番外編3 赤坂エリナ
赤坂財閥
日本皇国において最大の財閥であり、工業、金融、医療、食品……あらゆる分野のトップをいく、まさしく日本の心臓ともいえる存在ですわ。
私はそんな赤坂財閥を赤坂家の一人娘として生まれました。将来赤坂財閥を担うに相応しい人物となる為あらゆる教育を受けてきましたけど、その中でも私は特に工学系の分野に強い興味を抱きましたわ。
私には1人の姉がいます、彼女は赤坂家に引き取られた養子。あの方は色々な意味で規格外の方。
本来ならば赤坂財閥のトップに立つのは彼女のような存在なのでしょう。私よりも優秀な方でした。
様々な分野の知識に精通し、頭も切れ、運動もできる。そんな彼女はある時唐突に自衛軍に入りパイロットになると言い家を出ていきました。
彼女の考えはよくわかりませんが、あの方は意外と影響されやすい人なので、おそらく昔流行った戦人機パイロットを主役とした映画にハマっていたので間違いなくこれに影響を受けたのでしょう。
彼女は半年後、宣言通り戦人機のパイロットになりました。パイロットになり対ゴーストとの戦いで活躍していたそうです。
あの方は何をやらせても完璧にこなすので戦人機のパイロットとしても活躍するのは当然なのでしょう。
私がそんな姉を見て戦人機に興味を抱くのも当然の事でした。けど、例え私が姉と同じパイロットを志したとしてもおそらく姉には敵いません。なので私は別の方法で戦人機について関わろうと考えました。
既に飛び級で海外の大学で工学について学んでいた私はその影響で、特にロボット工学についてのめり込むようになりました。
そうして私は13歳という若さで、自衛軍と赤坂重工が主導する国産戦人機開発計画に参加し、二式戦人機 晴嵐の基礎設計に携わりました。
その後もワタクシは赤坂重工で戦人機の開発に携わるつもりでしたのに……
「どうして今更日本の高校なんかに通わなければならないんですの!?」
お父様に詰め寄る私。名古屋の本家に呼び出された私はお父様から高校に通うように言われました。
「エリナ……お前は同年代の女の子と関わりがなさすぎる、その……一般的な常識というものがだね……」
そんなこんなで、何故か私は今更高校に通うハメになりました。
そうして、登校初日。私は彼女と出会いました。
登校中、車の外に見えた可愛らしい子猫。近くで見てみようと車を降りたのが運の尽きでしたわ……
「にゃー」
「あっ……私の財布!!」
子猫の写真を撮ろうと、鞄から携帯を取り出そうとしましたが、そのはずみでウッカリお財布を地面に落としてしまいました……
拾おうとしましたが、なんとそのお財布を子猫が奪い去っていったのです!
なんと卑しい子猫でしょう……
「こらっ! 私のおお財布を返しなさい!!」
塀の上に登り、欠伸をする子猫。
「どうかしたの!?」
そこに通りかかった1人の同年代くらいの少女に声をかけられました。
彼女の後ろには面倒くさそうな表情をしたいかにもチャラチャラした見た目の女子高生もいました。
「この猫にワタクシの財布を盗まれましてよ……!!」
私は彼女たちに事情を説明しました。すると後ろの方で様子を伺ってたチャラチャラした方の娘が近寄ってきて……
「にゃー♡」
子猫は何故かその娘に飛びかかりました。子猫をキャッチし抱き止める彼女。
「これでいい……?」
私にはあんな舐めた態度を取っていたのにこの娘にはこんなに懐くなんて……
私はお財布を回収、なぜか凄くバカにされたような気分になって来ました。
「あなた! お名前は!?」
「え? 綾瀬マイですけど……」
綾瀬マイ……覚えましたわ。
「これで勝ったと思わないことね!!」
私は踵を返し車に乗り込む。
「……赤坂家の人間たるもの、子猫にだって舐められてはいけないのに!!」
これが私と綾瀬マイの出会いの場面ですわ。
そうして、学校に着き入学式。クラスを確認するとなんとあの綾瀬マイが同じクラスでした。
なんという因果……
〜〜〜〜〜〜〜
綾瀬マイ。見た目は完全に所謂ギャル的なあれ。私のような赤坂財閥を担う上流階級の人間とはおおよそ関わりのないタイプの人間。
そう思っていましたのに……まさか同じ小隊の仲間になるとは……
入学からしばらくして、私は仕事で中京基地を訪れていました。そこで何故か歌って踊る綾瀬マイの姿を見かけました。
「……」
私は何故かそのライブから目が離せませんでした。
後に、それが"戦乙女"なる存在になる為の試験であることを知りました。
私はコネを使い、戦乙女について調べてみました。そうしてたどり着いたのがステラ計画。
私のその動きを察知するかの如く、自衛軍の方から声がかかりました。
「アナタにはステラ因子の存在が認められます」
そうして、私もその試験小隊に参加することになりました。
綾瀬マイ……関わっていくうちに、彼女は見た目ほど派手な人間ではない事がわかりました。
優しくて感情豊かな普通の女の子。彼女に対する印象はどんどん変わっていきました。
そして何より、彼女の歌声……
南沖島での初出撃前、基地の屋上で彼女の歌声を聞き、私は改めて確信しました。
私はこの歌声に惚れたのだと。
綾瀬マイ、あの娘は私にとって……と、友達でいいんですわよね? 向こうはどう思ってくれているのかしら……