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45話 いざ、石川県へ

 そうして一週間後、百合ヶ浜高校は夏休みに入る。同級生達は浮かれた娘が多かったけど私たちはそういう訳にはいかない。予定が詰まっている。



「にしても……まさか電車で行く事になるとは……」


 私とアカネは今、名古屋発金沢行きの特急電車に乗っていた。これで名古屋駅から石川県の小松駅に向かう。


 マイやエリナ、ジェイミーは各々の戦人機で先に小松基地まで直接向かった。一方私とアカネはこうして飛ばずに陸路で向かっている。


 なぜ私とアカネだけこんな状況なのかというと、理由は簡単。アカネの晴嵐の調整が未だに間に合っていないからだ。そして私の紫雲、アビオニクスを入れ替えたことによるOSのアップデートが済んでおらず動かせる状態では無い為である。


 この前の戦闘では、機器を更新した事による不具合が多々起きていた。その為、現在アップデートを含めた最終的な調整を行なっている最中だ。


 私たちの機体は調整が済み次第大型の輸送機でこちらに運ばれてくる。


「到着まで二時間四十分……戦人機だったら一瞬なのになぁ」


 まあ使えないんじゃ仕方ない。


「う〜ん……美味しい!」


 と、隣に座るアカネが駅弁を食べながら幸せそうな声を上げる。この特急電車は車内販売がないので事前に名古屋駅で事前にお昼ご飯を買った。


 アカネが食べているのはご存知名古屋メシの一つ、ひつまぶしのお弁当である。隣からウナギのタレの良い匂いが……


「お姉ちゃんは食べたいの?」


 アカネが私にそう聞いてくる。


「う〜ん……どうしようかなぁ」


 私もお腹すいてきた。今食べてしまおうか。まだお昼には早いけど。


 ちらりとスマホの時計を見る、到着まであと二時間以上ある。ここは温存しておくべきだろう。


「私は後で食べるよ」


 ……気を紛らわせる為に何か他のことを考えよう……そうだ、この一週間のスケジュールでもおさらいしておこうかな。


 この後、私とアカネは小松駅の到着次第、直接基地に向かう。私たちの機体が届くのが早くても2日後になりそうなので、それまで他のメンバーが教導群による特訓を見ていることしかできない。なんとももどかしい。


 それと、石川県のローカル番組に出演する予定でもある。ローカル局とはいえ初めてのテレビ出演、かなり緊張する。さらに石川県で開催される小規模の音楽フェスへの出場も決まっている。


 実を言うと、この二つがあるから私達は直接石川県へと向かう事になっている。


 本来ならば飛行教導群は各々の基地を周り指導を行う部隊なんだけど。これらのイベントもあって、丁度彼らがホームにいるこの時期、今回は私たちが向こうに出向く形となったのだ。


 当たり前だけど戦人機なら本当に直ぐ着くんだなぁ……こっちはまだ電車乗ったばっか、と返信しておいた。


 はぁ、後二時間。長いなぁ……


「……」


 チラリと隣を見る。あぁ……美味しそう。


「ダメだ、やっぱり我慢できない……」


 袋から駅弁を取り出した、昼食には少し早いけど、私ももう食べてしまおう。


 袋から取り出した駅弁の蓋を開ける。するとウナギの蒲焼がこんにちわ、はぁ……幸せ。



〜〜〜〜〜〜〜


 そうして二時間半後、私たちは石川県小松駅に到着。そこからバスで八分ほど、小松基地にたどり着いた。


 小松基地は一般の空港と併設した基地だ、自衛軍単独の基地であり私たちのホームでもある中京基地とはまた雰囲気が違った。


 基地の入り口で所属を明かし中に入れてもらう。


「マイちゃーん! アカネちゃーん!」


 そうして、ハルカ、エリナ、ジェイミーと合流。


「遅かったわね」


 と、ジェイミー。いやそっちが早過ぎるんでしょ……



 その後、私達はまず。基地司令室に向かう。ここに到着した事を正式に報告する為だ。


「……」


「エリナ、どうしたの?」


 基地司令室に向かう途中。何故だかエリナの表情がこわばっていたのが気になった。


「べ、別になんでもありませんわ」


 強がるエリナ。いやどう見ても何かありそうな感じなんだけど……


 そういえばエリナ、なんだか小松基地に行くって決まった時からなんか微妙な感じなんだよなぁ……一体どうしたんだろうか。


「そういえば、こんな話を聞いたんだけど……」


 と、唐突にジェイミーが話を切り出す。


「戦闘飛行教導群の隊長は、若い女性パイロットだって」


 若い女性パイロット? それは初耳だ。


「それ本当なの?」


 私がそう聞き返すと、ジェイミーは「ええ、グリフォン隊の人たちから聞いたわ」と自信満々げに答える。


「にしても女性のエースパイロットかぁ、やっぱりユウミさんみたいな人かなぁ?」


 ハルカがそんな事を言った。


「ユウミさんの一番のライバルとも聞いたわ」


 あのユウミさんのライバル……間違いなく、とてつもなく強いパイロットなんだろう。


 そんな事を話しているうちに基地司令室に到着する。


「失礼します」


 ドアをノック、そうして中に入る。


「お、来たようだね」


 部屋の中には如何にもな、渋めのオジサン。そうしてもう1人……


「久しぶり、エリナ」


 背が高くスタイルも良い、まさしく大人な女性的な雰囲気を漂わせる美人さんがいた。

 

「お、お姉様……」


 エリナがそう呟く。



 ……って、え? お姉様……?

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