信が入る。うぅ、やっぱりあの人と戦わなきゃいけないのか……


「わ、わかりました……」


『あなたは狙撃手ポジションと聞いてるわ、でも一応今回は近接格闘戦技術の強化に主眼を置いているからそのつもりでよろしくね』


 ユイナさんの落ち着いた声がコックピット内に響く。


「わかりました」


 私は息を吐き気持ちを落ち着ける。


『昨日のデータを見る限り、まともに近づいて戦うのは得策とは言えません』


 シリウスの冷静な分析、それはわかってるけど……


「だからといって距離を取ってもなぁ……」


 どうしたものか、歯が立つビジョンが全く見えない。まずは何をするべきなのだろうか……


『勝ちを意識しない事ですね』


 ぶっきらぼうにそんな事を言うシリウス。


「負けを意識しろって事?」


『そういう訳ではありませんが……あ、始まります』


 そうして、私とユイナさんの対戦が始まった。


「……やっば、どうすればいいのか全くわからない」


 撃っても当たる気しないし……


 そうして、オロオロしている間に……


「あ……」


 気が付いたら動き出していたユイナさんの晴嵐。対処する迄も無く……


 モニター画面には突きつけられた長刀。


「う、動くことすら出来なかった……」


 そうして、私とユイナさんの対戦は終わった。



〜〜〜〜〜〜〜〜



「何かの動き……早すぎでしょ……」


 コックピット上のひらべったいスペースに寝転ぶ私。


「にしても、少しも動けないとかビビり過ぎでしょ」


 と、ジェイミー。彼女は隣に立つピーコックの肩アーマーの上に乗っかり座り込んでいる。


「いやいや、あれはしょうがないって……」


 と、言い訳する。


「……アカネはそこそこ付いていけてたね」


 私はそう呟く。私の後には晴嵐に乗ったアカネがユイナさんと対戦した。地上戦がもつれ込み、最終的には空中での格闘戦に。


「中々迫ってたよね、かなりいい動きだった」


 まあ、ユイナさんも全力じゃないんだろうけど、結構良いところまでいってたた気がする。


「流石私の妹……!」


「お姉ちゃんの方はダメダメみたいだったけどね」


 ジェイミー、ずいぶんと厳しい……



 と、そこに対戦を終えたアカネの晴嵐がこちらの方に跳躍して来る。


『おねえちゃーん!!!』


 晴嵐の外部スピーカーより聞こえて来るアカネの声。晴嵐は私の紫雲の隣に着地、コックピットハッチが開かれ、中からアカネが出てくる、彼女は機体をうまく伝いこちら側にピョンピョンと跳んできた。


「見てた!? 私どうだった?」


 無邪気に私に飛びつき抱きついて来るアカネ。


「うん、よかったよかった」


 彼女の赤い髪を撫でてあげる。


「えへへ〜……」


 私の胸に顔を埋め、嬉しそうな声をだすアカネ。


「はぁ……姉妹同士仲のいい事で」


 呆れ気味のジェイミー。しょうがないじゃん、可愛いんだもの、もうアカネは本当の妹みたいなものだ。


「何処かの姉妹に見せてあげたいわねホント」


 ……多分赤坂姉妹の事だろう。



 そうして、アカネとイチャつきつつ、対戦の詳細を改めておさらい。良かった点と悪かった点を分析する。その後、ユイナさんを含む教導群の特訓を受ける。


 ……特訓はかなりキツかった。

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